第34話 殴り込み
◇(レイ視点)◇
今、俺たちはフォアを含むアルレルの住人が捕らわれており、敵集団の本拠地と思われる場所に走って向かっている。シャスと『ソーレリス』の3人が同行者だ。後ろをみると、シャスが張り付くようについてきているのに対し、3人は一目で分かるほど疲弊している。3人の様子からもわかる通り、かなりのスピードで走っている。だからといって緩める気はない。そもそも、3人が連れていけとか言わなければ、迅速に救出できた訳だし、俺も『転移』使ったり、空飛んで移動できた訳だ。確かに護衛役も必要かもしれないが。
ただ、正直フォア以外どうなろうが知ったこっちゃ無い。フォアはそこそこ交流があったし思い入れがあるから救出するだけだ。それ以外は不運でしたね捕まるあなたが弱かっただけでしょ、で終わる。
だが、俺は犯罪者集団をまとめて一掃できるし、『ソーレリス』の3人に免じておまけで助け出すとしよう。
そこから数分で潜伏先に着いた。おそらく奴らにこちらの動きはバレてないはずだ。
着いた場所は木が数本たっているだけの草原。とても森とは呼べない。『空間』で辺りを詳しく調べる。やはり反応があった。また地下か。王都のときもそうだったが、いくらなんでも広すぎる。数年かけたとしてもこんなことにはならない。やはり何かがあると見ておくべきか。
俺は後ろの4人に言う。
「ここの近くに奴らの潜伏場所がある。注意して進め。」
「近くって、何もねぇじゃねぇか。」
そう言ったのはラスカだ。前にクレアも言っていたが、ラスカは思ったことはだいたい口にする。俺としても、疑問を持ったまま適当な行動をされるよりはっきり言ってくれた方がいい。
「違う、地下だ。ここの近くに入口がある。」
『空間』で今度は入口の位置と内部構造を詳しく割り出す。
見つけた。入口の位置もフォアの位置も。よく見ると蓋らしきものが埋まっている。
「入口を見つけた。行くぞ。」
「……アジトの場所のときもそうだが、どうやってんだ?私にはお前がちょっと立ち止まったかと思えば場所を言い当てている。親しいってことで教えてくれねぇか?」
「アホか。秘密に決まってるだろ。」
「チッ。なら……」
「シャスに聞いても無駄だぞ。シャスは知っているが、契約で縛っている。」
「あぁ。そういえばシャスはレイの奴隷だったな。自由過ぎて忘れてた……。」
「気にするな。……着いた。ここから先すぐに戦闘になる可能性が高い。奇襲も警戒しておけよ。」
「承知しました」「任せとけ!」「分かりました」「もちろん」
もっとも、可能性が高い、ではなく確実だが。
俺は地下への蓋を開け、そこに飛び込む。あとの4人も続いて飛び降りてくる。さすがBランクというべきか、けっこう高さがあるのに躊躇い無く飛び降りてくる。
地面に着地した俺たちを出迎えたのは、探知できた通り犯罪者集団。フォアが捕まっているところにもいるから、目の前にいるのは約700といったところか。しかもこの集合具合。おそらく、入口にある程度近づいた時点で警報でも鳴らすような魔法具があるのだろう。
奴らの中から1人出てくる。
「ようこそ。我ら『バーブリザム』の本拠地へ。俺はこの組織のNo.2、ルジカス。」
「そりゃ、ご丁寧にどうも。俺はレイ。この中ではリーダーかな?ま、名乗ってくれたとこ悪いんだけど、お前たちと話すことは何一つ無い。」
「それは残念だ。ならさっさと降参したほうがいいぞ?お前たちでは足元にも及ばないからな!さっさと捕まって我らの贄となれ。」
「贄、ね……。」
ここで奴らが何をしようとしているのかなんてどうでもいいが、ちょっとまずいかもな。
俺は4人に言う。
「ここはお前たちに任せる。シャス、分かっていると思うが……。」
「はい。あの男、私と同レベルに強いですね。その他は雑魚ばかりですが、数名強者が紛れています。私はあの男の相手で手一杯になります。その間ソーレリスが持ちこたえれるかどうか……。」
「ハッ。要はアレ以外にも私たち並みに強いのがいるってことだろ?前にレイに負けてから実力の把握はしっかりしてるつもりだ。自分も相手もな。今の私は実力を見誤るヘマはしない。倒すのは無理そうだが、レイかシャスがくるまで耐えきってやる。」
「そうですね。私たちは日々研鑽を積んでいます。それを遺憾なく発揮できれば大丈夫でしょう。」
「ん。だからレイは町の人を。」
「分かった。なら先に行く。」
俺がここを殲滅してもいいが、フォアが捕まっているところの人数が異様に多い。加えて、首魁事態は相手にならなくても、ここまでのことを考えると他の魔法具を所持している可能性が高い。なら、下手に全員で行くよりも俺単騎のほうが対応できる。だがここも、俺の目算だがシャスは長時間戦えても、ソーレリスは短時間だけだろう。自身と同じぐらいの敵が複数いる上に、他の敵の数も多い。なるべく早くケリをつけるのがソーレリスの安全も含めて最良だろう、が。
No.2が笑いながら言ってくる。
「ハッハ!行かせると思うか!?この人数を抜けるなんて無理無理。諦めるんだなぁ!」
まったく。俺がそんな手段使うわけないだろ。
拳を握り床を殴る。すると
「なっ……!?」
床に穴が開き下が見えた。そう、この拠点は2階層に分かれている。フォアがいるのは下の階層だ。何故穴が開いたのかというと、難しいことは何もしていない。殴ると同時に『空間』でぶち抜いただけだ。
時間もあまりかけてられないので、さっさと飛び降りようとすると、
「レイ。」
意外なことにクレアが話しかけてきた。
「聞きたいことがある。だから、さっさと戻ってきて。」
と言ってきた。聞きたいこと?探知したこととかは秘密って言っている。クレアはそういったことを何度も聞いてくるタイプではない。じゃあなんだ?
「……考えておく。聞きたいなら生き残れ。」
そういって後回しにすることにした。今はこっちが先だ。
俺は穴から飛び降りる。後から追ってこられないように、土属性魔法で塞いでいく。
階層の差そこまでなく、すぐに着いた。そこには四方に人間の入った檻、そして目の前に約100人の犯罪者と首魁と思しき男が立っていた。
「よう。待ってたぜ。」
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【あとがき】
シャスとソーレリスの戦闘シーンは書かないつもりです。楽しみにした方には申し訳ありません。
ご想像にお任せします。
一応言っておくと、シャスとルジカスは完全互角のためシャスがソーレリスに加勢できるのはかなり時間がかかります。ソーレリスはクレアの広範囲魔法があるため雑魚はすぐなものの、強者数名といいぐらいなのでこちらも苦戦します。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
★・応援・フォローよろしくお願いします。
次回、ついにあの要素が出るかも知れません。書ききれなかったらその次に持ち越しです。
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