第32話 予感は現実に


レイ達がアルレルに戻ってきて数日。

それは突然起こった。


ドン!


アルレルで爆発音が響き、煙が上がる。

彼らは街の西側で一斉に活動を開始した。剣を抜き、拳を構え、鎚を振り下ろす。そうして、目に付いた人を殺し、家を破壊し、金品を奪っていく。倫理を無視し、盗賊よりひどく暴れる。



冒険者ギルドラーベアル王国支部統括が危惧していた『バーブリザム』による暴動がアルレルで起こったのだ。





◇(クレア視点)◇




私達が依頼を終え食堂で昼食を取っているとき、突然誰かの悲鳴が響いた。近くで何かあったようだ。


「何でしょうか?行ってみましょう。」


パーティーのしっかり者、リテイトが言う。私も同意見なので頷く。ラスカも文句無いみたい。


3人で外にでると、崩れた建物とその近くに誰かの死体があった。その死体よりこっち側に街の人達。そして向こう側に武器を持って武装した男達がいた。少数だが女もいる。


これは何?目の前の集団は少なくとも冒険者ではない。この街に住んで長い私だから間違いない。

なら一体?装いからして兵士や衛兵といった領主下の者達ではない。騎士団であるはずがない。鎮圧活動の名目で街中で武器を使える職はこれくらい。だとしたら犯罪者?

私が悩んでいたら、ラスカが声を出した。考るよりも先に行動するタイプ。


「お前ら!自分が何やってるか分かってんのか!」


「もちろん。」


先頭にいる男が答える。続いた言葉に私は驚く。


「クソッタレなこの国への復讐だ。」


「っな!?意味分かんねぇ!復讐だぁ?今アンタらが殺した人はそんな事する人じゃねぇよ!」


その通りだ。あそこで死体になっているのは私達とも仲が良かったパン屋の人。根っこからの善人で、少なくとも復讐に合うような人ではない。

男が言う。


「確かにこの者は何もしていないのかもしれない。だが、俺たちにとってそんなことどうだって良いんだよ!」


言葉が長くなっていくとともに男の語気が荒くなっていく。


「俺たちはこの国に散々虐げられてきた人間の集まりだ!俺たちはラーベアル王国を許さない!だからこの国の人間を殺し、壊し、奪うのだ!」


「っ!そんなことさせる訳ないだろ!」


またしても同意見だ。こんな奴らに壊される訳にはいかない。


「そうか。なら抗ってみるがいい。俺たちがそうしたように。」


男が言い終わると同時に更に人が出てくる。

嘘……。多すぎる。男が先頭なのは変わらないが、道いっぱいに人が詰め込み、終わりが見えないほど後ろまで続いている。


「君たちは冒険者3名。対して俺たちは約500人。結末は既に見えている。」


「チッ!おい、お前ら今すぐ逃げろ!中央にある冒険者ギルドなら戦える奴が多いはずだ!走れ!」


ラスカが街の人達に逃げるように言った。次いで私とリテイトにも言う。


「私らは奴らを迎撃しながら退くぞ。あれだけ密集していれば俊敏には動けないはずだ。」


「分かりました。」


「りょーかい。」


私もそれが最適だと思う。私達が逃げるだけならただ走ればいいだけだけど、今は街の人達が逃げる時間を稼がないと。


「相談は終わったか?では俺たちの憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ。」


「絶対にごめんだクソ野郎が!」


いつも先陣を切って行くのはラスカ。純粋にすごいと思う。口が悪くなるのはどうかと思うけど。






















ハァ、ハァ。


何とかギルドまで来れた。あの場にいただいたいの人は避難できたと思う。でも、数人間に合わなかったり、家の中にいて騒動に気づいた時にはもう奴らに囲まれてたりした人は助けられなかった。ただ、何故か殺してはいない様子で何処かに連れて行っている様子が見えた。

私達も思っていたより苦戦を強いられた。攻撃してきた奴を迎撃したら、後ろと交代されての繰り返し。おかげで私達はずっと迎撃し続けなければならなかった。

でも、やっとギルドに着いた。予想通り冒険者が連携して対処をし続けている。


あれ?対処し続けている?


横を見ると、ラスカとリテイトも同じ疑問を持ったのかこっちを見た。そこで私達を呼ぶ声が聞こえた。


「『ソーレリス』!無事だったか!」


「!ギルマス!」


声をかけてきたのはギルマスだった。いつもみたいにピンピンとはしてなくて、身体中傷だらけになっている。慌ててリテイトが回復魔法をかける。


「すまん。回復してもらって。ここに来た住民から聞いたぞ。お前らのおかげで多くの街の人が救われた。礼を言う。」


「お互い様だろ。ギルマスだってここを守ってた。……で、教えてくれて。奴らは何者なんだ?」


「奴らはおそらく『バーブリザム』と呼ばれる犯罪者集団だ。」


あの!?


「マジか。ずっと潜伏していやがったのか。」


「それに関してはすまん。俺のほうに事前に垂れ込みがあった。にも関わらず警戒不足だった俺の責任だ。」


「そう自分を責めんな。警戒しててもあの数を防ぐのは難しかったはずだ。」


あんな数はどうしようもない。ただ、その垂れ込みは……。


「ああ。助かる。それで、早速で悪いが余力はまだあるか?Bランクパーティーが参戦してくれるとありがたいんだが。」


「ああ。疲れてはいるが、これくらいなら。迎撃に加わろう。だが、ギルマス……」


「お前達の疑問は分かる。なんでまだ迎撃が続いているか、だろ?」


「そうだ。アイツらは……レイとシャスはどうしたんだ?」


そう。あの2人の戦力を考えればとっくに全滅させていてもおかしくない。だから、今起きていることはありえないことのはず。

ギルマスが苦い顔になる。


「俺も聞いた話だが、あの2人は朝外に出て戻ってきてないそうだ。あの2人がいないタイミングでこの騒動だ。不在を狙われたかもな。」


「クソ!よりによって……。私達だけじゃ奴らを鎮圧できない。とにかく今はチクチク削って、レイとシャスが戻るのを待とう。」


「あぁ。それがいいと思うんだが……。どうやら連中、待ってくれないみたいだぞ。」


後ろを振り向くと、さっきの男を先頭にもう奴らが迫ってきていた。奴らの斜め後ろがやけに開けているところを見ると、建物を破壊しながら進んできたことが分かる。


「……ここで、耐え切るしかないか。ギルマス!住民を更に東へ避難させろ!」


「全員、かかれ!」


ラスカと男が指示を出したのは同時だった。


住民と犯罪者達が同じ方向へのと駆けていく。犯罪者達は多い。私達冒険者が食い止めないと!

そう決意して杖を構えた。そのとき





犯罪者達が一斉に足を止めた。


いや、走るのをやめたんじゃない。両足が地面についていない者もいる。そのままの状態で止められている。


これは……魔法?僅かだけど魔力が感じられる。

そう考えたのと同じだった。


「随分と大所帯で暴れてるな。逆に動きにくくないか、それ。」


そんな声が聞こえたのは。









——————————————————————

【あとがき】


読者の皆様は覚えていますか?この小説が基本的にどんな視点で進んでいるのかを。





ここまでお読みいただきありがとうございます。


レビュー・応援・フォローのほうよろしくお願いします。


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