第31話 談笑

アルレルに戻ってきたという小芝居をした翌日。

俺とシャスは特に用はないが冒険者ギルドに来ていた。


俺が扉を開けると一斉にこちらを向き、空気がピリついた。前も避けられてはいたがここまでではなかった。ここ数日の間にランクの発表でもされたのか、絡んでくる奴はいない。1人、男が絡んで来そうになったがすぐに周りの冒険者に雁字搦めにされていた。俺とシャスの顔を知らないってことは他の街から来た奴か。

そんな空気の中でもフランクに話しかけてくる奴らがいた。


「よぉ!随分と話題になってるじゃねぇか!」


いつもの如く『ソーレリス』3人だ。


「聞いたぜ!Sランクに認定されたんだって。ちゃんとギルドが災害を認識しているようで何よりだ。」


「失礼ですよラスカ。レイさん、シャスさん。Sランク、Aランクへの昇格おめでとうございます。ニュアンスは変わりますが、私もラスカと同じできちんとお二人の実力が評価されたようで何よりです。」


「ん。おめ。」


三者三様の挨拶をしてくる『ソーレリス』の面々。クレアお前会話が短くなってないか?


「おう、どうも。」


「ありがとうございます。」


俺達もそれぞれの対応で返す。次に口を開いたのはラスカだ。


「それにしてもSランクか。Aまではすぐに行くと思ってたんだがな。もう追い越されたな。」


「Sランクの誕生は極めて稀なことです。今はレイさんを含めて2人のみ。まさに最強の証ですよ。昇格の期間で言えばシャスさんが最短ではないでしょうか。」


「2人ともすごいことをした。もっと誇っていいと思う。」


ラスカの後にリテイト、クレアと続く。


「ま、俺も王都に呼び出されたときはこうなるとは思ってなかったな。事前通知がなかったし、特に功績を上げた訳でもない。フルーガルの独断らしいぞ?」


「フルーガル?」


「あぁ、冒険者ギルドラーベアル支部統括のことだ。」


「・・・・・・すごいですね。統括を呼び捨てにできる人なんていないのではないですか?」


「さぁ?知らんな。特段気にすることでもないだろ。」


3人が唖然としているが、俺が勝手に呼んでる訳でもないしな。正当だ。

クレアが切り換えるように言う。


「とにかく。レイはS、シャスはAに上がった。これで一緒に依頼を受けられる。」


「ん?どういうことだ?」


冒険者ギルドのルールではランクが違うと同じ依頼を受けれないはずだ。

ラスカが答える。


「ん?統括から説明されてないのか?Bランク以上の依頼はどうしても強敵だったり大型だったりするからそのランクの冒険者が含まれていれば、ランクが違っても参加できるんだよ。ただし、Bランク以上っていう縛りはあるがな。」


そんなことフルーガル言ってたか?多分言ってないはずだ。あー、もしかして俺がシャスの依頼について行けるみたいなこと言ったから分かってるって勘違いしてたのかも。

そんなことを考えていると、ギルド職員に声をかけられた。


「あの、レイ様、シャス様でお間違えないですか?支部長がお呼びです。」


「分かった。らしいから3人とも、その辺の話はまた今度な。」


「ああ。私達もそろそろ依頼をこなしに行かねば。じゃ、またな!」


「では、今度飲みにでも行きましょう。」


「ん。また。」


そう言った『ソーレリス』と別れて支部長室に向かった。
















「俺はお前たちが恐ろしい。」


対面一番強面のおっさんにそう言われた。


「久しぶりに会ったのに何ですかそれは。」


なんだ?おっさんがSランク前にビビってんのか?支部長になるような人物が。


「いやな?俺が言っといてアレだが、統括の呼び出しを受けて王都に行ったCランクとDランクがSランクとAランクになって戻ってきたんだぞ?確かにお前たちは頭一つ抜けて強かったがそれでも異常だ。特にSはヤバい。恐ろしくもなるだろ。」


「意外と正直に言いますね。本人の目の前で堂々と。そんなギルマスにひとつお知らせがあります。」


せめてもの仕返しに爆弾でも投げてやろう。


「……なんだ?」


「統括からも伝達があると思いますが、実は王都でSランクに認定された後統括から依頼を受けまして。俺とシャスでゴミ掃除をすることになったんですよ。」


「……そのゴミ掃除がそのままの意味ではないことは分かった。それで?」


「それで一晩で何とかというチンピラ……もとい、犯罪者集団を一斉掃討したんですよ。ですが、その数が事前調査よりも少なかったみたいで。しかも、首魁と側近がいないというおまけ付きで。王都に構成員が1人も残っていないのは確認済みです。統括の予想によると近々大きな暴動を起こす可能性が高いとのことです。ここは要塞都市アルレル。重要な地方都市のはずです。よかったですね、ギルマス。警戒を強めないといけないので仕事が増えますよ。」


このとき俺はいい笑顔だったと思う。ギルマスが頭を抱えているからだ。


「……嘘だろ。あの統括の予想ってことはほぼあたるじゃねぇか。なんてもん持ち込んでくれたんだ。」


「恐ろしいと言っていただいたお返しです。」


「くっ……。こうなったらレイ。Sランクのお前にも手伝って」


「お断りします。面倒ですのでSランクの特権を行使します。守られないと暴れます。」


「なっ……。ならシャス嬢!お前はAランクだから断る権限は」


「お断りします。私は主様の奴隷ですので。主様の命令がない限り主様と同じ方針です。義務とか仰るのなら主のレイ様にご相談ください。」


「ま、そういうことですので頑張ってください。」


唸っているギルマスをほっておいて俺たちは支部長室を出る。気が向いたら手伝うとしよう。何とかという組織も俺からしたらどうでもいいしな。







——————————————————————

【あとがき】


支部長=ギルマス




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