第23話 照画と麗人

よく航空写真とかで空から都市を撮ったものを目にするが、中世ぐらいにこの技術があれば、なかなかの絵になったのではないか?だいたい円形になった外壁に、中心あたりにある内壁。さまさまなところに家が建ち、所々大きな建物が見える。何よりも人間の多さは繁栄の象徴と言えるだろう。それと対になるような権威の象徴として、ど真ん中に王城が建っている。

そんな光景を写真ではなく、実際に目にすることになるとは思ったこともなかったが。

そう、ここは王都上空。高度約1万メートルである。



ギルマスから依頼を受け、フォアを説得した翌日、つまり今日。俺はシャスを抱えて王都の空に立っていた。一度空から街を見てみたいって思ったからだ。気温や気圧は『空間』でどうとでもなるし、高度的に視力の関係で見られる心配はない。俺は『空間』で見えるから問題なし。

こうしてみるとなかなかの絶景だな。某大佐はこうんな景色を見るつもりだったのか。 


ある程度満足したので、王都から、少し離れたところに降りる。空を飛んでいたことから分かるように、アルレルから王都までは空をかなりのスピードで飛んできた。だから、道中面倒な盗賊とかには全く遭遇しなかった。快適な空の旅とはまさにこのこと。


王都に入る時は冒険者証で問題なかった。今向かっているのは当然冒険者ギルドだ。さっさと終わらせて、ゆるりと観光でもするとしよう。


数分歩くとギルドが見えてきた。流石王都のギルドだ。アルレルとは規模が違う。建物の大きさも、豪華さも。


さて、今俺たちはギルド前に立っている。今の時間なら、まだ冒険者諸君がいてもおかしくないだろう。

そう、アレである。


俺は意を決して扉を開ける。おぉ。思わず声が出そうになるぐらいの広さと綺麗さだ。日本人が掃除してますかってぐらいだ。酒瓶が転がっているような他の支部とは違う。


開けた瞬間中にいた冒険者達がこっちを見た。そりゃそうだ。2人ともどう見ても子供な上に、片方は黒い服を着て、もう片方は黒い外套を纏った上にフードを深く被っている。


もう慣れた視線なので普通に歩いて行くと、やっぱり男が絡んできた。今回は3人。前は忘れていたが、今回は覚悟していた分ダメージは少ない。


「おい———」


はいはい。もう分かってますよ。このまま手を出してくるまで耐久してればいいんでしょ。そこまで無視を決め込む。もちろん、シャスも黙っている。


あ、キレた。しかも3人が連鎖して。じゃ処理。、しようと思ったのに。


「やめなさい。」


まーた横槍が入った。絡まれるのは面倒だが、横槍が入るのはもっと面倒な気がする。最近途中で横槍を入れられる頻度高くないか?スムーズに行かないからやめてほしいんだが。何のためにシャスを縛ったと思ってるんだ。というか絡んでくるな。


で、口出ししてきたのは?受付の奥の階段から来た女性みたいだな。いかにも麗人といった感じの。あれが支部長か?


男の驚愕の色がある声がした。


「と、統括!?」


支部長かと思ったが、あれが統括らしい。ここでは支部長と統括は一緒なのかな?

統括がこっちに聞いてきた。


「失礼ですが、レイさんで間違い無いでしょうか?」


何で分かるんだよ。いや、わざわざ指名で依頼出してくるぐらいだから知っていて当然か・・・・・・やっぱ当然じゃないや。写真とかないから顔は知らないはずだ


「はい。そうです。」


「なるほど。あなたが。いえ、わざわざお越しいただきありがとうございます。」


統括が言うと男たちが慌てた声を出した。


「統括!どういうことっすか?」


「その方達は私が招待しました。つまりお客様です。」


ギルド内が大きく騒つく。冒険者、職員関係なくざわついているから、統括の客ってのはよっぽどなんだろう。


「で、では統括。この2人は冒険者ではないんすか?」


「いえ、お二人は冒険者です。」


「え?それで客?」


「はい。これ以上はいいでしょう。お待たせしました、レイさん。こちらへどうぞ。圧倒的と称される『秘天』様と会える日を楽しみにしておりました。」


何で呼ばれ名言うんだよ。ここで言う必要ないだろ。勝手なアピールやめろ。

ギルド内がさっきよりも騒つく。というより騒ぎ始めた。

「嘘だろ」「あんな子供が」「噂の」

なんかいろいろ言われているが放っておこう。うん、それがいい。


俺とシャスは聴覚をシャットアウトして統括についていった。











「どうぞ、レイさん。そちらの方も。」


統括室についた後、統括に茶を出してもらった。統括室はアルレルの支部長室よりも数段広く、豪華である。豪華といっても、キラキラピカピカしてはいない。物少なめだが、ひとつひとつが厳選されている。部屋の主の性格が分かる部屋だ


「さて。まずは改めて、お越しいただきありがとうございます。そして、先程はご迷惑をお掛けしました。私はここ王都で統括をしております、『フルーガル=ノ・ビル』と申します。私のことは気軽にフルーガルとお呼びください。」


部屋の様子通り、丁寧な人間のようだ。先程からの動作ひとつ残らず美しく、気品があると言える。細やかな部分まで気が利くと見た。


「ご丁寧にありがとうございます。フルーガル統括。依頼という形ですが、お会いできて光栄です。ご存知かと思いますが、私はレイと申します。こっちはシャス。私の右腕のような『もの』です。」


「お初にお目にかかります。シャスと申します。私までお部屋に入れていただきありがとうございます。」


俺達はそれぞれ挨拶を言う。今更だが、さも当然のようにフードを被ったままのシャスを入れるって、かなりのことじゃないか?統括っていうぐらいだから、セキュリティはしっかりしてるのかと思ったが。護衛とかついてそうなのに。


「ご紹介ありがとうございます。では早速ですが、本題に入らせて頂きます。レイさんは手短に済ませることを好まれると伺っておりますので。」


ヴォルドさん(アルレル支部長)に聞いたのか?聞いたと言うか伝えられた、か。たぶん、手紙かなんかやりとりはしてるんだろう。


「今回お越しいただいた用件は2つ。まずひとつめですが・・・・・・、単刀直入にお聞きします。」


そして統括は、俺達が有り得ないと思っていた言葉を口にする。しかもどこか確信を持った口調と雰囲気を携えて。

はぁ。やっぱ全力で拒否すれば良かった。


「サネルの町消滅の原因は・・・・・・サネルを滅ぼしたのは、レイさん。あなたですね?」







——————————————————————

(あとがき)


「Oh……」



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