第22話 分かりきった一コマ
「では、俺達はこれで。」
犯人ではないという証明(大嘘)とギルマスからのありがたーい助言を聞き終え、席を立とうとする。すると、ギルマスに呼び止められた。
「ああ、待ってくれ。すまんがもう一件あるんだ。依頼の話だ。」
そう言われたのでソファーに座り直す。また出張か。
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいだろう。」
「そりゃ、こないだ行ったばっかりじゃないですか。今度は何処です?」
「なんで遠征前提で考えてるんだ・・・・・・。実際そうだがな。レイ。お前には王都に行って貰いたい。」
「・・・・・・はぁ。王都ってあれですよね?ここから南にずっと行ったところにある。」
「そうだ。」
「ラーベアル王国の中心地?」
「そうだ。」
「・・・・・・拒否しm」
「悪いが拒否権は無い。」
よし、国ごと滅ぼしてやろう。地図から消えれば面倒事は全部解決。何故なら誰もいないから。
「おい、何か怖いんだが。頼むから暴れたり備品壊したりしないでくれよ?」
チッ。
「それで?なんで王都なんていかなきゃならないんですか?というか依頼には拒否権があるはずでしょう?」
「普通はな。ただ、今回依頼を出したのが・・・・・・。」
依頼書を受け取る。依頼人の名前は『冒険者ギルドラーベアル王国支部統括』となっていた。
ふむ。
「つまりギルマスは上からの圧力負けたと。」
「それはそうなんだが真正面から刺さないでくれ。ともかく、そう言うことだ。頼む。」
うーん、王都か。メリットがないわけでもない。王都というぐらいだから、この世界では栄えているほうだろう。一度見ておくのも悪くない。栄えている街は自然と人間も物も集まる。ということは、おもしろいものや旨いものがあるかもしれない。
「分かりました。受けますよ。」
「おお。助かる。じゃ、早速手続きしておこう。いつでもいいが、なるべく早めに行ってくれ。」
「そういえば、肝心の依頼内容を聞いてませんでしたね。王都に行ってどうすれば?」
「ああ悪い。言い忘れてた。」
俺は依頼内容を聞いた瞬間依頼書を破りそうになった。
「依頼は、ラーベアル支部統括に会うことだ。」
◇
面倒な依頼を受けた後。
俺達は買い食いしながら宿に戻っていた。今日の依頼を受けないのは、なるべく早くと言われた事と、王都行きの準備をするためだ。明日には出よう思っている。
「あ、そうだ。」
俺は当然のように付いてきているシャスに声をかける。
「今回依頼が出たのは俺だけだから、シャスはアルレルで留守番・・・」
「私もついて行きます。」
「・・・する訳ないですよね分かってましたよ。」
最近、コイツに奴隷関係で何を言っても無駄なことに気づいた。ダメだって言ったとしても、意地でもやろうとする。『命令』すれば従うだろうが、これくらいで使う気はない。ほんとにコイツは何処を目指してるんだ?忠実な奴隷というか、最早完璧超人に指先突っ込んでる気がする。
「まぁ、いいけど。その代わり、俺が言うまで手出し口出しは禁止な、俺が絡まれたりしてもだ。必要だと思ったことのみ許す。」
「承知しました。」
流石に何でもかんでもやられるとつまらないからな。
さて、頭を悩ます問題はこれだけではない。俺の予想が正しければ、これから戦闘になる。かなり厄介な相手だ。それと戦うべく、俺は歩みを進めた。
◇
「ヤ。イヤ!」
案の定だよ全く。
さぁどうしたものかと、腰にへばり付くフォアを見る。
また数日戻らないって伝えたら、泣いて引き留められることぐらい予想出来過ぎていたことだ。
「マジか。あんちゃん。ちと働き過ぎじゃねえか?こないだサネル行ったばっかだろ。もうちょっと休んで行ったらどうだ?」
ワーデンさんまで留めてくる。ぶっちゃけこの人が引き留める理由も分かる。だって、
「俺達がいないと客がいませんからね、ここは。」
「そうなんだよぁ・・・・・・。あんちゃん達がいないと収入が、じゃねぇよ!こっちは一応心配してるんだ。」
それでも一応なんだな。隠しきれてないぞ。
「てか、俺達か。シャス嬢ちゃんも行くのか。」
「当然です。私は主様の奴隷ですので。」
「前から思ってはいたが、嬢ちゃん忠誠心高すぎないか?」
あ、ワーデンさん思っていたのか。世の中奴隷の大多数がこうな訳ないよなーとは感じていた。あの復讐娘がこうなるのは、なかなかなので放置しておいたが。
「とにかく、俺とシャスはしばらく戻って来ません。」
「あぁ。分かった。だが、早めに帰ってきてくれよ。宿の収入のためにも、フォアのためにも。」
そう言ってワーデンさんは離れていく。ちょっと待て。あんたの娘だろうがどうにかしろよ。
娘の説得を放棄した父親を睨み、フォアの説得に取り掛かる。
「フォア。」
「ヤ。」
「悪いな。また空けることになって。」
「ずっといてほしいです。」
「そういう訳にもいかないんだよ。今回に関しては俺たちもほぼ強制みたいなもんだから。それに、今我慢してくれると、シャスが遊んでくれるぞ。」
「主様。それは」
「いらない」
「ハッキリ言われると少し傷つきますね。」
仲良いよなこの2人。いずれコントとかしてそう。
「ま、今回も戻ってくるから。前に約束したろ?ちゃんと言ってから行くって。だから、今回も約束しよう。な?今ならシャスが遊んでくれるぞ。戻った後いくらでもな。」
「主様、どれだけ私を遊ばせたいんですか。」
「わかった。」
「フォアさん、それでいいんですか。」
ちょっと悩んだみたいだが納得してくれた。やっぱりこの子は賢い子だと思う。シャスが遊んでくれることに多分ひかれたかもしれないが。ちゃんと俺が言ったことを分かっているのだろう。これはもうちゃん付では呼ばないな。
フォアは俺から離れて、笑って言った。
「約束!」
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【あとがき】
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