第14話 ある少女の復讐の始まり
【前書き】
誤字報告、感想、ありがとうございます。
本編
◇
アネモネは数日かけてバカみたいな量の魔物を殺した。いや、俺も普段魔物狩ってたから分かるが普通こんな数にはならない。それに比例するようにアネモネも強くなってるし。俺の指導とかいらねぇだろ。放置ゲームみたいにしてればいつの間にか頂点とってそう。なのに、アネモネは指導はいつか~って会う度聞いてくる。どこを目指してんだお前は。
・・・ま、こっちの準備は終わったしアネモネもかなり仕上がったと思う。だから、進めていいだろう。
「ここどこ?」
アネモネが辺りを見回しつつ聞いてくる。今日は狩りを止めさせて、夜遅くになってからアネモネを連れてきた。もちろん、いつもの森ではない。
「ここはサネルの裏路地だな。サネルの中でも人目につかず、浮浪者等が跋扈しているらしい。」
「何のために?」
「魔物を殺すのはもう慣れただろ。だから、次は人を殺して貰おうと思ってな。復讐するときにどうせ領主の腰巾着とか騎士だとかは邪魔してくる。復讐が終わった後も人間を殺す機会はあるだろう。なら、ちゃんと殺っておかないとな。ここはほぼ無法地帯になっている。絡んできたやつは皆殺しにしていいぞ。」
ここにきた目的はアネモネが殺人を躊躇わなくなるようにするためだ。アネモネは獣人だが、見た目はほぼ人間だ。なら、人を殺すときに躊躇してもおかしくない。そんなことを実際にやればサクッと逝ってしまう。対魔物戦もだが、対人戦に2度目はない。対人戦では常に殺る側にいなければならない。追われて殺されるなんてもってのほかだ。だからこそここで殺人に対する感情を壊しておく。そう思ってここに連れてきたんだが・・・
アネモネは歩きながら人間を皆殺しにしていた。
俺、絡んできたらって言ったよな?無法地帯って事しか頭に入ってないのか。目に見えて躊躇ったり吐いたりしたら魔物の巣にポイっとしようかと思っていたが。どうやら日々魔物を殺していく過程で人間に対する躊躇いもまとめて消えていたらしい。もしくは人間に親を殺された時点でそんなものは崩れていたか。
いずれにせよ、嬉しい誤算だ。アネモネは俺と同じ邪魔だと思うものは無感情で処理できる側だったか。
「アネモネ。」
俺はアネモネを呼び止める。アネモネは怪訝そうな顔で近づいてきた。
「何。」
「いやな。実はこれ試験も兼ねてたんだよ。迷いつつ殺せるならいい方だと思っていたが、予想の斜め上をいってたんでな。完璧に限りなく近い駒ができて、俺としては笑いがこぼれるばかりで。体力は余裕か?」
「全然減ってない。何が言いたいの。」
「分からないか?今からお前の望みを叶えにいくぞって言ってるんだよ。」
アネモネは目を見開いて呆然としていた。急に言われるとは思って無かったんだろう。あそこまでの強さあって、殺人に躊躇いは無く、かつこっちの準備も終わっている。以前は魔法系の指導もしようかと思っていたが、自分であそこまで成長できるなら魔力の使い方を基本だけ教えて後は自分でやらせるほうがいいだろう。
やっと戻ってきたアネモネに俺は笑う。アネモネの目には思い出して再燃したかのような以前と、いやそれ以上の復讐心に加え、怨嗟や決意が見える。
「それじゃ、説明するぜ。」
◇アネモネ視点◇
私はレイの力でサネルの領主館前にやってきた。レイに不思議な力について聞いても全く答えない。そんなのがあると思って言われた。
そのレイは今ここにいない。私の復讐と合わせてやろうとしていることをしに行った。それより今はこっち。
あぁ、やっと。やっとだよ。お父さん、お母さん。やっも仇をとれる。やっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっと。本当はすぐにでも行きたかったけどあの時の私じゃ無理だと分かってたから、悪魔に縋った。この時までの時間は必要だと理解していたけど、とてつもなく長く感じた。
私は気を緩めないよう締め直す。そして魔力を使って館の構造や人数を探る。転移する前にレイが私のなかに自分の魔力を流してきた。おかげで、体内の魔力はなんとかつかめた。少ししか教えてくれなかったのは、私の場合自分で掴んだほうがいいらしいから。やっぱりレイのことは分からないことが多すぎる。魔力を流されたときも・・・
ん、把握し終えた。館のなかにアイツがいることも。何人か戦えるやつがいるけど私の敵じゃない。実力を測るのは得意だと思ってる。
一般だとこっそり入ったりするんだろうけど、そんなことはせず正面から堂々と歩いていく。ここはレイから指示されていて、なるべく派手に行けって言ってた。レイは何をしようとしているの?
早速門番を殺して中に入る。今、門番が叫んだから、すぐに人が来る。でも問題ない。全部殺せる。アイツが、逃げようとしても魔力で探っているからどこにも逃げられない。
そうやってどんどん進んで、この館の最上階、最も広い部屋に来た。ここまで何人殺したかは数えてない。ただ、そう簡単に数えれる数じゃないし、館の中にいた人間はこの部屋以外は皆殺しにしたから関係ない。たとえ非戦闘員だったとしても。
私は扉を切って中に入る。部屋には、護衛らしき騎士と
アイツがいた。
「き、貴様!この私を誰と心得る!私こそ」
「そういうお前こそ、私が誰だか分かっているのか?」
アイツの声に被せて言う。アイツの声なんて聞きたくもない。
言うと同時にフードをとる。レイに転移する前にフード付きの黒い外套を渡された。一足先の復讐祝いだって。
私の姿を見たゴミが叫ぶ
「!あの時の獣人!何しにここへ来た!ここは貴様のような穢れた存在が来ていい場所ではない!殺せぇ!」
号令がかかり、5人の騎士が襲いかかってくる。スピードは遅いし、連携も全く。こんなの話にならない。
私は5人分の首を切り、ゴミに向き合う。
「な、バカなぁ。私の騎士たちだぞ!何をした、獣人!」
「別に。ご自慢の騎士が弱かっただけ。」
「ありえない!クソ!どうせ妙な薬でも使ったのだろう、これだから穢らわしい獣人は。親が穢れているから、それが遺伝して」
「今すぐその汚い口を閉じろ。」
私が接近し血に濡れた短剣を首のすぐ近くまで近づけると、ゴミは尻餅をついた。
「私のお父さんとお母さんはお前なんかじゃ比べものにならないくらい優しかった。お前ごときが敵うわけがない善人で罪を犯すなんてそれこそありえない。なのになんで、あの日私達を殺しに来た?」
私が問うとゴミは肩を震わせながら、しかし顔は怒った表情で言った。
「そんなのは決まっている!貴様らが獣人だからだ!穢れた種族である貴様らは我ら貴族に殺されることで浄化されるのだ!しかも私自ら出向くという貴様らにとってそれだけで天にものぼる幸運を与えてやったというのに!慈悲深き私に剣を向けるとは!恥を知れ!」
このゴミの話を聞けば聞くほど私の心の絶望と怨嗟が増えていく。こんなくだらない理由でお父さんとお母さんは殺されたの?
「いい加減にしろ!!お前なんかが慈悲深い?幸運を与えた?ふざけるな!そんなのはお前がただ欲を満たしているだけだ!大きくなりすぎた自尊心っていうお前ごときが持っていいものじゃないものだ!それは私の両親のような善人が報われるべきときに持っていいものだ!」
私は叫んだ。しかし、私の心の冷静な部分は分かっている。このゴミには何を言っても無駄だと。なら、終わりにしよう。終わりにしてお父さんとお母さんのところに送ろう。
私は短剣をゆっくり振りかぶる。
「ま、待て貴様!私を、この高貴なる私を殺す気か!」
もう答える気も起きない。こんなやつにお父さんとお母さんは・・・。
「やめろ、やめろ、あ、あぁぁぁぁぁ」
ゴミが後ろに座ったまま逃げていく。私はゆっくりとそれを追う。この部屋に逃げ場はない。
すぐにゴミの背中が部屋の壁にぶつかった。
「あ、あ、やめろ・・・!」
私は短剣を振り下ろす、瞬間
「お、フィナーレにはギリギリ間に合ったか。ほんとに終わりのほうだが。」
聞き覚えのある声がしたほうを向くと、鍵がかかっているはずの大きな窓が開き、
レイが窓枠に腰掛けていた。
◇
【後書き】
私の想定するアネモネが強すぎて戦闘描写がかけない・・・。
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