第11話 契約

数日後。

俺達はサネルの町に到着した。もう空は暗くなっている。


あの後、何回か襲撃にはあったが被害ゼロ。これにて依頼達成だ。


道中あったことといえば剣を使ってみたことか。普段は魔法で片づけていたし、買ってから使ってなかったから、襲撃のときに剣だけで戦ってみた。別に忘れていた訳ではない。魔法に夢中だった訳でもない。

使ってみると、案外スムーズに殺せた。何となくだが意味不明能力のひとつ『武器』の効果じゃないかと思ってる。俺の能力じゃ効果までは把握できないから確定では無いけど確率は高いだろう。ただ、把握できない分どこまでが効果なのか分からない。これが少し懸念材料になっている。だって切るときにどこを切ればいいか直感的に分かって、切れ味も有り得ないレベルで高くなっていた。武器屋で職人が切っていたときよりかは確実によくなっている。他の能力もこんなんばっかなのか。


それはともかく。俺はオーナーと今後について話していた。


「ここまでありがとうございました。おかげさまで五体満足で辿り着けました。おまけに獣人の奴隷を買っていただけるとは。私としても獣人を連れておくのは不安だったのです。それで、このまま店までいらっしゃいますか?ギルドへ報告にいってからでも構いませんよ。」


「では、このままでお願いします。私としても早めに終わらせたいんですよ。」


「分かりました。ご案内します。」


こうして俺は町について早々契約しにいくことになった。






「ここです。」


着いた店は一見普通の商店といった感じだ。中の様子も至って普通。奴隷らしきものは見つからない。いるのは従業員ばかりだ。

俺は奥に通され、少し待つよう言われた。少しして、例の獣人を連れ、筒のようなものを持ったオーナーが戻ってきた。そこで一枚の紙を差し出された。


「そちらが奴隷契約書になります。代金等よく読んでいただき署名して、登録のため血を一滴お願いします。」


俺はさらっと読んでサインした。血は解体用のナイフで切った。代金は持ち金で十分だった。

オーナーはその紙の上に筒を置いた。すると紙が光り半分は俺に、もう半分は獣人に吸い込まれていった。あれが魔法具か。


「はい。ありがとうございます。これでこの奴隷はあなたのものになります。今後とも当店をご贔屓にお願いします。」


契約を終え、俺と獣人は店をでる。

ギルドにいって報酬を貰いたいが、今はこの獣人のほうが重要だ。こんなに面白そうなものを前に我慢なんて勿体ない。まあ、当の獣人な俯いて俺の後ろをついて来るだけだが。


俺は適当な宿屋をとる。どうせ長居するつもりはない。

宿屋の手続きをしたとき店番が後ろの獣人を見てギョッとしていた。差別は本当らしい。奴隷だと分かったのか、何も言われなかったが。


俺達は部屋に入った。ベッドとイスがひとつあったので獣人をベッドに座らせ、俺はイスに座る。さぁ、楽しい愉しいじんm・・・聞き取りの時間だ。


「さて、俺はレイ。お前は?」


「・・・・・・・・・アネモネ。」


「アネモネな。じゃあアネモネ。早速で悪いが何があって奴隷になったか聞かせてくれるか?あと、お前の復讐したい相手について。」


そう言うとアネモネは少し驚いた顔になった。ずっと無表情だったのが変わったな。


「別に驚くことはないぞ?差別されている獣人が奴隷になっているのと、お前の目にある絶望を見ればすぐ分かる。」


俺にある程度把握されてると思ったにのか、アネモネはポツポツと話し始める。


「・・・私は・・・両親と3人で暮らしてた・・・森の奥で・・・でも・・・アイツが・・・兵を連れて・・・穢らわしいものを消すって・・・両親が私を逃がしてくれて・・・ずっと走って・・・」


話している途中でアネモネ泣き始めた。まあ、大体そんなとこだろうなとは思っていた。俺が面白そうと思ったのはそこじゃない。


「アイツっていうのは誰だ?」


「・・・サネルの領主。」


サネルの領主は差別を口実に獣人を殺して楽しんでいる典型的な貴族か。この感じだと他にも黒いことはあるはずだ。

んで、おそらくだがアネモネはもともと明るい性格だったのだろう。話し方に出ているし、明るかったからこそここまで絶望が大きくなっている。そしてそれは復讐心も然り。こういった場面に直面したときアネモネのような子ほど行動力が大きくなるか無気力になるかはっきりする。


「ソイツが憎いか?」


「憎い!」


アネモネが慟哭し、俯いたまま答える。


「復讐したいか?」


「当然!」


ほとんど無意識に答えているのだろう。なぜこんなことを聞くかは意識していない様子だ。


「どんな手段をとろうと、どんな代償を払おうと?」


「復讐できるならなんだってできる!」


その言葉を待っていた。俺が面白いと思ったのはアネモネの復讐だ。


「アネモネ。」


「なに!」


「悪魔と契約する気はあるか?」


アネモネが顔を上げる。涙でぐしゃぐしゃだが、呆然としているのは分かった。


「悪魔・・・?私は悪魔に買われたの?」


「俺はれっきとした人間だ。ただ、今から持ちかける契約は悪魔そのものだがな。」


俺はニィと笑っいつつ真っ直ぐアネモネを見る。


「契約はこうだ。俺はお前の復讐を最大限手伝ってやる。それがお前の望みだろう?俺の指示に従えば絶対に復讐できる。その代わり、復讐が終わったら俺の駒として、奴隷として、どんな指示も聞く操り人形になれ。無論、死ぬまで永遠に、だ。俺と敵対しなければ指示がないときは基本的に自由。さぁ、どうする?」


言い終わるとすぐにアネモネは立ち上がり言った。


「私は復讐できるなら何でもいい。私と契約して。」


「即決か。思い切りのいい判断だが、代価を聞いていたか?お前に圧倒的に不利な内容だぞ?」


「どうせ私は奴隷の身。それに、ここであなたを頼らないと復讐できない。なら、確実な方を選ぶのは当然。違う?」


「ちゃんと自分の実力を分かっているか。いい買い物をしたな。契約成立だ。あぁ、復讐に関する指示はするし、この契約や俺のことのついては誰にも口外するなよ。そこは奴隷の魔法を使って縛らせてもらう。」


「別にいい。好きにして。」


「なら、『この契約やレイの秘密について一切の口外を禁ずる』。たぶんこれで縛れたはずだ。」


なぜこんな方法を知っているのかというと、オーナーに教えてもらった・・・のではなく久々のラノベ知識だ。だいたい同じだろ思って使ってみたが、うまくいってよかった。


「それじゃ、これからよろしくな。お前の復讐に合わせて俺もやろうとしてることがあるから、そのつもりでいてくれよ。」


「それは私の復讐に関係あるの?」


「関係あると言ったらあるな。まぁ、それは後日のお楽しみということで。ほら、明日から準備するつもりだからさっさと寝ろ。ベッドは使っていいぞ。」


俺は床にすわり壁にもたれて寝るつもりだ。

寝ようとすると、アネモネが話しかけてきた。


「なんで契約なんか持ち掛けたの?私は奴隷であなたは主人。奴隷の魔法を使えば言うことなんて簡単にきかせられる。例えば、ベッドじゃなくて床で寝ろとか。」


「命令しょぼくないか?ベッドを使わせるのはお前がただでさえボロボロなのに、床で寝かすと明日からに支障がでそうだからだ。復讐の日は早い方がいいんだろう?んで、なぜ契約なんかしたかって言うと、」


こういうところだよ。悪魔の契約なんて言ったのは。












「そっちの方が面白そうで、極限の状態でどんな選択をするか興味がわいたからだ。」













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