第5話 冒険者

作者より

本作についてお知らせとお願いがあります。

近況ノートにあります。URLよりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093080997274581


ここから本編です。




という訳でやってきました冒険者ギルド。外観は想像通りで、横の建物は酒場っぽい?何にせよまずは、登録しに行こう。ザ・異世界って感じがしてちょっと浮ついている。木製両開きの扉を開けると、正面にカウンターがあり手前には丸テーブルがいくつか。人間は少なめ。今の時間は仕事に出ているのか?視線を集めつつ、女性のいる受付らしき場所に歩いて行く。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。初めての方ですか?」


「はい。登録をお願い出来ますか?」


「畏まりました。では、身分証の提示をお願いします。無ければ、仮の物をお願いします。」


俺は女性に兵士さんに貰った仮証明書を渡す。


「ありがとうございます。レイ様、15歳ですね。確認できましたので、こちらにサインをお願いします。文字が書けないようなら代筆いたします。」


「文字はかけるのでペンをお借りできますか?」


女性からペンを受け取り、『』と書き、渡す。


「ありがとうございます。こちらが、レイ様の冒険者証となります。仮の物に代わり、正式な身分証のして利用できます。では、冒険者の制度やランクについてご説明いたします。」


・・・さっきの女性の様子、門番の兵士もそうだが、俺の字が読めている。門のときはともかく、今はちゃんと日本語で書いた。かと言って、この世界の文字が日本語でないのは看板で確認している。どういうことだ?いや、今は説明を聞くのが優先だ。


「まず、冒険者ギルドについてですが、どの国にも属さない中立の連合機関です。個人で、所属を表明している方もいらっしゃいますが、基本は冒険者も中立となります。但し、例外もいくつかございます。例えば、国家間の戦争ですね。次にランクについてですが、A〜Fの6段階で分けられており、初めは例外なくFランクスタートとなります。実は、もうひとつある条件を満たすことでAランクのさらに上、Sランクに認定されることもありますが、今までの歴史上にも片手の手で足りるぐらいしかいません。そして、依頼についてですが、あちらの依頼掲示板からご自身のランクに対応した依頼を受けることができます。レイ様は今のところFランクの依頼を受けることができます。依頼票を剥がしてこちらの受付にお持ちください。受付で受理され、成立となります。また自身のランクより高い依頼低い依頼どちらも受けることができません。他のランクの仕事を取らないためです。依頼完了後、再びこちらに来ていただき、報酬を渡して終了となります。魔物の素材、魔石の買取は横にあるカウンターで行っております。長くなりましたが説明は以上です。」


ふむ。


「いくつか質問をしてもよろしいですか。」


「何でしょうか。」


「まず、依頼の報酬量や失敗した場合はどうなるのでしょうか。」


「報酬に関しましては、依頼票に記載されている通りです。報酬はギルドが責任を持って保障いたしますので、通常減額になることはありません。しかし、不完全である場合や失敗された場合はその限りではないのでご注意ください。悪ければ降格、登録抹消もありえます。」


この人、仕事できる人間だな。シャキッとして堂々としてるし。あの短い質問から読み取って、ここまで説明してくれるとは。


「冒険者ランクの昇格条件は何ですか?」


「ランクは、Cランクまでは依頼数によって、B、Aランクはこちらからの指名依頼をこなしていただきます。指名依頼はCランクから入ってきます。依頼完了時に特殊な魔法の込められた魔道具を通していただきますので依頼数を誤魔化すことは不可能です。」


ここで魔法がでてくるか。しかし『特殊な』ね。できれば魔法の属性やら分類やら聞いておきたかったが、仕方ない。


「では、Sランクへの昇格条件とは?」


「・・・・・・」


女性が黙った。そんなに言いづらいことか?音がしたので女性の手元を見ると紙に文字が書かれていた。









『Sランクは、ハッキリ言えば災害認定です。現在ご存命のSランクがお一人いらっしゃいます。』









なるほど。そりゃ言いにくい訳だ。ギルドとしては、自分のところに登録している人を悪く言うのと同じだからな。それが中立を名乗っているなら尚更か。

俺と女性は何事もなかったように話す。


「そういえば、魔物も分類されているのですか?」


「はい。魔物もA〜Fランクで分けられています。ただ、これは冒険者ランクとは違い、同じランクの冒険者と魔物が単独で戦うのは、非常に危険です。魔物のランクは同じランクの冒険者複数人での討伐目安となります。」


「なるほど。あ、この町に図書館があれば場所を教えていただけますか?あと武器屋も。」


「こちらです。」


女性は地図を使って詳しく説明してくれた。Sランクのこと聞いたときにも思ったけどこの人早業すぎないか?


「質問は以上です。ありがとうございました。」


「いえ、無事をお祈りしております。」


そう挨拶して、カウンターを離れようとする。すると俺の前に大きな影が現れた。


「おい、ガキ。ここは子供のくる場所じゃねぇんだよ!しかも武器も持たずになぁ!命がけで稼いでいる俺たちのことナメてんのか!」


どうやら子供がここにきたことが気に食わないらしい。たいそうご立腹のようで顔が真っ赤だ。こんな時間から呑んでんのか?


「だいたいよぉ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


男ご何か言っているが俺の耳には雑音程度にしか聞こえてこなかった。

テンプレ!テンプレだ!まさか自分のこととしてお目にかかれるなんて!思わずにやけてしまいそうだ。


「聞いてんのか、ガキ!」


おっと、これ以上ほっておくと噴火しそうだ。


「失礼、受付の方。もう一つ質問をよろしいですか?」


「何でしょう。」


「冒険者どうしの揉め事はどうなりますか。」


「ギルドは基本不干渉です。但し、ギルド建物内では殺しは厳禁。正当防衛は認められ、先に手を出した方に罰金が課せられます。重なれば降格・抹消もあります。また、正当防衛でも備品を破壊されれば賠償していただきます。」


ふむ、つまりギルド内で殺人は無し、ペナルティ有り。外では知らんってことか。


「いい加減にしろよ!クソガキ!」


男が手も伸ばし、胸ぐらを掴んでくる。あーあ。


「すみません。これ手を出されたってことでいいんですよね?」


「はい。これにより、レイ様の正当防衛が認められます。」


「はぁ!?ギルドはこんなガキの肩持つのかよ!」


「ギルド登録に年齢制限はありませんし、先に手を出したのはあなたです。」


男が騒いでいるが、そんなのは無視して俺は男の肩をトントンとつつく。


「あぁ?なんだよガキ・・・」


ようやく気づいたのだろう。自分の片腕が取れていることに。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!なんだよこりゃぁ!」


へぇ、腐っても冒険者と言ったところか、腕がなくなっても叫び続けることはない。血はボタボタに垂れているが気づかないものなのか?まわりはざわついている。男が手を出したときには騒がなかったから、このざわめきは何故男の腕が取れているか、ということに対してだろう。

面白いのはあの有能さんが、目を丸くして絶句しているところだ。差し詰め、俺みたいな子供が簡単に腕を切るとは思ってもいなかったのだろう。それも、方法が全く分からずで。まぁ俺、165ないくらいだからなぁ。せめて170は欲しい。


「あのさぁ、おっさん。相手が子供だからってなめない方がいいよ?冒険者をやってるって言うならなおさらね。」


「うるさい!何なんだその態度は!受付と全くちがうじゃねぇか!」


「当然だね。私は私の判断で相手と接する。そう考えればお前は敬意を示すに値しない。子供だからと文句と付けて、掴みかかってくるような相手には。それにしてもくだらないね。自分の腕よりプライドの方が大事なのか。」


「ッ!そうだよ!テメェ、何しやがった!」


「アハハ!素直に答えると思うか?残念すぎるだろ。」


当然だ。俺的な考えは何と聞かれて答えるのは相手が同格以上のときだけ。わざわざ格下に、それも話すだけ無駄そうな奴に話すのは無駄が過ぎる。

因みに何をしたのかは簡単だ。魔法で風を操って切っただけ。実に単純で強力だ。おまけに静謐性も高い。


「ま、そういう訳だから。罰金はちゃんと払うことをおすすめするぜ。床の血溜まりはどうするかは自分で考えるんだな。」


そう言って俺はまわりの視線を集めながら、堂々と出ていく。ギルド内は誰一人として口を開いていなかった。さっきまでの騒々しさはどこにいったのやら。

それより今は宿代を稼がないと、男のせいで時間をかなり消費したした。あ、熊の素材換金してもらえてない。しかも依頼票もとれてない!?しまったなぁ。仕方ないから適当に魔物を狩って売るか・・・。


俺は急ぎ足で門を目指した。




























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