第4話 町へ
さて、今したいことは終わったし、そろそろ町を探しますか。熊はちゃんと血も含めて収納しておいた。空間属性に収納関係の魔法があった。適当に『収納』って呼んでる。この魔法、めっちゃ便利。なにせ自分が触れなくても収納できる。しかも、液体固体関係無く仕舞える。このまま熊は入れておいて時間経過について調べるつもりだ。熊があったところはを見れば何も変わらず草があるだけですっかり元通りになっている。よし、完璧。焦土?知らないな。
「んじゃ、行きますか。」
またまた空間魔法、『探知』(俺命名)の出番、便利便利。『探知』は自分を中心として周囲の地形、生物の数等々を範囲制限無しで把握できる魔法だ。そして頭の中に地図の形で浮かんでくる。これを使って調べたところここから東に50キロぐらいのところに『要塞都市 アルレル』がある。あぁ、『探知』は距離や町の名前なんかも分かったりする。歩いて行くには遠いから、『飛翔』の出番だな。早速『飛翔』を使って東へ出発する。今がだいたい高度100メートルぐらいか?『飛翔』の効果なのか空気抵抗も息苦しさも全く感じない。これなら飛ばしても大丈夫そうだな。そうそう、『探知』も『飛翔』もほとんど魔力を消費していない。ほんと便利。元いた世界だと一切考えられない話だな。そんな事を考えながら、さらにスピードを上げていった。
◇
「お、見えてきたな。」
円形の外壁に囲まれた町が見えてくる。あれがアルレルか。流石に目の前で降りたら怪しまれるよな。そう思って1キロぐらい手前で着陸。ここからは歩いていく。空をみるとまだ青いままだからそこまで時間は経っていないのだろう。実際何キロでていたんだ?少し歩いて、外壁が見えてきた。ちょうど門っぽいものがあり、その前に門番だと思われる兵士のような人間が立っている。他に人はいない。俺は近づいていき話せる距離までやってきた。
「止まれ。お前は何者だ?見たところ何も持っていないようだが。」
しまった。そりゃ、何も持っていない如何にも浮浪者ですと言わんばかりの人間が近づいてきたら警戒するよな。せめて鞄ぐらい持っておくべきだった。鞄は収納したし、加えて制服なのもあるだろう。ここが中世ぐらいの世界ならこの質の服はないだろう。できるだけ警戒を解かせるように話していく。
「はじめまして。私は故郷を出て旅をしているものです。持ち物はあったのですが、ここにくる途中に魔物に襲われてしまって。荷物も投げて逃げてきたのです。」
「そうか。それは災難だったな。ということは身分証も持っていないな?それだと奥で仮の身分証を発行する事になる。付いてきてくれ。」
良かった、優しい人で。流石にここで追い返されたら侵入するしかないところだった。ついていった先は門の内側、所謂詰め所らしきところだった。中には何部屋かあり、8人兵士らしき人間がいた。俺はその一室に通され書類を渡される。
「これがお前の仮身分証になる。その紙に名前と年齢を書いてくれ。町に入るのにも入場料として300エスいるんだが、お前のような者のために後払いできるようになっている。仮身分証と入場料はどちらも今日から2週間以内。一方でも過ぎると失効の上追放になるから注意しろ。」
「分かりました。ありがとうございます。兵士さん。」
「よし。ようこそ、アルレルの町へ。」
ふむ。とりあえず収穫はあった。まず、何のトラブルもなく町に入れたのは大きい。更に町の名前が『アルレル』であること。これで『探知』の表示が正しいことが証明された。あの門番は兵士であっているらしい。新規の注意事項は通貨。『エス』というらしい。詳しくは分からないから後回し。まずはどうにかしてお金を得て宿を取らないと。いや、その前に怪しまれないためにも服は用意しなければ。
◇
「なあ、あの少年、大丈夫か?」
「あぁ、話した感じ恐らくは問題ないだろう。」
◇
さて、町に入って最初にやってきたのは当然服屋だ。看板に服屋と書かれているから間違いないはず。扉を押し店内に入る。
「いらっしゃい。」
よし、服屋だ。それも幅広く商品を扱っているのだろう。男物も女物を見える。
「あんた、見慣れないかっこをしてるね。別の国から来たのかい?」
「そんなところです。冒険者用の動きやすい服を探しているのですが、置いてありますか?」
出迎えてくれたのは40代ぐらいの女性だ。オーナーさんか?他に店員は見えない。因みに、この町に冒険者ギルドがあるのは確認済みだ。
「もちろんあるよ。これから登録しに行くのかい?」
「はい。よく分かりましたね。」
「そりゃ、冒険者なら武器のひとつでも持ってるからねぇ。動きやすい服はそのへんだよ。」
俺は女性に示されたところの服から無難なものを選ぶ。下は伸縮性の良さそうな黒のズボン、上は黒にシャツにあと黒の外套も買っておく。
「黒ばっかだねぇ。全部で2500エスだよ。」
「代金なんですがこの服と交換していただけないでしょうか?この辺りにはない技術なのでかなりの価値になりますよ。」
「お前さん、お金がないのかい?その身なりだとまさかとは思ったけど。確かに見たことない生地だねぇ。いいよ。交換で。奥の部屋使っていいから着替えてきな。」
「ありがとうございます。」
よかった。ここで無理だと言われると正直危なかった。着替えを持ち奥に向かう。
待て、なぜ言葉が通じている?それだけじゃない。看板に文字も普通に読めた。町の名前や通貨からして、日本語でない可能性の方が断然大きい。にもかかわらず、ここまでスムーズに行くか?また、確かめなければならないことが増えた。
俺は着替えて制服を女性に手渡す。
「毎度あり。これからもよろしくね。」
「はい。ありがとうございました。」
よし、服も現地のものに着替えたし、次は冒険者ギルドだ。陽が沈むまでになんとか宿に泊まれるぐらいのお金を稼ぎたい。そう思って、急ぎ足で冒険者ギルドへ向かった。
◇
「礼儀正しいけど、不思議な子だったねぇ。いや、どちらかというと、不気味な・・・」
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