閑話 騒動の後

◇受付嬢視点◇

何なんでしょうか、あの男の子は?

あれどう考えても15歳じゃないですよね・・・。

だって・・・。


「あぁぁぁぁぁ!くそったれぇぇぇ!」


先にこちらをどうにかしないといけませんね。

どういうことでしょうか?先ほどの、男の子の攻撃?目の前で悪態をついている男は素行が悪いことで少し有名ですが、Cランク。ベテランよりの中堅です。私自身冒険者ですが全く見えませんでした。いえ、見えないどころか知覚すらできませんでした。私、それなりの実力はあるはずなのですが・・・。


目の前の状況を眺めながら、考え事をしているとカウンターすぐ横の階段から足音がしてきました。


「うるせぇんだよ。んだこの状況はよお。」


階段を降りて姿を現したのは、強面で厳つい男性。ウォルド・ソルディアさん。冒険者ギルドアルレル支部の支部長です。ギルドマスターとも言われる人です。


「おい、何があったら、受付前に血溜まりができる?」


話しかけられたのでかいつまんで事情を説明します。


「なるほどな。おい!回復魔法使えるやつはコイツにかけてやってくれ!」


ギルマスが言うと、見ていた野次馬の一人が男に回復魔法をかける。流石に部位欠損までは直せないため、止血程度ですが。


「はぁはぁ。流石ギルマス、俺の味方だ。あんなガキが冒険者なんておかしいよなぁ!」


・・・この男は何を言っているのでしょうか?しかもこんな人前で。

その気持ちはギルマスも同じだったようで。


「はぁ?お前、何言ってるんだ。おかしいのはお前だ。話を聞くところその少年は規定に違反してないし、きちんと手続きをした上で冒険者になったんだろうが。お前の言い分は通らねえよ。」


「なっ!?」


それは当然でしょう。少し考えば分かることです。

処刑は続きます。


「支部長権限でお前に処分を言い渡す。よく分からない言い分の上に、今日登録したばかりの新人に手を上げた。よって、Eランクへの降格、罰金15万エス、あとそこの掃除しとけ。」


「なっ、なんで俺が」


「黙れ。これは正式決定だ。」


ギルマス、容赦ないですね。普段から素行が悪かったとはいえ、いきなり2ランク降格の上罰金ですか。罰金高いですね。

ギルマスがこっちに歩いてきて、小声で言う。


「後で支部長室来い。」


定時で帰れるでしょうか。






扉をノックする。

私は返事を待たずに開ける


「失礼します、支部長。呼ばれたので来ました。」


「あぁ、座ってくれ。」


私が入室するときに返事を聞かないのはもう慣れっこらしい。

ソファーに座ると、ギルマスが対面に座る。


「それで、その少年について詳しく聞かせてくれ。」


私は頷いて、先ほどよりも詳しく話す。

話が終わるとギルマスは腕を組んで天を仰いだ。


「マジかよ。Cランクの腕を一瞬で切り落とす少年か。しかもお前が見えなかった上に分からなかった、か。」


ギルマスはしばらく考え込む様子の後、口を開いた。


「その少年に関しては様子見だな。」


私もそれが妥当だと思う。分からないうちに探るのは危険だ。


「あの男の処遇はあれでよろしかったのですか?些か重すぎる気がしますが。」


「あぁ、あれでいいんだよそしたらその少年に突っかかる奴は減らせるだろ。お前の話ぶりからヤバそうだってのはすぐに分かったからな。」


なるほど、と私は頷く。もう十分頭を抱えたいだろうが、もう一つ伝えなければならない事がある。


「ギルマス。」


「なんだ?」












私がその事を話すと、ギルマスは本当に頭を抱えて唸り出した。

全く笑えないことについての話だが、それとは別にギルマスの様子が可笑しくて笑いかけたのは内緒だ。







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