Day26「深夜二時」

 彼女との邂逅がなかった理由が単なる繁忙によるものだったことを知ったのは午前中。

 何故か泣かれて、訳が分からず逃げるように退散し、その後はとにかく仕事をして、そして。


 何をやっているんだと自己分析できるほど落ち着いたのは、日付の変わった深夜二時頃、自宅の湯船の中でだった。


 本当に何をやっているんだ、最近の僕は。


「村雨さんだけですよ、わたしのこと見抜いてくれるの。そんなところがまた好きで惚れ直しちゃいました」


 彼女の声がまだ耳の奥に残っている。彼女の涙がまだ目の奥に焼き付いている。


 嘘か本当か、僕の声が好きだと言って憚らない彼女の、お見苦しい物をと拭ったあの涙は嘘ではなかった。



 ならば、彼女の言葉そのものは?

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