Day20「摩天楼」

 自販機目当てで移動していると、彼女が廊下に座り込んでトマトを齧っていた。

 変わった人だと重々承知していたつもりだが、彼女の珍獣度数が摩天楼のごとき高さの数値になっていく。


「ふおお、村雨さんの目が遠いものに」

「珍獣が見えたので」

「『廊下に座ってトマト食べる珍獣』でしたら、いくらでも見ていってください」


 いや、即行立ち去りたい。


「もうお腹空きすぎて分析室出たら動けなくなりまして。トマトは肌身離さず持ってましたので、どうにかなった訳です」


 いや、どうにかなっていない気が。

 そもそも何処に持っていたのか、そのトマト。


「ふふ、女子には秘密の一つや二つあるものです」


 そう得意気に笑われても、その税密は知りたくない。

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