第15話
当たり前だがくっそ重たい人工知能『YOUSEI』に関しては持ち帰る事が出来なかった。
転送するにしても重た過ぎてメタクソ時間がかかるだろうし、それならいっその事そこのパソコンで操作するのが一番正解だと判断する事にしたのである。
それにしても、そんなにクソ重たい人工知能が納められているであろうここは一体何の目的で作られたのだろうか?
場所も謎である。
こんな廃棄された区画にまるで隠されているかのように放置されていた、この場所。
一体どれほど昔からあるのだろう?
そして、それほど昔からあるのにも関わらずなぜ今になってもなお健全な挙動を取る事が出来るのだろうか?
……電子媒体というのは案外脆い。
むしろ紙とかそれこそ石器の方が先の時代に残す媒体として相応しいと言われるくらいには、脆い。
という事は案外最近作られた奴なのかもしれないし、ていうかそもそも過去の遺産が過去のものとなるまでどれ程の時間が掛かっているのか、私は分からない。
ここら辺、もしかしたら原作のゲームの方をプレイしたら分かっていたのかもしれないけど、生憎ともう既に転生済みなのでそれに関してはもう絵に描いた餅である。
重要なのは、これからの事。
「そう、これからの事」
私は画面と睨めっこする。
向こうにいるのは人工知能『YOUSEI』。
私の顔を見て『なんか怖い顔をしているわね~』とか呑気な事を言ってくる。
『笑顔を浮かべてこないと幸福は訪れないわよ』
「そんな人間臭い事を言わないでください」
『失礼ね、私は人間を遥かに凌駕するスーパーAIよ。そりゃあ人間らしい事だって言うわよ。数学の集合に関しては貴方も分かるわよね?』
「生憎と今は勉強のお話をするつもりは全くありません――貴方の力が、必要なんです」
私の言葉に対し、彼女は『私の力が!』となんかテンションを爆上げさせていた。
『私の力! 良い言葉ね言ってぐらんなさい私が何でも叶えてあげるわ!』
「それじゃあ、外の世界を開拓するためのスーパーロボットを用意してください」
『……ちょ、ちょっと物質的な事は難しいわね~』
使い物にならねーなこいつ。
『い、いや! そのスーパーロボットを動かすのに必要な中身ならば私がなっても良いわよって話!』
「……まあ、私もそれを目的として貴方を探しに来たのですから、そのスーパーロボットに関してはこちらで用意するつもりではありますよ」
溜息。
それから「でも」と続ける。
「ここのパソコンに、あるいは貴方は知ってませんか? 外の世界を開拓する事が可能なスーパーロボット。その設計図とか」
『その、外の世界って言うのが具体的にどのようなところなのか分からないから、何とも言えないわね』
なるほど、確かに。
そう思った私はひとまず外がどのようになっているのかを説明する事にする。
私がマリア・セブンという管理者であるという事。
外の世界が割と安全で、だけど危険であるという事。
それを知られる前に何とかして安全に開拓する技術を確立するべきであると私が判断したという事。
『うーん』
と、彼女は唸る。
『別に、他の管理している場所に関しては放っておけば良いんじゃないの? むしろ失敗してくれた方が結果的に貴方の成功が評価される訳じゃない』
「ゴミ箱にカット&ペーストしますよ」
カチカチとマウスをクリックさせると彼女は「ひい!」と悲鳴を上げた。
『じょ、冗談だってば!?』
「確かにゴミ箱はもっと上段にありますが」
『そもそも私と言う存在を圧縮させるのは相当の時間が掛かるわよ!』
「なら建物ごとスクラップにしますけど」
『……じょ、冗談よね?』
「冗談ですよ、話を戻しましょう」
こほん、と咳払いをする。
「私としては、人間が犠牲になるのを看過出来ないんです。管理者としては失格だと思ってますが、でも」
『……まあ、そこら辺は分かるわよええ。でも、私も分からないもの知らないものは「分からない」としか答えられないわね』
そこら辺に関してはそちらで用意して頂戴。
そのように申し訳なさそうに答える彼女に、なんていうかこいつ人間臭いなーと思った。
人間らしく、人間のように扱わないとと思ってしまうので、扱い辛い。
とはいえハイスペックなのは間違いないのだろう。
そこを信じて、私は頑張るしかない。
「しかし、外側のあの環境。具体的にどうなっているのでしょうか?」
『写真とかあったら、解析するわよ』
「あー、それじゃあお願いします」
とりあえず、今回は彼女に以前私が撮影しておいた写真を渡しておいて、ひとまず今日はそれでおしまいにする事にした。
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