第13話

 かつかつ、と足音が狭い部屋の中に響き渡る。

 狭い部屋、と言ったがしかしその部屋は外側から見ていた建造物から想像出来る内部の大きさよりも広くあり、そしてそれは何故かというと理由は単純で部屋自体が地下にあったからである。

 扉を開けると現れたのはいきなり階段であり、そこを下っていくとこの部屋に辿り着くことが出来た。

 不思議な部屋だった。

 殺風景で何も置かれていないから、その存在意図がまるで想像する事が出来ない。

 そしてそうやって部屋を眺めていても何かが見つかる訳もなく、仕方がないので目の前に再び現れたディスプレイ付きの扉を調べる事しか出来なかった。

 その時点で嫌な予感がしていたのだったが、調べてみると案の定ディスプレイ――ていうかこう言ってしまって良いだろう。

 ゲーム画面にゲームが表示される。

 今度はどうやらシューティングゲームらしく、現れる敵キャラが撃ち出す弾幕を避けながらその敵を撃墜する必要があった。

 ……ていうか、壁に張り付いている操作ボタンを用いて操作キャラクターを動かすのはかなり大変だな。

 とはいえ、不可能ではない。

 そうやって私はそのゲームを数十分プレイした後、きちんと敵キャラを倒し通す。

 するとガチャリと扉が開く音が聞こえて来たので、私は深いため息をした後凝ってしまった肩をぐりぐり回しつつ扉を開けて部屋に入るのだった。


 そして、息を呑んだ。


 殺風景の風景が前にあったからこそ、扉を開けたとしてもまた同じような殺風景が風景が広がっていると錯覚していた。

 しかしながらそこにあったのは、壁一面のディスプレイ。

 それは一つのパソコンに接続されているのか、その前には巨大なデスクトップパソコンの箱のようなものと、机。

 机の上にはキーボードとマウスが置かれている。

 電源は付いていない――いや、主電源自体は繋がっているのか?

 実際、真っ暗なディスプレイ達はただ黒い画面を映しているだけでうっすらと発光しているみたいだ。

 恐らく電源ボタンと思われる場所が発光しており、私はドキドキしながら一応すぐに逃げ出せるように上着を脱いで扉の下に挟んで開けっ放しにしつつ、その電源ボタンを押してみるのだった。


 するとすぐに電源が入ったのか壁一面の画面達の真ん中に読み込み中という文字が現れた。

 ゆっくりと増えていくゲージ。

 そしてそれが満タンになると同時に「ウェルカム」という文字が出現し、そして次の瞬間――あり触れたパソコンのデスクトップが現れるのだった。


「……」


 いや、しかし。

 本当にあり触れたデスクトップの様相か?

 私は注意深く顔を使づけて画面を観察してみる事にする。

 とはいえ画面は多数あり、仕方がないので私は目の前にある画面をまず観察してみようと顔を近づけてみて――



 BON!!!!


「うわっ」


 いきなり画面が激しく発光し、私は驚き後ろに飛び退き距離を取った。

 部屋自体は真っ暗じゃなかったが、下手をすればその明るすぎる光を突然食らって失神していたかもしれないぞ……

 ていうか、そうでなくても眩しい光に眼下を焼かれて目が痛い。

 

「な、なんなんだ……?」


 私は恐る恐る画面に近づこうとする、するとそこで何故画面が激しく発光したのかその理由を知る事が出来た。




 なんか、画面に青緑に光る「丸」が浮かんでいる。

 無機質なそれは、しかしどこか生命的に点滅をしていて。

 ていうか、何ならパソコンのスピーカーから声が聞こえて来た。


『あはは、驚きすぎでしょ!!』


 可愛らしい少女のような声。

 私は驚きつつ慎重に尋ねる。

 パソコンにはマイクが繋がれていた、恐らく私の想像と仮説が正しければ、それは――


「貴方は、何?」

『ていうか貴方、まーちゃんじゃないわね。それなら貴方――マリア・セブンってやつ?』

「私を知っているのですか?」

『勿論』


 その存在は、どこか偉そうに。

 ただの発光する物体のように見えるがどこか偉そうに胸を張っているような姿を幻視出来た。

 そいつは、言う。


『私はこの世で最も凄いスーパー人工知能AI、その名も『YOUSEI』様なんだから!!!!』

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