第8話 バカップルと風紀勇者達の顛末
「クロード君。倒れてしまった時は心配したよ。どうかね。リーシャの膝枕は? わたしもマールちゃんに……」
「ちょっとお父様!!」
「もう大丈夫です。ご心配おかけしてすみませんでした」
「それではわたしは王家へ抗議に行ってくるのでな。
リーシャ。クロード君の事よろしく頼むよ」
「はい! 行ってらっしゃいませ! お父様!」
「お気を付けて……」
「行ってらっしゃいませ! お父様!」
いきなり登場した聖女様。なんでお父様呼ばわりなんだ? 何があった?
「クロード様。御加減どうですか?」
「ああ。もう大丈夫です。聖女マール様」
「安心致しましたわ。わたくし回復魔法が使えないので……」
今更衝撃の事実。あんた聖女じゃないんかい!
追放理由そっちだろ普通。
半日程で、公爵閣下はこちらへ報告へ来て下さった。
もちろん娘を処刑扱いにした殿下には、当然の事ながら抗議をいれたそうだが、やはりおつむの足りない殿下の事だ。反省もなければ、自分の仕出かした事の重大さも理解していないと言う。
それでも、公爵閣下はまさかのまさか俺をべったりお気に入りで、あり得ない程のご機嫌だった事もあり、詳細を決めるのは、外交中の国王陛下が戻ってからだそうだ。
――リーシャ様の断罪から二週間がたった。
リーシャ様も、殿下の沙汰が決まり次第、安全が確保されるので、学園へ登校再開出来そうだ。
俺は、今日も剣術稽古。
今は正直、誇張はしないが、歴代最強のソードマスターの上をいく強さになったんじゃないだろうか。しかも剣戟だけの場合でだ。まあそりゃそうだろう。実際死んでる訓練毎日やってればさ……
こんなに強くなって何がしたいのかって?
いや。とりあえず楽したいかな……
でも、きっとこれからは、大切なものを守る為に戦う……そんな予感がするんだ。
そして、ついに国王陛下が外交から戻られ、バカ殿下のやらかした所業を聞いた途端、公爵家を直接訪問し、公爵閣下に頭を下げたらしい。
そして、バカ殿下は、当然の事ながら、
運が良ければ、山賊にでも入れてもらえるかもしれないが、知っての通り、あそこの魔物は、まあまあ強い。
まあ無理だろう。
殿下に張り付いていた伯爵令嬢にも沙汰がくだった。
お家お取り潰し。どうすんだよ! 親御さん達は……さすがに俺にも助けられないぞ。
そして本人は……もう愛はないと思われるのだが、なんとバカ殿下と同様あの森にポイ捨てされたそうだ。
二人一緒だから幸せに盗賊入りしたかもしれないし、おとりがどちらになるかを争って、血で血を洗っているのかもしれない。
バカ殿下は、
「ハッハッハ。あの高慢女め。悪霊になりおったか!」
バカ伯爵令嬢は、
「あの高慢女が全部悪いの! わたしは悪くない!」
と二人して相変わらず語彙力のなさを発揮しながら、ポイ捨てされたらしい。
今、俺はリーシャ様、マール様二人を伴い、二週間ぶりに王都公邸に帰ってきた。あの悪夢のパーティー以来だ。とりあえずリーシャ様の登校復帰に合わせて戻った形だ。
ああ。せっかくのパーティーくらいは、せめて中座せず最後までいたかった。一生に一度だもんな。
あれ? そういえばバカ殿下のせいで、いたとしても、楽しいとは程遠かったか……
「ただいま帰りました!」
「ただいま戻りましたわ!」
「あっ! 二人ともお帰りなさい」
「帰りにマールちゃんに会ったんで、お茶してきたのですのよ!」
「クロード様! 良い薬草たくさん採れました!
あと、せっかくなので二人で“お色気にゃんにゃんパラダイス“へ、性女マールさんにご挨拶に行きましたのよ!」
「え? そうなんですか!?」
「すごく素敵な方ですね! 結局アーク様もドイル様もミミちゃんも、冒険者引退して、そこで一緒に働いていましたよ。なんでもマールさんのテクニックに魅了されてヘロヘロだそうです。ミミちゃんはマールさんに弟子入りしました。そうそう! クロード様に素敵なところ紹介してくれてありがとうと伝えてって言われました。すっごく皆さん楽しそうでしたよ!」
俺は勇者パーティーの再雇用先を斡旋した形なんだな。
「マール様はあの元勇者パーティーの三人はお許しになられたのですか? それから……男二人は様子おかしくなかったですか?」
そう……俺は既にあの時、性女マールさんを紹介した時点で、史上最悪のざまぁを行使していた。魔物の森で放置というヘイトの塊の追放だ。それに見合う対価を与えたまでだが……
「それが……会った瞬間、土下座されまして……真偽確認出来た後すぐ様、わたくしを放置していた事を思い出して、あの森へ戻ったそうなんです。でも追放前わたくしがバフしていた精力エネルギー贈与の恩恵が受けられなくなり、これはまずいとすぐ逃げ帰ったそうです。そして、わたくしを探していたところだそうで……
アーク様とドイル様は、何故か女の子の格好でしたね。
その後わたくしへの贖罪もあったそうで、すっぱり冒険者を辞めたそうです。わたくし……実はあの三人の事怒ってないんです。だってあれがあったから、クロード様にここに連れてきて頂けたのですから」
ん? 何かスルーしちゃいけない箇所があるような……まあいいか。
一応森に放置で、ポイッて意思はなかったようだな……
だがやり過ぎたざまぁなどと、思ってはいけない。それに転職に喜んでるようだしいいんじゃね?
いろいろさておき、あれだけ風紀にうるさい男二人が、性女マールの餌食になる。これが何を意味するか? 残念ながら、彼らはもう男ではなくなるんだ。性的に。やり過ぎかなと思いつつ俺は、やってしまった。史上最悪の過酷なざまぁを……この聖女様の為に……
二人はすごく仲が良い。
そして、誰もがうらやむ超絶美少女だ。
だからこそ……
疑問に思う。
あなた達、何でまだ
「あの……リーシャ様?」
「何でしょうか? クロード様」
「あなたは何故にまだここから登校なさっているのですか?」
「あら? わたしがここから登校してはいけないのですか? 膝枕をしてはいけないのですか?」
「いえ。全くいけなくありません」
「あの……マール様?」
「何でしょうか? クロード様」
「あなたは何故にまだここにいらっしゃいますのですか?」
「あら? わたくしは回復魔法は使えませんが、あなた専用のマッサージと、膝枕が出来るのです。いけませんか?」
「いえ。全くいけなくありません」
くっ! 膝枕を餌にされては、戦えない……
帰るつもりはなく、こここそがわたし達の居場所だ! みたいな感じだな…
「ちょうどいい機会ですね。覚えていますか? クロード様、わたしとマールちゃんの秘密の会談を」
「はい」
「まず、クロード様には男らしく『様』はつけないでわたし達を呼んでください!」
急な要望なんだけど応えなきゃいけないかな。
「そう言う事であれば……リーシャ。マール」
二人の頬が赤く染まった。
「男らしく呼んで頂いて嬉しいです。わたくしとリーシャちゃんは宣戦布告し合ったのです」
「宣戦布告? 喧嘩したのですか?」
「違います。お互いをライバルと認め合ったのです」
「わたくし達が、抜け駆けはしないで正正堂堂と勝負する為には、同じ土俵に立つべきなので」
「ああ、薬師の腕を勝負って事かな?」
2人が首を振った。
「「あなたを賭けてです!」」
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