第3話 リーシャの想い ―side リーシャ―
――わたしは夢でも見ているのでしょうか?
目の前の大きな熊が一瞬のうちに分断されていた。
恐る恐るうつむいていた顔を上げた。
そこには、優しいあなたの笑顔があった。
「……あなたは……薬師アルフレッド子爵家のクロード様……」
人生最期の最後で、ずっと憧れていたあなたに会えた。
知っていましたか?
わたしは学校での、あの時から……
そればかりではなくあなたは、今魔物から、わたしを救ってくれた。
あなたが王子様だったら、どんなに幸せだろうかなんて……
ずっと思っていたあなたが、こんな最後の最後で現れてくれた。
もう流せる涙などないと思ってた。
今日の人生最悪の日で出し尽くしていたと思っていたから。
馬車の中では絶望し尽くして流せる涙も枯れていた。でも……それでも、まさかあなたが必死に追ってきてくださったなんて……
でも……
わたしは、殿下にたてついてしまった愚か者で断罪された身。
こんなわたしを助けてはあなたが処分を受けてしまいます。
それでもあなたは……そうクロード様は全てを承知の上でわたしを救ってくれた。
本当に最高の王子様。
学校内では殿下との婚約が邪魔をして、誰も気をかけてくれなかった寂しい毎日。
わたしがぼぅっとしていて、階段から転げ落ちて足を擦りむいてしまった時、クロード様は、一人優しく声をかけてくれて傷薬を塗ってくれましたよね。そして医務室まで人目もはばからず、エスコートしてくださいました。
あの時の優しい手の感触は、絶対忘れません。
わたしには、あの想い出だけを持って人生終えるつもりでした。
でも……こんな最後の最後で現れたのは、あなただった。
クロード様が、またあの優しい手でわたしの汚れた手をとって拭いてくれる。
恐怖で濡らしてしまった下着を調え汚れてしまった汚らわしい手なのに。本当に優しく。
そして、信じられない言葉まで。
「これだけは自信を持って言えます。あなたは清廉潔白です!」
「嘘!? 信じて頂ける方がいるなんて……」
もうこの人になら何を捧げてもいい。
……どうしようもなく好きです!
わたしは、思わずクロード様の胸に飛び込んでいた。
困ったような表情でも、しっかり抱き留めてくれたクロード様。
その表情がまた一層かわいくて愛おしい。
”お父様。
筆頭公爵の威厳守れなくてごめんなさい。
お父様は、わたしが嫌なら無理に殿下との婚約はすることはないと言ってくれていたけど、わたしにはお父様お母様への感謝で、政略結婚も甘んじて受け入れていました。
でも……でも……
初めて自分の気持ちを優先してもいいですか?
わたしは……クロード様をお慕い申し上げます”
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