第12話 ドラニア地方1



カーラの宿を出た。

今日から、改めてドラニア地方を満喫しようと思う。


…とりあえず、ブラブラ歩いてみよう。


なにか、面白そうなものがあるかもしれない。

カーラの宿の玄関を出て、すぐ右に曲がることにした。

なんとなく、右の道を進んだ。

旅っていうのは、自分の直感が大事……だと、思う。たぶん。

ドラニアって、なんか広そうだし。


街並みを見ながら、のんびりのんびり歩いていると。


リュックサックが、もぞもぞと動き出した。

お、水助かな。

もう、このもぞもぞには慣れたもんだ。

「どうしたの水助」

そう声をかける。

―が、今回は違ったようだ。


水助がリュックサックから勢いよく飛び出す。


「はぁ?」

水助がリュックサックから飛び出したのは、前しか見えないフルールにも分かった。

思わぬ行動に、フルールは水助が飛び出したほうを見た。だが、水助らしき水色の物体は見当たらない。

そもそも、人が多すぎて足元がよく見えなかった。

(やば…見失ったかも)

キョロキョロとあたりを見回していると。


「おいフルール、みてみろ!」


あ、いた。

声のしたほうを振りむくと、水助がうっとりしながら、窓ガラスの向こうを見つめていた。

「なにしてるの、水助。勝手にリュック飛び出してさ」

「とりあえず、これをみてみろ!」

「どれ?」

やれやれ、という感じでフルールは水助の隣にしゃがむ。


「めちゃくちゃうまそう…」


水助の小さな口からヨダレが垂れている。

水助の視線の先にあるのは―。


一つのビンだった。

真っ赤な色のジャムを詰め込んでいる。

フルールは、その近くにあった説明書きを超えに出して読んでみた。


「『ドラゴンジャム、このドラニア地方でしか買えない、トクベツなジャム。ピリッとした辛さが特徴的。パンに塗って食べるとおいしい』…水助、食べたいの?これ」


(辛いものはニガテなんだけど…)

説明文を読み上げたあと、水助に尋ねてみた。


水助は、「食べたい!」と、キラキラとした瞳でフルールに訴えた。


よし、お金で決めよう。

フルールはもう一度ジャムに視線を戻し、説明書きを見る。

値段は、説明書きの上に記載されていた。


『銅貨4枚』


銅貨4枚かぁ…。

お金に余裕のないフルールにとっては、なかなかにいいお値段。

「水助。これ、辛いかもよ?本当にいいの?」

「いい!食べたい!」

パン好きの水助だ。

そりゃ食べたいだろうけど…。

フルールは立ち上がって、ため息をついた。


「仕方ないなぁ。ちゃんと一人で食べてよ」

「そうと決まれば、おいフルール!さっさと買ってこい!」

「はいはい」


命令口調は変わらなかった。

水助を捕まえて、再びリュックサックの中に。

お店の中に入って、箱に入ったドラゴンジャムを一個手に取った。

そのままレジに行き、お会計を済ませた。


箱に入ったドラゴンジャムを、リュックサックの中に投げ入れる。


リュックサックが踊るように動いたのは、気のせいではない。


―――――――追記―――――――

銅貨、銀貨、金貨などの値段です。


鉄可…一枚50円

銅貨…一枚100円

銀貨…一枚1000円

金貨…一枚10000円

金銀貨…一枚100000円


です。

たまに追加するかもしれません。



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