第11話 今度こそ、旅立ち



次の日。

フカフカでやわらかいベッドでぐっすり眠っていた―

はずなのだが。


フルールの寝相の悪さは、寝る場所が違っても、変わることなく。


朝起きたら、やっぱり床で寝ていた。

(背中が痛い…)

ベッドの上では、やはり水助がすやすや眠っている。

そんなことを考えながら、部屋に置いてあった時計を見る。


AM 8:56


うわ…寝坊した…。

ベッドの上にいる水助を叩き起こしてから。

フルールはため息をついて、一緒に落っこちた掛布団をたたんだ。


♢♢♢


「あっ、おはようフルール!遅かったね」

「おはよう。…朝は弱くて」


昨日晩御飯を食べた部屋には、誰一人いなかった。

みんな、もう朝食を食べて出て行ったとのこと。

しかも、身だしなみを整えて、荷物をまとめて…ってしていたら、いつのまにか8時半を回っていた。

「フルールの分の朝食、冷めちゃったから…ちょっとあっためなおしてくるね」

「よろしく」

昨日と同じ席に座って、リュックサックの中に入った水助を出す。

「朝飯か!?」

「そうだよ。今あっためてくれてるから、待ってて」


ワクワクしながら、朝食を待つ。


しばらくすると。

「お待たせフルール、スライムくん!」

目の前に置かれたお盆には、白いお米が盛られたお茶碗と汁物、そしてお茶と杏仁豆腐だ。

フルールにとって、和食を食べるのは初めてである。


「いただきます」

「いただきまーす!」


カーラの宿に、そんな声が響いた。


♢♢♢


「えぇ~、もう行っちゃうの?」

「うん。これ以上お世話になるのは、悪いし」

「そっか…確かに、フルールは旅人さんだもんね!」


明るくそう言ったメア。

そう、フルールは一応旅人なのである。

受付カウンターで、少しだけメアと話すことにした。


「そういえば、フルールはどうして旅をしてるの?」

「どうしてって言われても…わたし、全然思い出がないからさ。思い出作りにって思って」

「ふーん、いいじゃん!アルマの地方、たくさん旅してきなよっ」

「アルマ?」


アルマ…とは。

聞いたことのない単語に、フルールが首をかしげる。


「アルマ知らないの!?この島の名前だよ。アルマ・ガーデン。東西南北に島があるでしょ?」

「あるっけ…」

「まさか分からないの!?大丈夫!?」

「だ、大丈夫だよ」


たぶん知っているんだろうけど、いつのまにか頭から記憶が抜けたんだろうな。

まあ、いい。

フルールはリュックサックを下ろして確認した。

フルールがリュックサックをのぞき込むと、水助が「さっさと閉めろ!」とモンクを言ってきた。

だが、無視をして、荷物を確認していく。

キャンプ道具も、ランプも入ってる。オッケー。


再びリュックサックを背負ったフルールは、カーラの宿のドアを開けた。


「じゃあね、メア。テレポートで、また来るよ。ルーラさんにもよろしく」


「うん!また来てね、絶対だよっ」


「はいはい」


フルールはメアに見送られ、改めて、ドラニア地方を満喫しようと決めた。



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