第6話
「こんにちは」
2限の終わり、学食を出て少し肌寒い空気を切りながら歩いていると、急に白いワンピースの女の子が木の後ろから出てきて声をかけられた。ふわっと女の子の香りが漂ったと思えば、シルエットが太陽に照らされて見えないほど眩しかった。
「あ、アイコさん⁉ どうして大学に……」
俺はびっくりして声が裏返ってしまった。
今までアイコさんが大学に来たことは無かった。何かあったんだろうか。
アイコさんと喋っているところを祥太郎に見られたら大変だ。俺は慌ててアイコさんを校舎の裏に連れて行った。
「今日はちょっと、コウキ君に来てほしい場所があって」
アイコさんは柔らかく俺の手を引く。俺は人目を気にしながら彼女に着いて行った。
「ここ?」
ついた場所はクラブ棟だった。
文化部だし祥太郎が最近入った児童を預かるボランティアサークルは別の場所なので、見つかる心配は無いだろうけど、でもここになんの用事があるんだろう。
「こっち」
アイコさんは建物に入り二階へ進んでいく。無秩序なビラや落書きが授業に使う校舎よりも酷い。
アイコさんは奥まで進むとドアを叩いた。ゆっくりと重たそうな扉を押す。
「あ、アイコさん待ってたよ…って、男の子、あれ、志波くん……?」
中からとても懐かしい、小さくて高い女の子の声が聞こえた。
「ハ、いや、葉月さん……」
声がうまく出せない。自分の声じゃないみたいだ。
中にはハルちゃんと、もう一人の女の子がいた。
周りは本やら画材やらが散らばっていて、壁には無数の絵が貼られていた。床には画材やイーゼルが雑に置かれている。
そこは漫画研究部の部室だった。
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