第9話 図書館にいる黒髪美少女は、小動物っぽい?

 中村一真なかむら/かずまには好きな人がいる。

 その子は普段から学校の図書館にいるのだ。

 黒髪のショートヘアが特徴的な子で、容姿的に小柄で小動物っぽさのある美少女である。


 授業終わりの放課後。図書館に立ち寄った際に室内を見渡すと、いつも通りに、その子が席に座っていた。

 彼女はテーブルにノートや本を広げて勉強しているらしい。


 一真が彼女の事を知ったのは今年になってからだ。

 高校二年生の一真は、早川麗はやかわ/うららとは同じクラスになった経験はないものの、以前たまたま図書館に立ち寄る機会があり、その影響で彼女の存在を知ったのである。


 麗とは関わりたいが、彼女に対して直接関わる勇気など出せず、一真は本棚へ向かう。いわゆる小心者なのだ。


 一真が本棚近くにいると、近くの席に座っている彼女が立ち上がる。


 麗は一真がいる本棚のところまで近づいてきたのだ。


 彼女は、一真の隣までやってくると、本棚を前に、それから上の方へと手を伸ばす。


「……えっと、もしかして……その本を取ろうとしてるんですか?」

「え、ええ、そうだけど」

「えっと、じゃあ……お、俺が取りますよ」


 震えた声で問いかける。

 内心は物凄く緊張しているが、頑張って話を続けた。


「これだよね」

「う、うん、ありがと」


 本を渡すと、彼女からお礼を言われた。


「えっとさ、普段からここで勉強をしてるの?」

「勉強? そ、そうね、そんな感じ……」


 何かを隠しているような口ぶりだった。


「私ね……実を言うと、ここで勉強してるというよりも絵本を書く練習をしているの。だから、色々な本を読んだり、イラストの本を見たりしてるの」

「そ、そうなんだ」


 麗が今手にしている本の表紙をよくよく見てみると、可愛い動物が登場する絵本の書き方と記されてあった。


「もしかして、あなたも絵本に興味があったりとか? あるのなら一緒に活動したりとか。で、でも、無理なら強制はしないよ」

「お、俺もやるよ。むしろね」


 一真は勇気を持って彼女に返答したのだった。

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