第4話 俺の近くに、何かがいるらしい?

 高校三年生の夏の夜。

 田舎の夏は暑く、結城優ゆうき/すぐるは窓を開け、勉強机に課題を広げて課題をこなしていた。

 勉強ばかりの日々に、少々体に怠さを感じていたのだ。


 ……窓を開けているから、視線を感じるだけかな。


 優は席から立ち上がり、窓のところまで向かって行く。

 外を見渡してみるが、誰の存在もない。

 誰かに監視されているとかでもなかったのだ。


 俺の気のせいか。


 そう思って勉強机に戻ると、先ほどまで使っていたシャープペンがなくなっていたのだ。


「あれ? さっきまであったよな」


 優は慌てて、机の下や、その近くにあるごみ箱の中を確認してみるが、それらしきものはどこにもなかった。


「俺、疲れてるのかな」


 その場に佇み、悩み込んでいると自室の電球の光が薄くなる。

 そして、急に消え、部屋は真っ暗になったのだ。

 部屋にいる優はその場に取り残された感じになった。


「ちょっと待て。なんで? 電球は昨日変えたはず」


 何が起きているのかサッパリわからなかったのだが、それから背筋に何かが当たった気がしたのだ。


 刹那、寒気を感じた――


 背後を振り向くが、誰の姿もない。

 開けている窓から夜の風が薄っすらと入り込んでくる。


 優が恐る恐る窓の方を見やると、誰かが佇んでいたのだ。


 それは紛れもなく、妹の夏姫なつひめだった。

 三年も前に、とある事件に巻き込まれ亡くなった、四歳年下の実妹である。


 小柄な体系をした夏姫のところへ近づくように、窓へと向かう。

 すると、妹は少しだけ笑みを見せた後、姿を消し、それから部屋の明かりがついた。


「さっきのは確かに、夏姫だよな……見間違いではない、よな……」


 考え込んでいる際に、足元に何かが当たる。

 床を見やると、自分のボールペンが落ちていた。


 優はそれを拾い上げる。


「そう言えば、今年は妹の墓に行っていなかったな。この頃、勉強ばかりでゆっくりする時間もなかったし、今週中くらいには行ってみるか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る