第26話 恨み
結局次の日こちらに来たのは3人と2体だった。
朝っぱらから豪快にドアを開けてやってきた女の人はBランクの傭兵だった。
聞けば息子を例の黒曜に殺されてから傭兵になった遅咲きの人らしい。
続いてやってきたのは思わず健康を心配するほどにやせ細った男だった。こちらは黒曜とは全く関係なく、仲介屋の伝手で機械人形を2体ほど譲り受けた。ふらふらと帰っていったのだが本当に見送りは要らなかったのだろうか。
午後になると仲介屋も復活し6人と2体で会議に向けた作戦などを話し合っていた。
しばらくして狙撃ポジションを探るために仲介屋とカリスが出ていくとそこで会議は終了となり各々夕食を取ることとなる。ライアだけはそれを弁当箱に包んで何処かへ消えて行った。
傭兵の人が作ってくれた料理を頂いているとドアをノックする音が聞こえた。 仲介屋が言っていた最後の人物であり、最高戦力になりうる人がやってきたのだ。
だが事前に聞いていた予想には反して、入ってきた彼女は俺と同学年ほどの見た目をしている女の子であった。
「訳あって本名は明かせぬがイリルと呼んでおくれ。」
「レヴ・ナトゥアです。宜しくお願い致します。」
だがレヴは先ほどまでの不遜な態度を一切見せずに敬語でもって相手をした。
その様子に3人と2体が目を見張る。
「同年代じゃない。そんなに緊張しなくてもよいのですよ?」
「いえいえ。そんなわけがありませんとも」
「あら」
レヴの言葉にイリルはにっこりと笑い、次の瞬間にレヴは壁に叩きつけられていた。
「同類でしょうか?」
「少しだけ違う。」
不遜な態度を戻したレヴは痛む体を押さえながら体を起こす。
そして満面の笑みを浮かべながら悪態を吐いた。
「頼りになりそうだな。お婆様」
「コロス」
イリルは般若のような顔をレヴ向ける。それを見ても満面の笑みを続けるレヴだったが思わぬ静止が入った。
飛び出そうとしたイリルの動きを止めたのは後から入ってきていた男だった。
「お嬢様。一々子供の戯言に感情を動かさないでください」
「だがこの者は」
「言い訳は禁止です。」
イリルが男に説教を受けている横ではフェリスがレヴに対して苦言を零していた。
「何か事情があるのかもしれませんがあなたは直ぐに人を図ろうとしないでください。はぁ……」
「悪かったよ。同族嫌悪ってやつかね。」
「……何も反省していないじゃないですか。」
フェリスはため息をつくと、入ってきた男に聞いた。
「ご飯はすでに食べられておりますかな?」
「えぇ。」
「それは有難い。では自己紹介もかねて食後のデザートを頂くとしましょう。」
言葉と共にいつの間にか飲み物と茶菓子がテーブルに用意されていた。
どこから持ってきたのか分からないイスを機械人形が運んでくる。
全員が席に着いたのを見計らってフェリスが自己紹介を始めた。
「知っている人もいると思いますが私の名はフェリス。ここには仲介屋へ借りを返しにきました。」
これに少女と男が答えた。
「先ほども名乗りましたがイリルと申します。」
「その従者のゲイルです。ここへ来た目的はおおむねそちらの彼と同じですよ。」
その後も動機やらなんやらを一人一人が話していったが概ね黒曜への恨みか仲介屋への借りが原因でここにきているらしい。
だが俺より少し強いだけの仲介屋があの少女に貸しを作ることが出来るかはいささか疑問が残るがどうなのだろうか。
後片付けが終わりそろそろ寝る時間になると俺たちはベッドを片付け始めた。
想定よりも人数が多いため寝袋と呼ばれている簡易的な物で寝ることになったのだ。
よくわからないが地面で寝るよりははるかにましであろう。
外へ出ていた3人が帰ってくると各々好きな場所で寝始めた。
それは俺も例外ではなく、迫りくる眠気にあらがうことなく俺は瞳を閉じた。
深夜3時ごろ、物音と共に意識が覚醒する。
この年齢の子供というのは遅くまで起きているのは難しいが早い時間に起きるのは簡単だ。
周りを起こさないように気を付けながら階段を上って屋上へと出た。
「随分と朝が早いものだな。」
「健康的な生活を送っているものでね。」
下層の偽りの星とは違い、ここから見えるのは無機質な壁のみ。光は上からではなく下から上へと昇っている。
自らをイリルと名乗っていた少女は地下街の片隅で静かに踊っていた。
それを特等席で眺めながらレヴは呟く。
「エルフか。」
耳長族。レヴの元居た世界では不老の精霊とも呼ばれていた。
勿論そんなわけがなく大抵のエルフは300年ほどの時を経て死んでいく。
「博識なことだ。」
「仲介屋が教えてくれた童話の中にあった。」
「それだけではなさそうだ。」
舞を終えたイリルはレヴの隣に座る。
「異界からの渡り人よ。その不遜な態度は目立つぞ。」
「前の世界からの性分だ」
「死んでも治らんとは重症だな。」
この世界の耳長族の起源は他の世界からきている。
そうな高位につくエルフが肉体そのまま転移し、それが祖になったのだろうと仲介屋が言っていた。一部の人間には定説のようなものらしい。
「何を知りたい。」
「この世界の正確な歴史を。人間が、世界がここまでの世界でも争いがなくなっていない原因を。」
「これで3度目か。なるほど彼は相当な異端だったらしい。」
呆れたような顔でイリルが呟くとそのまま彼女はしゃべりだした。
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