第27話 秘密
「何を知りたい。」
「この世界の正確な歴史を。人間が、世界がここまでの世界でも争いがなくなっていない原因を。」
「これで3度目か。なるほど彼は相当な異端だったらしい。」
呆れたような顔でイリルが呟くとそのまま彼女はしゃべりだした。
「貴様がどの時代の人間なのかは知らないが、陽暦と呼ばれる今の暦が始まった5000年以降人類は急速に文明を発展させた。だが今に至るまで世界を巻き込んだ世界大戦は3回だけだ。」
「怪訝そうな顔だな。ここで言う大戦とは国民一人一人が総力をもって勝ちに行った戦争のことだ。誰もが戦争に加担していた。」
「民も?」
「そうだ。民間人への攻撃は国際法によって禁止されていたが、大戦では誰もが兵士や工場の歯車によって働く。実に皮肉にあふれていて人類のエゴが溢れた醜い戦いだったよ。」
歴史の生き証人であるエルフの目が、耳が異様な色を帯びて輝く。
「第1と2ここまでは問題なかった。だが第3次世界大戦において人類は禁忌とされた核融合に手を出した。核の応酬により地上は汚染され、大戦が終わって生き残った人類は何百年もの間を地下のシェルターに住む羽目になった。あまりにも暇だったのでそこでは数式やら電子機器やらの発明が盛んだったよ。そしてそれを『Mrイトウ』と呼ばれた東の住人が突如打ち破った。」
「放射能を除去する技術か?」
「そうだ。放射能に適応した地上の生き物から何十年をもかけてデータを集め、それを放出できる物体に変えた。それにより人類は再び地上へと這い出たのだ。人類は地上に大きな拠点を分けて作った後、なぜか出来ていた浮島そして汚染されていない空を目指して飛び上がったのだ。」
そこからは分かるなとエルフの話は終わった。
しばらく考えていたレヴが顔を上げる。
「そのときの拠点が下層ということか。まだ汚染は解除され切っていないんだな。」
「そうだ。もっと言えばあの人だかわからない生物共も新たなこの地で見つかった代物だ。」
どうやらエルフは元からいたらしい。
それにしても汚染されていた空白の数百年を解き明かさない限りではどうしようもないな。
「それでどうしてここの人間は物騒なのかだったか?」
「そこまではいってないが……」
「答えは簡単、文明として安定してないからだ。」
「ここまで技術が育っているのにか?」
俺がいた世界よりも遥かに進んでいるはずなんだが
「そうだ。技術ばかり進んでいるか自分たちがいかにも他の生物よりも上だと錯覚し、その誤ったプライドで他の人間にも接し、衝突する。下手をすれば陽暦1000年ぐらいの人間どもよりも精神は幼い。」
「シェルターとやらに入ったときと今ではだいぶ違うらしいな。」
「まともな教育者が軒並み死んでいたから仕方がないさ。」
皮肉気に嗤うと彼女は屋上から降りた。そのまま路地へと飛び出していく。
レヴの静止も聞かずに突き進む彼女は路地を曲がり、遅れてレヴが飛び込むと火を噴く銃口と怯えた様子の男が何人か転がっていた。
唯一の生き残りが最後の望みをかけて銃を伸ばすが、その手を今度はレヴが穿つ
「流石だ。」
「光栄なことで」
嗤い合いながら二人はいまだに残る気配の主へと殺気を送る。
「宣戦布告ならばそれで良し。遊びならば貸し一つとしましょう。」
悠久を生きるエルフの声が電子の耳を通してその主へと届けられた。
そして興味を失ったのか、二人は闇へとまぎれていく。
電子の耳を通して届けられた声がやけに耳に残る。
第18の闇と光どちらにも侵食し、勢力を伸ばし続けた帝樹と呼ばれる企業の頂点に立つ者は今、電子の海から覚醒した。
「21が殺された。」
「それはどちらに?」
「名も知れぬ2人組に」
主人が起きるや否や、今では珍しい執事服に身を包んだ老人が駆け寄ってくる。
その洗練された動きに安心感を得ながらも、主人は先ほどの光景を共有するために動画を出現させる。
「耳長族と少年ですか」
「あぁ。耳長族がいると報告を受けたので監視に当たらせたが全滅した。」
「耳長族は分かりますが、少年も年にしてはやけに落ち着いていますね。」
「最後の一人をやったのは少年だ。」
差し出された菓子を頂きながら主人は解説を入れた。
紅茶を淹れる執事は驚きが隠せなかったが、さらなる主人の言葉に思わずその手を止める。
「庭から木を動かす。遠方からの監視に努め、危害を加えることを禁止だ。人選はお前が決めてくれ。」
「分かりました。」
地層の摩天楼にて《庭師》の長が活動を再開した。
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