第25話 第Ⅳ機関

 一方で一目散に逃げだしたカリスとレヴは一定のところまで逃げた後に、追手がいないことを確認して安堵のため息をついた。


「さすがにビビったぜ。あれは本職だ。」

「それにしては落ち着いていましたが。」

「誤魔化せていたか。」


 見ればレヴの手からは滝のような汗が溢れて出ていた。 柄にもなくレヴが声を張り上げたのには自身の恐怖を和らげるためでもあった。


「しかしそれほどの人物でしたか?」

「一対一なら奇襲をしている以上負けない。だがけども二対一だったらこちらが確実に負ける。銃を手に取る以上人数の差は絶対だ。」

「一度死んでも死というものは怖いのですか?」


 笑みを顔に張り付けながらレヴが言う。


「前世ならば怖くない。が、今は少し怖いな。」

「そうですか。」


 カリスはレヴの言葉に何か感じることがあったのか黙ったままその場から動かなくなった。

 その様子を見ながたレヴは懐に忍ばせていた菓子を取る。


 それを頬張りながらカリスの後ろに手を伸ばした。


「焦るな。考え続けろ。幸いにもこの世界は前の世界ほどは死が近くないからな。」


 頭をポンと叩くとまた菓子を口の前へとはこぶ。今度は自分ではなく、カリスの前であった。


「これは?」

「仲介屋のところにあったお菓子だ。一回休憩しよう。」


 その後は何もおこらず地下街での生活は二日目へと突入する。

 その日も朝早くから出かけ、歓楽街を覗いてほぼすべてのメイン通りへと進んでいく。その途中だった。


「そこのお二人。今大丈夫かい?」


 いかに地下街とはいえ子供二人。元の世界よも遥かに民度は良いため自警団だか正義の人だか憲兵だか分からない人たちが心配そうに声をかけてくることはあった。


 だがその時に声をかけてきた人は確かに地下街を守る憲兵の一人だったがこちらのことを心配して声を懸けてきたのではなかったのだ。


「このあたりで不審な男を見かけたら教えてほしい。君たちは子供だからこの男からの警戒もないだろうから。」


 そう言いながらその憲兵が見せてきたのは俺たちが普段よく見ている顔だった。


「自らのことを仲介屋と名乗っている変な男なんだがここ最近、事件があった場所の大体にこの男が居たという証言があるんだ。何かわかったらここまで来て伝えてくれないかい?」

「「いいよー」ですよ」


 傍から見ると兄弟にしか見えない二人は憲兵が去っていくのを見てため息をついた。


「何やってんだあいつは。」

「なんなのでしょうね。」


 あれから気になって情報を探ると、予想以上に仲介屋は事件に首を突っ込んでいることが分かった。どうやら過去にもこういった仲介屋と呼ばれた謎の男がいたときがあったらしい、憲兵はその可能性を追っているらしい。


 俺たちは頭を抱えながら急いで宿へと戻っていった。

 案の定仲介屋は居なかったが、代わりに全く面識がない男が紅茶を息で冷ましていた。

 すぐさま銃を向けるカリスとレヴだったがその男は焦ることなく紅茶を机へ置いた。


「君たちが小さな協力者たちか。確かに頼りになりそうだ。」


 聞けば仲介屋の古い友人だと名乗った優男は名をフェリスという。

 その細身の体をよく見ると相当鍛えられていることがわかる。


 二人は銃をおろしてフェリスへと近づいた。


「元軍人ですよね?」

「そうだね。今は傭兵ギルド支部の副支部長を務めているよ。」

「良いんですか?」

「溜まりに溜まっていた有給を消化してきたよ。借りを返すまたとないチャンスだ。」

「なるほど。」


 思った以上の大物の登場に二人がビビるがフェリスは気にも留めずに紅茶を飲んでいた。


「久しぶりにこの種類を飲んだのだけども中々良いものだね。」

「お好きなの…ですか?」

「ふふっ。ため口は気にしないよ。訳ありなのは聞いているし。」

「ありがたい。」


 その後は街で買ってきたお菓子などを3人で分け合い、お茶会を楽しんだ。

 夕刻、いつも通りの時間に仲介屋が帰ってきた。

 だがいつもとは違い、満身創痍である。


「!?」


 慌ててフェリスが抱えてベッドに乗せた。

 その間にカリスが手当道具の準備を終える。


 レヴは仲介屋が入ってきたその瞬間から銃を構え続けていた。


「仲介屋コイツは敵か?」

「そうでもないが厄介な奴だから縛っておいた方がいい。」

「分かった。」


 ベッドに倒れこみながらも仲介屋はレヴに答えた。それだけに連れてきた人物が厄介なのだろう。


「アハハ!いいねいいねぇ。」

「発情すんなメス猫」

「そんなもの向けないでよ、コワイナー」


 仲介屋が縛っていたのにもかかわらずその者はいつの間にか縄から脱出していた。銃を向けるレヴなど気にも留めずに仲介屋が横たわるベッドの上へと昇る。

 仲介屋の頬をぷにぷにと押しながら女は自己紹介を始めた。


「元第Ⅸ機関所属のライアでーす。今の職業は教えられないけどヨロシクねー」


 第Ⅸ機関とは軍部でいうところの特殊作戦を務める精鋭が集まるところであり。軍部とは別の都市直属の兵力である。Ⅰ~Ⅹまであるが後半になるほど脅威度は上がると仲介屋が以前教えてくれた。


「まぁなんにせよ当初の予定以上に人は集まったな。」

「いや終わりじゃない。最低でもあと2人来る。」

「上等だ。」

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