第42話 門番に拒まれる
街が見えてきたので、フィンちゃんに話しかける。
「フィンちゃん、そろそろ着くよー。速度を緩めて欲しいなー」
「ガルルル!」
私が言わなくても、その前から徐々に速度を緩めてくれていたようだった。フィンちゃんは頭が良いよね。私が何も言わなくてもやってくれるなんて。いいことずくめだよね。
私は、フィンちゃんの上で、モフモフと毛をいじっているだけでいいんだもんね。もっと遠くまで旅がして見たくなっちゃうよ。
見える景色が段々とゆっくりになっていった。ゆっくりとした速度で迫る街は、とっても大きな街のようだ。首を180度動かしても、視界の端から端までで収まりきらないくらい。そんな壁に覆われていた。
壁は、宿の中庭にあった門と同様に、10メートルくらいの高さはあるだろうか。どんなモンス夕ーでも一筋縄では越えられなさそうな高さをしている。
「この壁すごいね……。街って、こんなに強固に守られているものなの?」
「おそらくだけど、モンスターから街を守るために壁があるんだと思うよ。森に大量のモンスターがいたみたいに、草原もどこから大量のモンスターが攻めてきてもおかしくないからね」
「なるほどね。それであれば、一気に駆け抜けてきて正解だったかもね。もうモンスターには会いたくないもんね、怖いから」
「そうだね。身体がいくつあっても足りないもんね。それじゃあ、あそこに見える門から、中に入っていこう!」
街道に沿ったところに、門がある。門の前には二人の門番が立っていた。頭からつま先まで、銀色に光る鎧をまとっているようだった。相当強い防具を持っていないと、モンスターの襲撃に耐えられないということだろうか。この草原を帰りも通過すると思うと、余計不安になってしまうな……。
少し街道を外れたところで、フィンちゃんに伏せた体制になってもらった。よじ登った時と同様にして、毛を掴みながら降ろさせてもらった。モフモフの毛をギュッと掴むことに抵抗はあるんだけれども。私も、少年みたいにひょいひょい上り下りできるパラメータが欲しいな。
門からは、近い距離にいるため、ゆっくりと歩いて門番のところへと向かう。門の前には列ができていて、順番に門番に通されていた。商人の人が多いのか、馬に荷物を引かせている人が多かった。
「貿易も盛んなのかな? こんな大きい街だもんね。この街だったら、確かに先生の免許をもらったりもできそうだね。かなり発展している街だね」
順番に並んでいると、私たちの番が来た。銀色に光る甲冑から顔だけ出した門番が、こちらのことをじろじろと見て、チェックをしているようだった。門番は、一通り確認し終えたのか、話しかけてきた。
「お前たちは、この街へ来るのは初めてか?」
「えっと……、そうです。初めて訪れまして……。ここに先生になるための許可をもらいに来たのです」
「おう。目的は了解だ。お前たち人間は、入場を許可できる。ただ、後ろにいるのは、お前たちが手名付けたモンスターなのか?」
「はい。そうです! 二人とも賢いので、人間に危害は加えないです」
門番は少し顔をしかめて、グランちゃんとフィンちゃんを見た。いつでも臨戦態勢に入れるようになのか、表情を一切緩めていない。
「たとえ、危害を加えないことが、本当だったとしても、この街に入場することはできない」
「へっ……? なんでですか? こんなに賢い子、他にはいないですよ。それにほら、そっちの馬さんとかは、通しているじゃないですか?」
「大きさと、種族の凶暴性。そういうもので、判断しているんだ。実際はそうじゃなくても、凶暴な種族だと認識しているモンスターが、いきなり街に出てきたらパニックになるだろ?」
「そ、それは確かにそうかもしれないですけれども……」
「街の治安を守るのも、我々の仕事なのだ。わかったら、モンスターは草原にでも離すといい」
門番は、毅然とした態度で言ってくる。おそらく、フィンちゃんたちを逃がさない限り、どうやっても通してくれないのであろう。
「どうした、後ろの列の者が入れないと困るので、すぐに判断してくれ。悩むようなら、再度並び直してくれ」
「うぅ……。どうしよう……。そうだっ! 小さい種族であれば、入れますよね?」
「うん? 凶暴じゃないモンスターなら確かに大丈夫だ。例えば、愛玩用のモンスターであれば、問題はないが……。ただ、そこにいるのは、ホワイトウルフに、グランドベアーだろ?」
「わかりました! それであれば、小さくしてきます!」
「へっ……?」
門番は、私の解答に困惑していた。隣にいた門番の方を見て、二人で首をひねっていた。不思議なことを言ってると、私のことを不審がるような目を向けてきた。
モンスターが大きいから、入場できないということであれば、小さくしたらいいからね。徳の玉に頼んで、小さくしてもらおう。
――はい。私の出番でしょうか。
――二匹からパラメーターを吸い取れば良いでしょうか?
私は、こくこくと頷く。徳の玉さんは、どこまで見えているかはわからないけれども、伝わったようだった。
――ティロルン。
いつもと音と共に、二匹は輝きだした。
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