第33話 徳の玉をゲット
門の外にいる宿の人のおかげで、門の鍵は手に入った。鍵が中庭に落ちている。月に照らされて光り輝いている。
宿の人にお礼を言ってみたけれども、答えは返ってこなかった。必死になってこちらに鍵を投げてくれたのであろう。草陰に隠れたあとは、またブルブルと震えている様子が見えた。
「ガウガウガウーーー!!」
相変わらずホワイトウルフは、吠えて威嚇してくる。ガチャンガチャンと、門を噛んでくるし……。怖くないと言ったら嘘にになりますよ。めちゃくちゃ怖いです……。
それでも、元女神にはやらなければならない時があるのです。私だって、場数を踏んできているんです。やるときはやれる。……はず!
なんだか、この状況って、実習中の最後の研修を思い出しちゃうな……。もしも、転生者がクレーマーだったなら、どう対応するかっていう研修。先
何人かに一人クレーマーっぽい転生者が現れるんだよね。「なんで俺は死んだんだ、元の世界に戻せー!」とかいう人がいるんだよ。女神の数も多いからクレーマーに当たる確率は結構低いんだけどね。
どこかでクレーマーに当たったとしたら、そこに研修生が呼び込まれれうの。いま振り返ると、結構酷な研修しているな……。女神っていうのも大変なんですよね。
クレーマーのレベルもあるけれども、そういう時って、あえてパラメー夕ーを多く振ってたりするんだよ。だから、駆け付けたら、ものすごく強い状態のクレーマーがそこにいるっていうわけ。
その研修をクリアして、初めて女神になれるんだ。いわゆる最後の関門っていうやつだね。普通の女神だったら、その研修を一度経験するんだけれども、私の場合は、五回も受けたことあるからね。
自慢じゃないけど、後輩ができたら言ってやろうって思っていることの一つなんだ。へへへ。
なんで、そんなに経験したかって、過去四回ともにミスしちゃってね……。
説得を試みたりしたけど、逆切れされちゃって襲い掛かってきたこともあって。後ろで見ていた先輩が、強制的に転生してくれて助けてくれるの。
パラメー夕ーを強制的に吸い取ったりしようとしても、時間が足りなくて、先輩による強制転生が発動。
時間稼ぎをすることも試みたんだけれども、そういう時の転生者さんって、頭に血が上っているのか聞く耳を持たないんだよね。いっぱい話しかけて見ても、ひたすら怒っているの。
それで、先輩にコツを聞いたんだ。先輩曰く、「話を聞かない奴は、強制的に倒すこと! それに限る!」っていう。なんとも先輩らしい助言をもらったのです。
私は、自称先輩の一番弟子な訳です。だから、やることは、その研修で習ったことをする。
「話を聞かない獣は、強制的に倒します!」
「ガウガウガウーーー!!」
作戦はさっきの通り。門を開けて、ホワイトウルフを中庭へと招き入れるの。そうしたら、逆に私が門の外へ出る。そして、門を閉めちゃう。
そうすることで、ホワイトウルフは中庭から出れなくなって、私は草陰に隠れている宿の人にカバンをもらう。そうすることで、徳の玉が手に入る。
よし。覚悟を決めるのよ、。覚悟を決めるのよ、私。いくぞー……。
拾ったカギを鍵穴に差し込む。冷静になるの。何が起きても、今計画したことを推敲すればいいだけだから。
震える手で、門のカギを開けた。その直後、ホワイトウルフが門を勢いよく開いて飛び込んで来た。
うんうん、そうなることは想定済み。落ち着いて対処よ。ホワイトウルフは勢いよく飛び込んで来たので、そのまま中庭の奥の方まで進んでしまった。
今のうちに私が、外に出て扉を閉めて、鍵を閉めれば良いだけ。力まずに、すっと体重を移動させて身体を門の外へと出す。そして門を閉じる。
まだ、ホワイトウルフは中にはの奥の方で、方向転換をしているようだった。この間に鍵を閉じてしまえば、一件落着。この勝負、私の勝ちだね。
今度は震える手を、しっかりと落ち着かせてから鍵を閉めた。完璧。私の作戦は完べきだわ。ふふふ。
そうしたら、あとは落ちついて、カバンを受け取ってしまえば良いだけ。
「宿の人さんー。これでもう大丈夫ですよー。カバンを下さーい!」
「そ、そうなの? 暴れていたホワイトウルフはどこにいるの?」
「大丈夫ですよ。門の中にいます!」
振り返って門の中を見ると、しっかりとホワイトウルフは門の中にいる。これで、さっき見たいに門の近くでホワイトウルフから能力を奪い取れば、終わりだね。
怯える宿の人の手から、カバンを受け取った。大丈夫って言ってるのに、怖がり過ぎだよ「ね。あの門って、全然壊れる気配が無かったもん。
「ちょ、ちょっと、あちらを見てください!」
「どうしたの、どうしたの? ホワイトウルフは門の中で、元気に暴れ回っているだけでしょ? そんなにビックリして声かけなくても良いですよ? 見なくても私は分かりますよ?」
「……いや、ちゃんと見た方がいいですよ。ホワイトウルフが助走をつけてそうなんですけども」
「助走をつける? 助走っていうと、ある程度距離を走って、勢いよく飛び立つためにやるあれですよね。高い所なんかも飛び越えれたり……、って、まさか……」
振り返ると、ホワイトウルフは中庭の奥の方から、走り出す体制をとっていた。
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