第17話 森の出口を目指して
「それでは行ってきますー!」
お昼前に準備は終わったので、お昼ごはんを食べる前に出発することになった。ちょっとお腹が空かなくもないけれども、夜になる前に森を超えるためには、すぐ出ないと間に合わないらしかった。
昼の明るい日差しの中、おじいさんおばあさんも明るい笑顔で見送りをしてくれた。
「気を付けていってくるのじゃぞー! 森は昼の間に抜けるのじゃぞ! 太陽の出ている間は安全なはずじゃ」
「できれば、わしゃーたちも、ついて行きたいけれどものぉー。わしゃーたちの足じゃ、夜になってしまうでのぉー……
二人とも、申し訳なさそうな顔をしていているけれども。ここまで準備してくれたことだけでも、感謝だよね。こんなに大きい荷物を準備してくれたんだもん。
……本当にこんなに大きな荷物がいるかは、分かっていないけれども。
「おじいさん、おばあさん、大丈夫です! 私たち二人で、なんとかしてきます!」
「そうだよ、僕がお姉ちゃんを助ける予定だからね!」
そういうと、おじいさんおばあさんは、頷いてくれた。
私たちが歩き始めても、見えなくなるまでずっと手を振って見送ってくれていた。
本当に優しい人。
いつか私も、そんな人になれたらいいな。
◇
森へ入って、しばらく歩いていく。
森といっても、木々に隙間があるので、木漏れ日が降り注いできて、とても明るい。
最初おじいさんと出会った時には、モンスターやら山賊が出たりしないか不安だったけれども。そんなことも起きないだろうという、明るい感じがする。
この森も、結構良い所かもしれないな。ふふ。
森を歩いていくと、少し開けた場所が見えてきた。
私が異世界に飛ばされて、最初に倒れていた地点だ、きっと。少し開けたところで草が生い茂っているところ。私がこの世界に来て、あまり日にちは経っていないけれども、なんとなく懐かしい気分がする場所。
「おねえちゃん、なんだかニヤニヤしてどうしたの?」
「ううん。なんでもないよ! ちょっとずつだけど、この世界に馴れて始めてきたなーって思ってね」
少年は、不思議そうに首を捻っていた。
この場所の思い出は、私にしかわからないもんね。
――グーーー。
しばらく歩いたからか、お腹が鳴ってしまった。
別に食いしん坊ってわけじゃないんだけれども、朝ご飯もちょっと少なかったし……。重い荷物を背負って歩いているわけだし……。
けど、お昼なんて食べてる余裕は無いんだよね多分。早く森を抜けなきゃいけないんだから、休んでる場合じゃないよね。
そう思っていると、少年の方から切り出してくれた。
「ちょっと、お昼ご飯でも食べない?」
「……そ、そうだよね。ちょっとお腹空いたよね」
少年の方に気を遣わせちゃった感じもあるかもだな。
年上らしくリードするべきだったなー。うーん……。
私が悩んでいると、少年はササっと荷物を置いて、持たせてもらったおにぎりを取り出した。そして、私に一つくれた。
「お姉ちゃん、なんだか悩みすぎかもしれないよ! 僕になんて気を遣わなくていいって!」
「あ、ありがとう……」
「僕、なんにも思い出せないけどさ。なんだか、昔もこんな感じで気を遣われてたことが多い気がするんだよ」
「そ、そうなんだ?」
「けど、気を遣わないで話せる方が、楽しいって思うんだよね!」
「う、うん」
「だから、お姉ちゃんは僕に対して気を遣わないでね!」
少年は、明るい笑顔をこちらに向けてくる。
なんだか、私は相手からら優しくしてもらってばかりだな……。この世界の人達は、何でもかんでも優しくしてくれて……。
この世界って、本当に良い世界なんだよね。
こんなに綺麗な景色もあるし、この世界の人も良い人ばかりだし。そう思うと、やっぱりこの世界を崩壊させるなんてできないよ。
「お姉ちゃん、やっぱり体調でも悪いの? 大丈夫?」
「……うん、大丈夫だよ! 心配させちゃってごめんね!」
この世界を救いたいって思うなら、やるべきことをやらないとだよね。
私のやるべきことは、コツコツ徳を積むことだから!
何か少年の為になることをしないとだ!
「私ができることなら、なんでもするからね! なにかあったら頼ってね!」
「うん!」
よし、早く徳を溜めれるように、頑張らないとだね。
◇
ご飯を食べ終わると、再び森の中を進んでいく。
今度は私がリードしないと!
……って思っているけれども、私よりも、少年の方が体力がありそう。
少年が先に行く形で歩いている。少年は、自分の身体に対して、すごく大きいカバンを背負っているっていうのに、スタスタと歩いていく。
私よりも大きいカバンなんだよ。なんでそんなに元気に歩けるのかな……。
「えーっと……? 森の中を真っすぐ歩いていくと、立て看板があるらしくて。そこまで行くことが今日の目標なんだってさ」
「そうなんだね。ねぇ、君ー……。ちょっとだけ待ってもらっていいかな……? なんだか、荷物が重くってね、これ……」
そう言うと、少年は立ち止まってくれた。
そして、少し戻って私のところまで来てくれた。
「ごめん、もう少しゆっくり歩くね。多分少しペースを落としても、大丈夫だと思うよ!」
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