第5話 徳を消費しておにぎり召喚!
森の中で出会ったおじいさんに連れられて、おじいさんの家へと向かう。
本当に優しいおじいさん。
私の先を歩いていくけれども、ちょくちょく振り返ってきて、私がちゃんと着いてきているかを確かめてくれている。
私が不安にならないようにということか、簡単にこの森のことを話してくれたりもした。
「この森はな一、美味しい果物が取れるんじゃよ。わしゃの籠にいっぱい入っとるじゃろ?」
「えー、どれですか? おおぉ、赤い実とか黄色い実とか。カラフルで可愛いです!」
「はは、そうじゃろそうじゃろ」
――ティロリン。
――おじいさんの心を癒したことで、徳が溜まりました。
あっ、また玉が鳴った。
この玉壊れちゃってるのかな……?
さっきから、おじいさんと会話しているだけなのに、ずーーっと鳴り続けてるの。徳っていうのは、人助けをしないと鳴らないっていうのに。私が人を助けているっていうよりも、私の方が助けられているのにさ。
こんな怖い森の中で、私が助けられているんだよ、優しいおじいさんに。
――グーーー。
「……はっ! おじいさん、モンスターが近くにいるかもしれないです! 今、すごい音がしましたよ!」
「はははっ。今のは、わしゃのお腹の音じゃよ」
「えっ? お腹を鳴らすって。もしかして、おじいさんがモンスターってことですか?」
「はっはっは! お前様は、冗談が面白いのぉ。わしゃー、お腹が空いても、人間なんて食べないぞよ」
愉快に笑うおじいさんは、楽しそうだった。
「今朝は、何も食べないで家を出てきてしまっての。おばあさんが握ってくれたおにぎりも、さっきお前様にあげたので最後じゃった」
「そんな大事なものを、私は頂いちゃったのですが! ごめんなさい!」
「いいのじゃ、いいのじゃ。家に着いたら、いっばいばあさまに、飯を作ってもらうからのぉ」
「そうはいっても……。そうだ! ちょっと待ってくださいね」
私の持っている徳の玉。
これって、溜めるだけじゃなくて、使えるはずなんだよ。神界では使ったことは無かったけれども、優しい先輩が説明書も一緒にくれたからね。
これを使って、おじいさんに食べ物を出してあげられれば。
手に持った玉を見つめて、お願いをしてみよう。
えーっと、確か……。
「メニューオープン!」
――ティロリン。
――メニューを開きます。
――ようこそ、徳の玉にて叶えられる願いをお選びください。
「おぉー! ちゃんと起動したっ!」
「お前様? なにを一人でしゃべっておるのじゃ?」
「あ、そうか……。人間には見えないんだった……。おじいさん、これは、ちょっとしたおまじないみたいなものです。ちょっと待っててくださいね」
「頭を強く打ったとかかのぉ? なにやら心配じゃが……」
「大丈夫です!」
おじいさんを心配させても申し訳ないから、早めにやっちゃおう。
えーっと、今回は食べ物を選択すれば良いんだよね!
空中に出てきたメニュー画面を押してみる。
――どの食べ物に致しますか?
出てきたメニューから選べばいいんだけど、あれ? おにぎりだけ?
なんでだろうな。まだ徳が低いのかな?
まぁ、これがあれば、おじいさんはお腹を満たせるはずだから、大丈夫か。
おじいさんに、見つめられながらメニューを選択していく。
「食べ物。おにぎり。これを交換してください!」
最後の決定ボタンを押すと、光の中から注文したおにぎりが出てきてくれた。
――チャリン。
徳のポイントが減ったけど、最初に合ったボーナスポイントみたいなものが無くなったくらいだから、大丈夫か。とりあえず、おじいさんに恩返しができれば、それで十分だもんね。
空中に出てきたおにぎりを、両手ですくうように受け取る。
――またのご利用をお待ちしております。
――ティロン。
音が鳴って、画面が閉じた。
おじいさんの方を向くと、不思議そうな顔をしていた。
私は、おにぎりを差し出す。
「おじいさんからもらったおにぎり、とっても美味しかったです。代わりに、私もおにぎりをあげます!」
「……ほよ? 何を言っておるんじゃ? お前様が、おにぎりなんて持っておるのか?っと、確かに手に持っておるようじゃが、なんで持っておるのじゃ?」
「これはですね、話せば長くなるので……。とりあえず、お腹が空いたおじいさんのためです! ちゃんと食べれるものです。これを食べておうちを目指しましょ!」
おじいさんは、首を傾げていたが、素直に私の手からおにぎりを受け取ってくれた。
私の方を向いて、笑顔を浮かべた。
「なんだか、不思議じゃが。お前様は、嘘なんてつかないじゃろ。ありがたく頂くとするぞよ」
「ありがとうございます!」
おじいいさんは、おにぎりをひとかじりして、もぐもぐと咀嚼する。
「ほ―――。これはこれは、すごく美味しいおにぎりじゃ! まるで、ばあさんが握ってくれたおにぎり。それも握りたての温かいおにぎりのようじゃ!」
「そうですか! 良かった一。気に入ってもらえて!」
「どうなっているのかはわからんが、美味しいわい。元気が出るぞよ!」
「ふふふ。良かったです!」
おじいさんに恩返しするためだったら、徳のポイント使っちゃっても、惜しくないもんね。
受けた恩はしっかり返さないとだもんね!
むしゃむしゃと、おじいさんは夢中でおにぎりを食べていった。
「お前様は、不思議な子じゃのお。なんだか一緒にいるだけで、ほっこりした気分になるぞよ」
「わたしもですよ、おじいさん。ふふ」
――ティロリロリロリン!
――おじいさんの心を癒したことで、徳が溜まりました。
うーん。また溜まってるし……。
食べ物を出せたから、壊れては無いと思うんだけれども……。
あれ?
今溜まったポイント、おにぎりを出すために使ったポイントよりも、多くもらってる?
なんで、こんなに増えてるんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます