第3話 八尺市のスカイフィッシュ
2009年
八尺市の山間部でとあるUMAが撮影された。
そのUMAの名はスカイフィッシュ。
棒状の体に板のような羽が波打つ小さな生き物だ。海外での目撃情報で知られるUMAなのだが、どういうわけか日本の八尺市で撮影されたのだ。
秋の紅葉を撮影しようとしていたカメラマンのAさんによると、スカイフィッシュの撮影は偶然によるものだったという。
僕はAさんと会ったことはないが、彼が撮影した写真とインタビュー記事を雑誌で見たことはある。
まず写真、紅葉により赤く染まった山を撮影した写真には、確かに奇妙な生物の姿を見ることができた。棒状の体に板のような羽、スカイフィッシュだ。
スカイフィッシュは一体が写真の中を高速で横切ろうとしているように見える。インタビュー記事でAさんは撮影のタイミングとスカイフィッシュが写り込むタイミングが偶然に重なったのだろうと語っていた。彼は撮影された写真を見るまでスカイフィッシュの存在には気付かなかったと言う。
スカイフィッシュは度々その正体について考えられ、古くから存在する未確認生物とも、単に写真に写り込んだ虫が高速で動いていたために、連続した動きがひとつの画面で撮影され、その結果として細長い生物であるかのように見えているのだ。と説明されたりもする。
僕もスカイフィッシュについてはただの虫が、珍しい何かのように写っているのだろうと考えている。Aさんは未確認生物であれば大発見だが、おそらくはただの虫なのだろうと答えていた。雑誌側のインタビュアーは未確認生物説を強く推していたが。
その写真が撮影されたころ、同じようにスカイフィッシュを撮影したという報告がネット上でいくつか上がっていた。そして、その報告の多くは八尺市や、その付近でのものだ。
そのころ、八尺市に虫は多かっただろうか。そんな気もするし、そうではなかった気もする。
ネットに掲載されていた、いくつもの写真。その多くはいつの間にか見ることができなくなっていた、今では僕の記憶のすみに存在するだけの写真たちの中で、特に印象的だったものがある。
それは曇り空に向かって撮影された写真だ。その写真の中で、弧を描くように何百、いや何千ものスカイフィッシュが飛び回る写真があった。
もしかしたら、それは加工して作られた写真なのかもしれない。ただ、町の新聞で一度こんなことが書かれていたことがある。
八尺村の方向に大きな柱ができていた。それはおそらく虫の群れによるもので、真冬だというのに奇妙なことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます