第7話 甘々の激甘
やっとの思いで過去の話をして、それから普通に話ができるようになったと思ったら甘々の口付けを交わす。
私はキスに驚きながらも「口塞ぐわ」って強めの口調からは考えられないほどに甘くて優しい。
何年か越しの恋が動きだす。
「ほんと無理、理菜可愛い。」
たしかに幼なじみで昔から知ってて、誰とでも仲良くなれる性格だとは思ってたけれども。
・・・なぜここまで私を諦めないのか私がわからない。
むしろ私の方が彼を諦めて、忘れたくて仕方がないからこそ避けてきたのに。
「ねえ、話読めない。全然わかんない。」
「俺がキスしてもわかんない?」
「・・・だって別に私にこだわることないじゃん」
「んーあるんだよね、それがさ」と言って再びキスをしようとする。
私は慌てて手で遮った。
その手もすぐに遮られ、今度は頬にキス。
「俺、馬鹿だったなって思う。
理菜の気を引きたくて、理菜の眼中に入りたくて、妬かせたくて大橋と付き合うことにしたのにそれで理菜に避けられるんだから。」
頬から再び唇にキスの雨。
あまりの甘ったるさに頭がクラクラする。
「俺、昔から理菜が好きだった。自覚したのは小6くらいなんだけどさ。
だけど俺からは言い出せなくて、中1はクラスも離れちゃうし、なんか上手いこと理菜が俺のこと意識してくれたらいいなって頑張ったけど完全に裏目にでた。
だから避けらてめちゃくちゃショックで。
それからずっと理菜のこと見てたのにまさかあんな徹底的に避けられるとは思ってなくて。
だから理菜に駆け引きするの辞めた。
まっすぐ向き合って理菜と話するって決めてた。
だから卒業式の日も理菜のこと探したし、本当は連絡先とか探りたかったけど、流石にストーカーっぽいから成人式はチャンスだと思った。今の俺は理菜にぞっこんなの。」
「わけわかんない」と言いかけた時にはもう遅い。
このままでは押し倒されてしまう。
「ほんとにだめなら押しのけろよ。俺に我慢はもう無理だし。」
「・・・・私の青春返せ馬鹿。」
私があんなに辛かった「彼女できた」報告は、私の気を引くため?
私の事見てた?ほんとに?
私はあんなに辛くて、苦しくて行き場の無い思いを心の奥底に隠してきたというのに。
「青春は間に合うだろ。まだ20歳だよ。」
「じゃあ私の長年の苦しみを慰めて」
「俺でいいなら喜んで。甘々の激甘にする。」
私は抱きしめられて行き場の迷っていた腕を智紀の背中にまわした。
「ちゃんと確認していい?俺の事好き?」
少し不安そうな智紀の声がする。
「・・・・好き。」
「可愛い。俺も好き。」
可愛い、のはそっちでしょうが。
話すまで不安で仕方がなかった。
こうして話せると思っていなかった。
避けていたこと怒られると思っていたし、まさか智紀が私を好きだと言ってくれるのもびっくりした。
「理菜さ、眼鏡辞めたんだね」
「え?うん。そうだよ。」
「でも理菜が中学の時眼鏡だったおかげで他の奴らが理菜の可愛さに気づかなくて安心だったよ。
理菜は眼鏡取るとめちゃくちゃ美人だから。」
よしよしと私の頭を撫でる智紀は、私の知ってる智紀とは別人なんじゃないかってくらいに優しい。
昔から優しいところが好きではあったけど。
「どうしよ、まじで無理かも」
「なに?」
「もっといちゃいちゃしたい。」
「だめだよ。下にお母さんいるよ?」
「ですよね。理菜がしっかりしてて俺は助かる。でももうちょい。」
はいはい、と息を吐く。
それから私が智紀の胸に顔を埋めてぎゅっとくっついた。
「ちゅーまでかな。」
私は呟いた。
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