第3話 過去を縛るもの
人間て、案外昔の嫌な思い出が消えない。
いい思い出は沢山あるはずなのに、嫌な思い出だけが過去を縛り付けて、それのせいで自己肯定感がガクッと下がってしまった。
(せっかく話せたのに・・・私のバカ。)
同窓会で再開した初恋相手。
クラスの中学にいて、みんなと仲良しで。
でも私は違う。
中学からかけ始めた眼鏡に芋っぽい黒髪。
引っ込み思案で口下手で暗くてまんまといじめのターゲットにされて。
いまだに初恋相手を忘れられずに20歳になってしまったし、同窓会の後にSNSをみると同級生が「復活愛」とか言ってカップルが爆誕していて私は余計に気持ちがへこむ。
智紀とは、小学校まで頻繁に仲良く喋って記憶がある。
だんだん男女別れて遊んだりするようになっていても、男女の仲良しグループに私を入れてくれた。
中学校ではそうはならなくて、クラスも違ってしまったからか私は孤立した。
(んな漫画みたいな展開あるわけないよ。ドラマじゃあるまいし。
再開したからって上手くいくわけないし)
恋愛ドラマみたいな再開は無い。
・・・・なんて考えてたら一通のメッセージ。
*こんばんは河上智紀です。
一言と共に可愛らしいスタンプがポンッと送られてきて、私は驚いた。
まさか本当に連絡してくるとは。たしかに、今主流のアプリは電話番号と同期されているので、「知り合いですか?」欄に私がいてもおかしくは無い。
・・・・相手が私の番号を消していなければの話だが。
(てかなんでまだ私の番号持ってるの?)
たしかにあの当時はまだスマートフォンは無かった。
みんな携帯電話の番号やメールアドレスでやり取りをしていたけれども。
・・・・期待してしまう。
*高見理菜です。
とりあえず返事してそわそわしてみる。
*返事ありがとな。番号変えてなくて安心した。
*俺は今○○大学通ってる。りなは?
私は平静を装いながら文字を打つ。
*○○大学だよ。
顔を見たら、絶対話せない。
智紀の「彼女できた」報告が私のことを縛り付ける。
*実家いるよね?この間、スーパーでりなのお母さん見かけたよ。
*りなの空いてる日、会いに行きたい。家にピンポンしに行くよ。だめかな?
智紀は昔と変わらない様子で話してくる。
いつもそう。私がそうやってお願いされたら断れないって知ってる。
幼なじみだから家バレしてるし今度こそ逃げられない気がした。
食事行こうとかはらまだしも、家に来るなんて強引すぎる。
でもよく考えたら小学校までは家まできて私を遊びに誘ってきていた。
*後期試験終わったら時間あるからまた連絡して
お互い大学生で、しかも成人式終わりの真冬。
後期の授業が終われば時間ができる。
(いいかげん、向き合わないとダメか。)
私は腹を括ることにした。
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