ヤンキー少女は普通に暮らしたい

@nanamin0311

第1話

朝の通行時間。佐々木美奈はネットのラジオを聞きながら学校に向かっていた。


『最近のトレンドは……』


周囲の会話を遮断するために聞き始めたラジオ。朝の時間帯だから、特に面白そうな番組はやっていない。


(この見た目だから避けられてるし……)


金髪のショートカット、ジト目で仏頂面の表情で飴を加えており、周囲の生徒からはヤンキーなんじゃないのとひそひそ話が聞こえている。


(中身は普通なんですよ……私)


外見で不良と判断されることが多いけど、中身は普通な女の子だし、学校の風紀を破ったことは一度もない。


(家は権力を持ってる裏社会の組。親が過保護だから学校の登校時には部下をつかせるって言ってきたし……)


父親は私のことを愛しており、組員を登校時につかせるといってきたが、プライベートの時間まで介入されたくないので断った。


「俺たちといい所にいこうよ」

「通してください」


私と同じ学校の制服を着ている女の子が他校の男子の二人組に絡まれている。


(漫画みたいな子)


肩まで伸ばした髪、アニメやドラマの世界で見かける令嬢のような女の子。


(……仕方がない)


周りは面倒ごとに巻き込まれたくないと無視しており、女の子はナンパをしている男性に腕を掴まれており、手を振り払うようにしているが、男性と女性では力の差があるみたいで、離せないでいる。


「やめなよ。その子、嫌がってるじゃん」


彼らに向ける目は人を何人を殺してきたような冷たい目とドスを抑えた低い声色。


「は? なんなん? お前、こいつの連れ?」


その中の1人はズボンのポケットに手を入れながら、私に向かい、もう一人は私のことを気づいたみたいで向かう男性を制止するように声をかける。


「こいつ……ここら辺を収めてるやつのトップの娘!」

「マジで!? 不良高校生を病院送りにしたって噂だぜ!?」

「気に入らないやつは挨拶として殴るみたいだぜ!」


そんなことしてません。


「ヒっ!!」

「す、すみませんでしたー!!」


ゴミを見るような眼を2人に向けると、2人は青ざめた顔をしながら、その場から逃げるように去って行った。


「平気?」

「はい。あの……ありがとうございました」


女の子は感謝の気持ちを示すように丁寧にお辞儀をする。


「うちの学校、有名だから1人で登校してるとナンパされるから気をつけた方がいいよ」

「そうなんですね……。普段は付き添いの人がいるんですけど、今日は体調が優れないみたいで1人で来たんです」


うちの学校は都内では有名なお嬢様学校。男子からはナンパの標的にされやすい。


「あの噂は本当ですか?」

「……全部デマ。なにもしてないから」


不良に喧嘩をしかけたことはないし、普通に生活してるだけなんだけど、家柄からデマが流されることが多い。


「生きにくい世の中だよね」


この子に愚痴をこぼしても仕方がないとは理解してるけど、朝からの出来事にため息をつく。


「一緒に登校してもいいですか?」

「あ、うん」


私の愚痴を聞かずにいてくれたのか、それとも聞いた上で言葉を飲み込んでくれたのか、そんなことを思いながら、私は彼女と一緒に登校した。

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