09 頭がおかしくなっちゃうよ!

翌日、早めに食事を済ますと早速森へ出かける。

そして初めてオークがうろつくエリアまで移動する。そして丁度良い茂みを見つけると、それに隠れるように身を屈めチャンスを待った。


「いた!オーク!」

近くまで移動してきたオークを見て思わず声が出てしまうが、どうやらそのオークは気づいていないようだった。


幸い1匹のようだし…

魔法の袋から鉄槍を取り出し両手で強く握る。


僕は通り過ぎたそのオークの背中から、心臓を目掛けて[突く]を発動する。

狙い通りに鉄槍は叩き込まれ「ぐぎゃ!」という耳に残る鳴き声を上げるオークは、すぐに絶命せずに両手をブンブン振り回している。僕は思わず槍を手放し距離を取る。


周りを警戒しながらも目の前で胸から血が流がし、動きの悪くなってゆくオークを見ていると、ついに膝をついてそのまま前から倒れたのを確認した。

それに合わせるように僕もへたり込む様に地べたに座る。


「やっぱり昨日のオークは弱ってたんだな。今度は心臓を一突きしたのに、かなり長く暴れてたし…」


そんなことをつぶやきながら、能力玉もスキル玉も出なかったことにガッカリする。

この間のはやはりスキル玉と同様、初回ボーナスみたいなものなのだろう。それとも能力玉の方は1種類につき1個しかでないとか…それなら本当に残念だが、せめて10匹ぐらいは狩ってみようと思った。


休憩をしつつも解体を終えと、すでに30分は経過していたのだろう。魔力が28に回復していた。よし行こう!そう思ってさらに場所を変え茂みに身を隠す。血の匂いなどで警戒されると失敗するかもと思ったからだ。


さらに2匹、3匹と単独でうろつくオークだけを狩り、遂に4匹目で念願の能力玉が出現した。


そしてそれをつんした後、能力板スキルボードを出し確認する。


――――――

アレス クラス:大盗賊 Lv29

体力30 魔力19(30) 外殻20

力11 硬3 速3 魔3

スキル [突く/Lv4][疾風/Lv3]

――――――


「やった!」

またも4増えていた力に興奮する。


これなら、角兎ぐらいならスキル無しで狩れるのでは?そう思っている。そうなれば精々[疾風]を使う程度で剣でばっさばっさと…まずは剣も必要だな。それよりもLv31になればさらに能力値も上がる。

そして能力玉が+4なのか基礎値に+1なのかも確認できるだろう。


段々と手際が良くなってきた僕はオーク肉を綺麗に解体しながら、早く次のオークを倒したくてうずうずしてしまう。


「やっぱり魔力が30になると使用回数も増えてかなり楽だな」

そう独り言を言いながら、また茂みへ移動する。


そして目の前にはオークが2匹。さっきはスルーしてしまったが、今度はどうしようか迷った結果、頑張ってみることにした。

魔力は22。最悪4回はまでは大丈夫。


そう考えながら1匹のオークの背後から一気に[突く]。

すぐに手を離してこちらを振り向いたもう1匹のオークに向かい、心臓を目掛けて軽くジャンプしながら[突く]で拳を叩き込むが、そのオークはよろけたもののまだ健在のようだ。


「うわっ!」

よろけるオークを見ていると、心臓を突かれた方のオークの拳が自分の顔の横を通り過ぎ尻餅をつく。


あれはヤバイ。ふらふらしてるが顔に喰らえば気絶は免れない。

怖い。ヤバイ。正直何か漏れそうだった。


だけどここで引いたら意味がない。

僕は短剣を抜き立ち上がると、再び槍が刺さっていないほうのオークを[突く]と、さすがに前回の安物の短刀とは違い、ずぶりとオークの胸に深く刺さり嫌な鳴き声を上げて地面に倒れて行く。

倒れたオークはバタバタと手足を動かし暴れていた。


その時には、槍が刺さった方も前倒しになっており、背中がまだ動いているので絶命はしていないが、もう時間の問題だろうと安堵した。少し下着が湿っぽいのが気になったが、運動したからね。汗でびしょびしょだ。


そして鉄槍が刺さった方のオークが絶命したのか、その上には能力玉が…これは運が良いと思っていいのかな?

僕はそれをつんすると能力板スキルボードを出す。

Lvは30に、力は15になっている。後もう一つレベルを上げれば能力玉の検証になる。そう思ってまた解体をする。そろそろ魔法の袋がいっぱいになりそうだ。だがオーク肉の2つや3つなら持って帰れるだろう。


そう思ってさらに移動と待ちを繰り返した。

無理せず単独でうろついているオークを、夕方までの時間を使いながら狩り続けさらに4匹。能力玉は出なかったがレベルは遂に31になった。ゴクリと喉を鳴らしながら能力板スキルボードを確認する。


――――――

アレス クラス:大盗賊 Lv31

体力40 魔力12(40) 外殻30

力16 硬4 速4 魔4

スキル [突く/Lv4][疾風/Lv3]

――――――


やった!力も1上がった!これで能力玉は基礎値を+1するものだと…ん?頭を捻りもう一度考える。力の能力玉は全部で3つ獲得している。基礎値が4になっているなら、4×3+4で16だ。

だが+4でも3つで+12。基礎値が1でレベル分が3で…合計16か…結局同じ、確証は得られなかった。とりあえずどのぐらいレベルを上げたら差が出るのか?次のレベルだと、えーと…


「だめだ。こんなに計算ばっかりしてたら、頭がおかしくなっちゃうよ!」

何度も計算しなおしているち、頭が痛くなってきてストレスが溜まり思わず空に向かって叫ぶ。


でも多分だけど違いが出るタイミングがあるんだと思うんだよ。これはしっかりメモしてまとめなきゃ無理そうだし、今日は宿に戻ってからじっくりと考えてみよう。そう思って魔法の袋から取り出したメモ紙に数字を記載する。


時間も頃合いなので、今日のところはこのまま街まで戻ることにした。


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ラルフ・ウイクエンド

アレスたちの父。元は男爵家の次男だったが、ウイクエンド侯爵家の婿養子した現当主。

嘗ては『聖剣士』として戦場を駆け巡り、剣鬼と恐れられ、『魔剣士』だったカルシュに惚れて押しの一手で侯爵家に婿入りした。今は小太りで剥げかけており見る影もない。侯爵家を何とかしようと義父からのプレッシャーに耐えている。


カルシュ・ウイクエンド

アレスたちの母。戦場の薔薇として『魔剣士』の力を見せつけ、多数の求婚をはねのけラルフと結ばれる。幸せな家庭が築けると思っていたが、思った以上に私生活がポンコツなラルフに愛想をつかし、現在は別館にて領地経営をしている。その為、アレスが追い出されたことを未だ知らない。

一応ラルフの尻を叩くべく、実父には定期的なプレッシャーを依頼。

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