08 力が…漲ってきたー!
連日森に通っている僕は、少し狩場を変え、森ウルフが多く出る場所で戦っていた。
もちろん[突く]は魔力による回数制限があるので単価が高い方が、より稼ぐことができるからだ。出来れば良い剣を手に入れ、[突く]を使わずに狩ることができれば、より早くスキル玉も集まるだろう。
未だに能力値の低い僕は自力では角兎一匹すら狩れないのだから…
そんなある日、僕はいつもの場所でオークと遭遇した。…と言うより森ウルフを狩り終わった後に、背後からオークに殴られ目の前が暗転した。
幸い意識が途切れることは無く、よろよろと起き上がりその攻撃がオークの物だったことを認識したのだ。目の前のオークは良く見ると体のあちこちが傷だらけだったので、もしかしたら他の魔物に追われてきたのかもしれない。
朦朧としながらも[突く]を放つと、狙い通りにオークの胸に叩き込まれたがまだ倒せてはいないようだった。少し距離を取り
魔力は12残っている。残り2回で倒せるだろうか?
僕は短刀を抜き、胸の前で構える。そして[突く]と胸に叩き込まれた短刀は、ガチンと大きな音を立てて刃先が砕け散った。
幸いその攻撃によりなんとか倒すことができ、ドサッという音と共に倒れ込むオーク。安堵して座り込みながら安物ではあったが暫く愛用していた刃が無くなった短刀を見てため息をつく。
まあ今ならもう少し良い短刀も買えるだろう。
頃合いだったのだ。そう思うことにした。
そして目の前に、いつもの半透明なスキル玉…ではなく、透けるような青いシャボン玉が浮いているのに気づき、しばし思考が止まったようにそれを見ていた。
もしかしたらレアなスキル玉?
そう思って緊張しながらもいつもの様につんしてみる。
―――能力値『力』を奪いました。
能力値を奪う?
慌てて
「力が…漲ってきたー!」
思わず右手を天高くつき上げ、大声で叫んでみた。そんな場合ではないな。
僕の元々の基礎値は1だ。Lv27だから、あっ今ので28になっている。
それは良いとして、基礎値×((レベル-1)×0.1))が基礎値に上乗せなので、Lv28から1を引いた27に0.1を掛けるから倍率は2.7だ。基礎値の1に倍率の2.7を掛けるのでそのまま2.7。
それを基礎値の1に上乗せだから3.7で、切り捨てで結果3になる。
それが力を奪ったとなったことで、急に7に上がった。
普通に+4されたのだろうと予想する。
だが仮に基礎値に+1されたということなら、2×2.7で5.4となり、基礎値の2を足して7になる。もしそっちだとしたら…これはとんでもなく凄い事なのでは…
僕はあの青みがかったシャボン玉を『能力玉』と呼ぶことにした。
あまりのことに喜びに震えていたが、良く考えれば今のままではオークに戦うなら危険が伴う。1匹なら良いが2匹だと厳しいだろう。しかも負傷していたみたいだし…だが絶対にあれを、能力玉を集める必要がある。
安全に狩るために装備を整える必要があるだろう。
一撃で心臓まで貫くまともな槍が必要かも…そう閃いてまずは槍を見てみたいな。そう思って先に倒した森ウルフと、オークを解体しようと腰を上げる。そして短刀を失ったんだと再認識。
泣く泣く森ウルフだけをそのまま魔法の袋に詰め込み、冒険者ギルドまで戻った。
「えっ?オークも狩ったの?」
「はい、いつもの場所だったんですけど迷い込んできて、弱ってたみたいなので何とかなりました。でも短刀が壊れちゃいまして…もったいないけど置いてきちゃいました」
「そうだったのね。勿体ないけど、オークを倒したのは凄いよ!でも、あんまり無理はしないでね?」
「はい。心配してくれてありがとうございます」
ローラさんに褒められた後に心配され、気分も上がる。
オーク肉は今の買取価格はキロ銀貨1枚ちょっと。最低5キロはあるだろうから銀貨5枚にはなっただろう。だが解体できなかったのだから仕方がない。そう思って諦めるしかない。
僕は手持ちの素材を合わせ金貨1枚とちょっとを受け取ると、早速武器屋を覗きに行った。
武器屋へと入り目当ての槍がある棚を見る。
『紅蓮の槍』大特価!金貨1998枚!(白金貨含む支払いも可)…と言うのはスルーして、使い捨てのような安い槍を見る。
『鉄槍』金貨1枚。まとめ買いご相談ください。
なるほど。金貨1枚なら大したことないし、買ってみるかな?
「すみませーん」
「ボウズどうした?」
奥から髭ずらのおじさんが登場。
「オークを狩りたいんですけど、この鉄槍ってどうなんですか?」
「オークを?ああ、一撃で心臓ぶち抜きゃ倒せるわな。大体20回程度なら持つだろうな」
「20回?」
「まあ安物だからな。大抵は柄が折れちまうから予備を持たないと危険だぞ」
「なるほど。だからまとめ買いと…」
20回か…確かに20回で壊れるならそれなりに出費を覚悟しなくてはならない。そうは思うが、僕の場合は格上のオークが20匹は狩れるんだ。悪くはないかも…
「他にオークを倒すとしたら何を使ったら良いでしょうか?」
「そうだな、中級者ぐらいだと剣で首を落とすか、足を切って出血多量で死ぬまで待つか…魔法なら頭狙ってドカンだろうな」
首は…僕の身長とスキルでは届かない。足を切ってはいいかも。どうせ魔力の回復に時間を取るから待つのもありだ。
そこまで考えて思いとどまる。
そもそも僕の力で足を切り裂くほどの攻撃はできなかった。[突く]だと足に刺さった後、ねじって切り裂くなどしなくてはならない。…無理だな。
結局僕は当初の予定通り、鉄槍を1本と滑り止めの指の部分が無い皮手袋、金貨1枚で短剣も購入した。鉄槍はできれば予備を購入したかったが、今はこれで10匹ぐらい狩ってから考えることにした。
「また来いよー」
「次は纏め買いするのでー」
そんな感じで宿へ戻ると、少し興奮しつつも眠りについた。
――――――
アレス クラス:大盗賊 Lv28
体力30 魔力30 外殻20
力7 硬3 速3 魔3
スキル [突く/Lv4][疾風/Lv3]
――――――
Up [疾風/Lv3/風のように早く駆ける]
――――――
------------------------------------------------------------
オーク
モレノの森で出会った2m越えの豚のような顔を魔物。巨体から繰り出す拳は骨まで砕く。冒険者から奪った武器や、太い枝を振り回す個体もいるので要注意。
固有スキルは今のところ不明。力が増加する能力玉(アレス命名)を奪える。
素材は肉と2cmぐらいの魔石。肉は時価だがキロ銀貨1枚程度。魔石は銀貨1枚。お肉はやはりこってり系。冒険者ギルドの食堂などでステーキなどに使われている。
能力玉
基礎値を増やしてくれる。現在『力』しか確認できていないが、他にもきっとあるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます