第43話 僕達は地獄へ堕ちろと言われた。

 僕が34歳の夏。朽木エリカは靴のカタログの小さな1カットでデビューしてから約3年、ミュージックビデオ出演で認知度が上がり「ビオール」のCMで全国的な人気モデルになってから約1年、圧倒的な美しさと清楚キャラで世を席巻し、あっという間に死んだ。エリカは世の女性から憧れの女性像として羨望されていたし、男性からも同じく理想の彼女、理想のお嫁さんとして人気だったし、始めから手が届かないと諦めた卑屈な男性からでさえエロ目線のオカズとして大人気だった。そんなエリカの突然の死は衝撃的で、皆が真相を知りたがった。「ウイークリーネルソン」は、エリカの生前からエリカの先輩モデルとの共演NGネタやパパ活等の裏バイトネタで特集を組んで面白おかしく読者の耳目を集めてきたが、エリカの死後もその真相を暴こうとネルソン編集部は動き続けていた。

 ネルソン編集員は、留置所内自殺した有明杏実の警察証言をもとに、朽木エリカが「マミコ」という偽名を使ってパパ活をしていたという仮説を立て、若い男性アルバイトを数人雇って都内にあるいくつかの大手デートクラブにそれぞれ潜入させたようで「ゼタバースクラブ」もその中の一つだった。

 しかし「ゼタバースクラブ」には我々「クレイジータートル」が付いている。信也達も最初は潜入者が潜り込んだ事に全く気が付かなかったが、ある男性会員が入会1ヶ月を過ぎた辺りから女性会員とのマッチングそっちのけで、クラブの交流用ラウンジでやたらと男性会員同士の情報交換に熱を上げ、三ツ星会員と話したがっている事を不審に思い「bug」を使って行動を監視することにした。まず、この男が三ツ星男性会員達とラウンジで話している内容を聞いていると「女性の三ツ星会員にはどんな女がいるのか?」や「モデルや女優と会えるというのは本当か?」と、先輩会員の武勇伝を興味本位で聞くだけではなく、「ニュースで話題になった「マミコ」の話をこのクラブで聞いた事があるか?」や「朽木エリカが「マミコ」の正体という噂をどう思うか?」等と探りを入れている事が分かった。そして、この男性会員が会員データベースにログインして検索した履歴を見ると「マミコ」や「エリカ」、「モデル」や「芸能人」等のキーワードで何度も繰り返し検索をかけている事も判明した。危機感を持った信也達はこの男の住居をつきとめ行動の監視を強化すると、ネルソン編集部に週一ペースで訪れて活動報告をしている潜入者と分かり、すぐさま速水コーディネーターに報告した。


 速水コーディネーターの判断は迅速で、「死人が出ようがケガ人が出ようが手段は選ばない」、「ネルソン編集部に脅しをかけて調査を止めさせて」と「クレイジータートル」へすぐさま依頼があった。「ウイークリーネルソン」に調査されて、あり得ないとは思うが万が一にも真実が記事にならないように早急に叩く必要がある。信也は「急ぎの案件だ」として、この時奈良、大阪、京都にいた僕、青くん、白くん、八田叔父さんを急遽東京へ呼び寄せて対策を講じた。

 手始めは、この潜入者を捕らえてマミコ調査の進捗状況と雇用主であるネルソン編集部の状況を把握する事から始める。潜入者を信也特性テーザーガンを使って拉致監禁して聞き取りをするが、潜入者は所詮アルバイトであり少し脅せばすぐに口を割った。この潜入者の話ではラウンジや他会員からの紹介で既に一人だけ三ツ星男性から話を聞いており、「若手女優とヤった経験がある」、「三ツ星男性会員でも女性会員の全てを把握できているわけではない」、「朽木エリカ=「マミコ」の可能性がある」等の情報を得ており、これら全てをネルソン編集部へ報告済みとのことだ。週一での訪問だけではなく、都度都度レポートをメールで報告しているらしい。

 ネルソン編集部の内部状況は、年配の班長を中心に男女5人のユニットで、日々記事のネタを探している。編集部の連中は、潜入や張り込み調査のような汚れ仕事というか面倒な仕事は外部委託やバイトを雇って処理し、自分達はネットやSNSで情報提供者を探して、そこから取材をして記事にしているらしい。僕達はこの潜入者に二重スパイとなるよう命じて、「bug」を付けて編集部へ報告に行かせて編集員の顔と名前を押さえさせたり、多見子さんが潜入者から編集員への報告メールの添付ファイルにウイルスを仕込み、それを使ってネルソン編集部のシステムに侵入する事にも成功した。これで編集部員全員の氏名や住所、電話番号等を把握し、まずは脅迫の材料として各編集部員が自宅から出勤したり帰ったりしている時の写真や、家族と一緒に買い物に出かけたりしている時の写真等を撮った。


 そして「朽木エリカの調査を止めろ」と直接メッセージを伝えるため、編集部員の中で一番若い積山道代(ツミヤマ ミチヨ)という女性編集部員のマンション宅に忍び込み、帰宅したところを襲った。信也が用意した模造鍵で僕、信也、青くんの3人で部屋に入り、3人とも目出し帽を被って待機した。この女性宅は6畳ワンルームの部屋に一人暮らしで、室内は整理整頓されており、信心深いのだろうか御朱印帳やスピリチュアル系の本や雑誌、仏像のフィギュアが本棚等に飾られているのが目を引く。積山さんが仕事帰り21時頃に帰宅して内側から鍵を閉めた時、背中に信也特製テーザーガンを使って失神させた。手首足首を荷造り紐で縛ってベッドに移し、今回新アイテムの発声抑圧バンド「suppress」を首に巻き付けた。僕は仕組みをよく知らないが、首に巻き付けるだけでその人が発する声の音量を小さくすることができる。首へ強い圧迫は無く、呼吸や血流はほぼ通常通りなので、これを巻くだけで死に至る事は無い。


 女に精神的肉体的ダメージを与える執行官として選ばれたのは僕だ。女の頬を軽く何度も叩き目を覚まさせる。

 「何?誰なの?」自分が縛られている事に気が付きバタバタと暴れる。声を出そうとしても声がかすれて大きな音量が出ない。僕はこの女のお腹辺りに馬乗りになって、青くんは積山さんの頭の方に座って、縛った両手首を自分の方へ引っ張ってくれている。積山さんはバンザイをしている様な格好だ。

 「積山さんに少し聞きたい事があってお邪魔しています。素直に答えてくれたらすぐに帰りますので、ご安心ください。」信也がベッドの傍に立って積山さんに語り掛ける。

 「ネルソン編集部では朽木エリカがデートクラブでパパ活をしていたらしいと調査をしているようですが、間違いないですか?」

 「そんな事あなた達には関係ないでしょ。帰って。」

 「それがこちらも仕事でしてね。関係が大アリなんですよ。」

 「知らないわよ。出て行って。警察を呼ぶわよ。」

 「ああ、ダメだこりゃ。…いいよ、やっちゃって。」信也が僕に向かって積山さんを襲う許可を出してくれた。僕は綿生地のパンツから白にオレンジ色の細縦ストライプ柄のノースリーブを引っ張り出して胸が見えるように捲り上げる。元々カップが浮いていたのか中に着けていたベージュのブラも一緒に捲り上がり、小さ目の胸が露わになった。僕は低反発枕のような硬さがある乳房を揉み感触を楽しむ。夏で夜でも暑いからだろうか、少し汗ばんでしっとりとした肌感だ。

 「何してるの、この人を止めてよ。…ちょっと、触らないで。」もぞもぞ動く積山さんに構わず、僕は乳首を指で摘んだり捩じったりしながら、鎖骨辺りからゆっくり左側の首筋、ソバカスが浮いている頬、産毛が生えている耳まで舌を這わせた。オシャレな丸メガネが邪魔だがもう一度首筋から繰り返すと、積山さんはエラが張った四角い顔を右側へ背け、嫌がっている。

 「本当に止めて。…仏様やご先祖様が見てらっしゃるから、あなた達バチが当たるわよ。」

 「みんな神は自分の味方だと思っている。僕達にも僕達の神様やご先祖様がいるから守ってくれるさ。自分だけが特別だと思うのは危険だよ。」信也が積山さんのつまらない説教に答えている間に僕は、一旦胸まで戻り左右の乳首にねっとり交互に吸い付いた後、薄いグレーのパンツをずり下げ、「YNAQLO」の不愛想なシームレスパンティもずり下げた。

 「あなた達は不邪淫戒を知らないの?欲望のまま淫らな性行為をする事は禁じられているのよ。こんなの獣と同じじゃない。少しでも人の心があるなら今すぐ止めて。私はこんな事したくない。」

 「じゃあ積山さんや生臭坊主共はどうやって生まれてきたの?畑から生えてきたのかな?僕が知っている神様はセックスをして子孫が増えるようにしてくれたよ。」積山さんと信也の論争に無関心な僕は仰向けの積山さんの左太腿を腕に抱きながら足の付け根付近を舐めまわしつつ、自分でズボンとパンツを脱いだ。

 「欲望に負けたらダメ。お願い!思い止まって…。…いや~~~。」

 「性欲は神様がくれた人間の本能だよ。積山さんも恥ずかしがらずに本能のまま欲望を開放するんだ。」

 僕はポロシャツの胸ポケットからコンドームを出して装着し、色気が無いくせにごちゃごちゃ五月蠅い積山さんに無理やり挿入した。「痛い、痛い」とバタバタ動いて抵抗されたのもあるが、何度かアソコに当てがっても中々チンポが入らない。青くんが女の上半身を押さえつけてくれて、やっとねじ込むことができた。

 「鬼畜め地獄へ堕ちろ!」と積山さんが捨て台詞を吐いた後、僕は嘲笑うように狭い穴でピストンしてやった。積山さんは僕が終わるまで痛みを我慢するように顔をしかめ、涙を流しながら「南無阿弥陀仏…、南無阿弥陀仏…」と途切れ途切れに何度も呟いていた。僕は久しぶりの素人とのセックスで気持ち良く射精したが、コンドームを外す時にゴムに血が付いているのに気付いた。

 「処女だったのか?」と聞いても積山さんは何も答えなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る