第36話 僕は一目惚れしてしまった。
僕が33歳になる年の4月。番組改編期、夜にテレビ特番を見ていたらCMになり、そのままボーっと見ていたら途轍もなく可愛い女性が現れた。「惚れるなよぉ~、そこの男子」というキメ台詞ではにかむ顔に僕は心を打ちぬかれた。すぐさまスマホで検索すると「ビオール」というメーカーの洗顔料の新CMで、出演していた女性は朽木エリカという事が分かった。芸能事務所「フレームズ」所属のモデルで21歳。現役女子大生らしい。僕が33歳になる年だから干支一回りくらい年下となる。
「Be all(ビオール)」の公式ホームページを見ると新CM動画が見れたので、通常15秒版から視聴する。エリカちゃんがヘアバンドを付けて、タンクトップにショートパンツ姿で洗面台に立っているところから始まり、鏡の前で洗顔料のポンプを押して泡を手に取って顔全体を洗顔し、最後に水で洗い流す。泡を手に取ってから洗い流すまでの間、別の女性の声で商品説明のナレーションが入っていたが、エリカちゃんが白いタオルで顔を拭いた後、カメラ目線で「惚れるなよぉ、そこの男子」とほほ笑んだ。これがさっきテレビで見たCMだった。
Web限定30秒版では通常版の前後に映像が追加されていた。大学の教室で女友達と椅子に座っておしゃべりしているエリカちゃんを遠くから見ているところから始まり、若い男性の声が「朽木さん、綺麗だ…」とボソッとつぶやくと、エリカちゃんがアップで抜かれて視線をこちらへ向ける。そこで「その綺麗の秘密は…」とナレーションが入り、場面転換して通常版の洗顔シーンに繋がり、洗顔が終わると教室のおしゃべり場面に戻り、エリカちゃんがカメラ目線で微笑みながら「惚れるなよぉ、そこの男子」のキメ台詞を言って終わった。あまりの可愛さに、すぐさまもう一度見直した。
別のサイトでコメントを見ると「この子、前から知ってたよ。泣いてた子でしょ」、「Web版の破壊力がスゴイ」、「あの子は売れるって前から思っていた」、「スッピンでもあの可愛さって反則」等とあった。
他の朽木エリカ出演作品も動画サイトで探してみる。一番有名で人気なのがコメントにもあった「泣いてる子」だ。ロックバンド「Old magazines」の「Reluctant farewell」という曲のミュージックビデオに出ていて、歌詞に合わせてエリカちゃんとデートしているような映像になっていた。この映像の大泣きシーンが話題となって、エリカちゃんの人気に火が着いたらしい。エリカちゃんはこの他にも学習塾「東通塾」のポスター、バス会社「wishes express」のプロモーション動画にも出演していた。
僕は今まで気が付かなったが知る人ぞ知る新人モデルだったようだ。僕は身の回りの女や風俗嬢でも可愛い、綺麗だと思うことはあったが、朽木エリカほど心を奪われた女性はいない。もちろんCMやMV等の作品でしか見たことが無いが、可愛い、清楚、甘い声、若い、たぶん処女という僕の理想の女性像を具現化したような女で、これが僕にとって人生唯一の一目惚れになった。
(イクヤは馬鹿だから気づいていないが、「ナナイロレインボー」イベントの時の美人スタッフこそが実は朽木エリカであり、二人は1度だけ実際に会った事がある。)
朽木エリカの存在をCMで知ったのは僕だけではない。世の男性達も大きく反応した。例えば、オナニーのオカズとなるような妄想や漫画、画像やイラスト等が投稿されている『オカズ大喜利』というサイトでも朽木エリカがネタになった。色々な変態が投稿をして、妄想上でエリカちゃんを嬲っている。僕もオナニーの妄想ストーリーを考える時によく閲覧しているが、様々なストーリーテラーがいて面白い。
「妄想No235:洗顔料のCMは、朽木エリカが「ビオール」の役員に枕営業をしてもらった仕事です。処女だったエリカは怯えながらおじさん役員に身体を許し、痛がっているのに無理やりセックスされただけでなく、おじさん役員の臭い精液を顔に浴びせられました。役員から「ティッシュで拭くんじゃなくて、うちの洗顔料を使え」と命令され、洗顔料で顔を洗うと精子も洗顔料もよく泡立って、エリカの顔が真っ白になりました。」
「妄想No540:CMでエリカが手に取って泡立てている洗顔料の泡の中にはADである僕の精液が入っていました。撮影中エリカは「ネバネバする」と不審に思ったようですが、新人なので遠慮して誰にも言わず、そのまま僕の精液を自分の顔に塗りたくっていました。」
「妄想No1818:CMのキャスト選びの時に、女医立ち会い下エリカを含め3人の候補者を身体検査した。全員全裸にさせ傷跡や吹き出物等の有無を確認した後、女医が指にコンドームを被せて穴に指を入れして具合を確認したが、エリカだけは女医が指入れしようとすると本気で痛がって、「私は本当に処女です」と半泣きで訴えていた。3人の内エリカだけが処女でオナニーすらしていない清純だと分かり、CMのキャストにエリカが選ばれることになった。」
投稿をさらに見ると「ビオール」CM以外でも、妄想の書き込みがあった。
「妄想No081:エリカは「Old magazines」のミュージックビデオの出演を勝ち取るため、自分で予約した高級ホテルのスイートルームにメンバーを招待し、一晩中大人の接待をした。エリカは客室内のベッドやソファー、トイレやシャワーブース等でメンバー一人一人と順番にセックスし、全員に輪姦された。一回りした後、ボーカルとドラムの2人がエリカに3Pを持ちかけると、エリカは喜んで股と口を開いて四つん這いになり2回戦でもメンバーを満足させた。」
「妄想No459:ブレザー姿で学習塾のポスターに出ていたエリカは、撮影現場で知り合った男性モデルからナンパされ、制服コスプレのままエッチをした。休憩時間が終わって撮影場所へ戻って来たエリカは、髪が乱れスカートはシワシワになり、生臭い精子の匂いがプーンとして臭かった。エリカのマネージャーは苦笑いしながらエリカの髪に櫛を通していた。」
「妄想No902:高速バスのプロモーション撮影では当然バス移動して撮るわけだが、エリカはバス最後尾の右奥席に陣取り、出演者やスタッフ、AD、バス会社職員まで希望する男性全てのチンチンを手でスッキリさせてくれた。当然皆が希望してバス中央の通路に行列ができたが、エリカは服の上から胸を触る事を許し、一人一人丁寧に手で抜いてくれて、エリカの席の前ポケットのゴミ袋は使用済みティッシュと消毒用ウエットティッシュで溢れかえり、バス会社の職員がゴミ袋を2回取り換えるほどの量になった。当然、関係者の間でエリカの好感度は爆上がりし、続編が撮影されることになった。」
僕はこれまで“読み専”だったが、周りの盛り上がりに刺激を受け「電池男」の名でアカウントを作り、チャット掲示板に書き込みをしたり、エリカちゃんとの妄想を投稿した。この時は、有名になってからたった1年くらいでエリカちゃんが死んでしまうとは思っていなかった。
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