第17話 僕と僕の周りの変化

 この先の大学在学中に「Gmen1919」や「オーセンティック」等、いくつかの風俗店で遊んだが、やはりオナクラに足を運ぶことが多くなった。このまま僕の風俗体験記ばかりを書き続けても仕方がないが、僕が生身の女で遊んで、いかに感激したかというのだけは共感してほしい。僕はイケメンじゃないし量産型やモブでさえない。さらに最下層の不細工、気持ち悪い男、イジメられっ子なのだ。成人しても女性と恋愛経験が全く無く、それどころか気持ち悪いと避けられていた僕が1、2万円のお金と引き換えに可愛い女の子とお話ししたり、エッチな事ができるからハマったのだ。60分前後の限られた時間ではあるが、その間、女の子達は僕に優しくしてくれて、癒してくれる。

 キャンパスや駅で見かけるカップルを見ると「よくあんなブスと一緒に歩けるな」、「下品なバカ女と電車でじゃれ合うなよ」と思い、Ichikaちゃんのような可愛い女の子との時間を思い出しては優越感に浸る。誰かに「オマエのは時間制限がある疑似恋愛だろ?」と言われても、キャンパスですれ違うカップル達だってそのまま結婚するとは限らない。明日にも喧嘩別れするかもしれないし、60分か数週間かの違いしかないと口答えできる。「でも、オマエのは有料だろう?」とさらに言われても、電車内で隣同士座っているカップル達だって、バカ女に全く似合っていないアクセサリーをプレゼントしたり、パリがどこにあるかも知らないくせにフレンチレストランで食事してムダ金を使っていると言い返せるのだ。

 僕の風俗遊びは、時間は短いかもしれないが綺麗な人や可愛い子との高付加価値な触れ合いであり、違う子とすぐに遊べて回転率も高く効率的だ。ブスやメスゴリラでは味わえない高い満足感を得ている。これは『酸っぱいブドウ』の負け惜しみではない。それに僕だって社会人になったら、そのうち彼女が出来て自然に結婚するはずだ。僕は大学卒業後の進路をまだ決めていないが、いい人と出会うまで何も焦る必要はないと考えていた。それに風俗で遊ぶようになって、お店でもシャワーを浴びるから単純に入浴回数が増えた。今では週5~6日入浴している。


 僕は「信秀書店」のバイトや「figure」を使ってお金を稼ぎ、大学とバイト先と風俗店とを行き来する生活を送っている。「信秀書店」ではオーナーの岩室叔父さんの息子、青龍くん白虎くんにも仲良くしてもらって、名前が長いからと叔父さんが二人を呼ぶように青くん、白くんと呼ぶことを許される等、打ち解けてきた。特に青くんは僕が風俗にハマったのを喜んでくれて、たまに風俗店の情報交換をすることさえある。“やんちゃ”をしてきた怖い人達は「外と内」がはっきりしていて、外敵には尖った対応をするが一旦仲間だと認めてもらえたら優しい人達だ。後々、組織でこの2人の力を借りることになる。


 弟の信也は同士館大学で真面目に学生生活を送っている。信也は本当に勉強が楽しそうだ。授業に出席し、特に専門科目がある日は朝一コマ目でも欠かさず大学に行っているので、当然定期テストの成績も良い。僕のように単位を落とすことは無かった。

 信也の大学生活で変わった事と言えば彼女ができた。油津多見子という大学の同級生で、信也は機械系、多見子さんは情報系と学科は違うが同じ理工学部らしい。しかも多見子さんは僕達と同族、福岡県出身の遠い親戚で、二人の出会いのきっかけは、我が一族に彗星のごとく現れた秀才二人を親同士が引き合わせて、付き合わせたのが始まりだ。多見子さんは背が低く痩せ型、目力があって何となく神秘的な雰囲気があるが、お話し上手で世話焼きの姉御肌だ。同士館大学に現役合格できるくらい頭も良くて信也と話が合うようで、引き合わせた親戚同士の集まりでは「二人とも大学を卒業したら結婚しなさいよ」と冷やかされるくらい仲が良くてお似合いだ。

 多見子さんは京都で一人暮らしながら大学に通い、「よろず屋八田」という興信所?私立探偵?みたいな所でアルバイトとして手伝いをしている。これも「遠くから京都に来て一人暮らしするにはお金が必要だろう」と京都にいる同族の八田叔父さんが多見子さんに手伝わないかと声をかけた経緯がある。僕たち一族は、うちの家族だけじゃなくて各末裔の家族同士が肩を寄せ合い、助け合いながら生き延びて来たようだ。

 「よろず屋八田」では、人探しや身辺調査から財務調査、マーケティングまでするらしいが、依頼がある仕事のほとんどは身辺調査のようだ。「婚約相手の素行調査をしてほしい」、「旦那が浮気している証拠を掴んでほしい」、「行方不明者を探してほしい」等で、探偵と聞くと漫画やアニメのように謎解きをして犯人を見つけるといった華やかな印象があるかもしれないが、実際は聞き込み、張り込み、資料の読み込みと、地味で過酷で時間がかかる仕事である。徐々に大企業の事務職でパソコンが導入され、意識が高い個人や家庭にも大きなデスクトップパソコンが見られるようになってきた世の中で、八田叔父さんは多見子さんの「先見の明」に従い、中小企業や個人事業主の中ではかなり早くパソコンを導入した。多見子さんは大学で学んでいる事を活用するのはもちろん、個人的に色々と試行錯誤しながらパソコンを使いこなし、探偵業務が大幅に効率化、迅速化されて八田叔父さんは大喜びした。もう少し先の話になるが、多見子さんが設計し、僕の「figure」で稼いだ資金で信也が部品を集めたり作ったりして、いくつかのハイスペックアイテムを自作した。その驚異的な能力のおかげで僕たちの組織は業界トップクラスの調査能力を持つことになる。

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