第7話 僕の学校は乱れている。

 サッカー部の連中は県大会が始まり忙しいのだろう。弾地さんはあの怪我以降、足の調子が悪くて試合にフル出場できず、連中は大会で苦戦しているから、僕で遊ぶ時間があるくらいなら練習をするといった感じだ。僕を呼び出す頻度は少なくなったが、それでもバカ達なりにストレスはあるのだろう、僕に見張りをさせたり、“お使い”をさせたりするので、校内の乱れた風紀を垣間見ることができた。


 見張りというのは、保健室やシャワー室に他の人が入って来ないように僕が扉を閉めて、誰か来ても追い返すのだ。ある時苦道さんと汚黒くんに連れられて保健室へ一緒に行き、部屋に入ると「鍵を閉めて、誰か来ても追い返せ」、「こっちを覗くなよ」と命令された。何をするのかと思えば、二人は保健室の簡易ベッドでセックスを始めたのだ。ベッドを仕切るカーテンで隠しているが、服を脱ぐ衣擦れの音、チュバチュバとキスや何かを吸う音、ギシギシとベッドが軋む音などから間違いないだろう。以前保健室でやっている時に誰かが扉をガタガタして入ってこようとしたのが相当ムカついたらしく、僕を追い返し役にしているのだ。僕は扉の前で廊下の方を向いて座り、音を聞きながら待たされるのだ。「早く終わらないかなぁ」と思う一方、「セックス中ってあんまり喋らないんだな」とか、「女の人の喘ぎ声って意外と小さいんだな」とか新しい発見があった。行為が終わった後、二人は自分達で後始末をして、制服を着て、何事も無かったかのようにカーテンを開けて出てくる。そしたら「もういいぞ」と開放してもらえるのだ。

 シャワー室も同じようなもので、部活終わりに部室棟のシャワー室で泡知さんや枯林さん達女子のレギュラーメンバーが男子サッカー部員と“お楽しみ”しているのだ。例えば、泡知さんは1年生の男子部員を男子シャワー室に連れ込み、酷本さんは男子レギュラーと手を繋いでシャワー室に入り、僕はシャワー室の前の廊下で門番をさせられる。中の様子は分からないが「泡知先輩の乳首を吸わせてもらった」、「弾地先輩に初めてフェラをしてもらった」、「枯林さんの手の動かし方がヤバイ」など、終わった後の男子部員同士の自慢話を聞いていると、シャワー室の中で男子が女子レギュラーの自慰を手伝ったり、女子部員が男子部員を気持ち良くしてあげて飼い慣らすというか、手懐けているようだ。ただ、その時々で女子レギュラーが選ぶ相手が変わっているので、苦道さんと汚黒くんのように付き合っているのではないようだ。だからなのかシャワー室で最後まではやっていないらしい。

 あと、僕は直に見ていないが墓野くんの武勇伝によると、2年生のテニス部女子から放課後の教室で告白をされたことがあったらしい。墓野くんが「体の相性を確かめてから付き合うか決める」と言うと、「ゴムをつけてくれるなら良いですよ」と女子は簡単に同意し、そのままその場でしたらしい。ついさっきまで名前も知らなかった女子に机に手をつかせ、スカートをまくり上げパンティを下げてバックでやったが、墓野くんはヤルだけやって振ったようだ。しかしヤリ捨てられたこの女子は、怒るどころか「県大会頑張ってください」と応援の言葉を残して去って行ったと墓野くんは自慢げに話していた。


 これらは何もサッカー部に限ったことではなく、男子野球部員と女子陸上部員や、男子バトミントン部員と吹奏楽部の女子とだって保健室やシャワー室、部室内や教室内で色々やっているらしい。うちの学校の生徒は頭が悪いからなのか、運動ばかりして陽気だからか、性へのハードルが低く、貞操観念が無いに等しい。巨乳で有名なソフトボール部員は割と簡単に男子に胸を触らせ、早漏と噂の卓球部員は羨ましい事に女子に何度も玩具にされているらしい。手当たり次第という訳ではないが、付き合っている彼氏彼女以外でも興味関心がある事や未体験の事を色々とお互いに試し合っている。

 ただしこれは部活のレギュラーであるとかの実力がある選手や、イケメン・美人等の容姿に恵まれた生徒同士の話だ。僕の様な運動もできない影が薄い不細工はこの輪に入ることはできない。だから僕には「らしい」としか言えないのだ。泡知さんがこの前僕のチンチンを抜いてくれたのは、普段から男子のチンチンをいじって遊んでいた延長で、ほんの気まぐれだったのだ。

 

 お使いは「倉庫の鍵を借りてこい」とか、「シャワー室の鍵を返してこい」とかの単純作業だ。なぜわざわざ書いたかというと、変なものを見てしまったからだ。ある日、枯林さんから「倉庫の鍵を教員室に返してこい」と言われ教員室に行った。鍵がかかっていなかったので扉を開けて中に入ると、事務机の椅子に座っている菅野先生の後ろ姿が見えた。先生に近づき声をかけようとすると、先生の股間に顔を埋めている女子がさらにいることが分かった。この女子は制服のスカートは履いているが、上半身はブラジャーのみで、ブラウスは机の上に丸めて置いてあった。女子が僕に気が付いて顔を上げると、それが弾地さんだとわかった。弾地さんは床に座ったまま先生の太腿をタップし、先生も僕に気が付く。

 「おい有尾。教員室に入る時は「失礼します」とか声をかけろよ。」先生は椅子に座ったまま下半身をモソモソしながら、首だけ僕の方を振り返り説教を始めた。

 「すいません。鍵が開いてたから…。」

 「要件は何だ?」不機嫌な声で聞かれる。

 「運動用具倉庫の鍵を返しに来ました。」

 「つまんねぇ用事で邪魔すんなよ。そこに置いとけ。」と言いながら立ち上がり僕に近づいて来た。弾地さんもブラウスを着て立ち上がる。

 「おまえ、今見た事を誰にも言うなよ。」と菅野先生が僕の肩に腕を回した時、弾地さんが僕の横を通り過ぎ教員室から出て行った。

 「はい。」

 「本当に分かってるのか?また今度“外バレ”させようとしたら裸でグラウンド放置くらいでは済まないぞ。」

 「何で先生が知っているんですか?」

 「どうでもいいだろうがそんな事。それよりおまえ部室の前でギャアギャア泣いたらしいな。もっと恥ずかしい目に合わないように変な事を考えるなよ。」

 「分かりました。」先生から逆らえないプレッシャーを感じる。

 「よし。」と言って先生は肩を放してくれた。

 「そういえば有尾。苦道達との“お遊び”で痛い思いする事が減っただろう?」

 「はい。」

 「俺から部員にちゃんと「バレないようにやれ」って言っておいたから。その方がサッカー部にとっても、お前にとっても良いだろ。」ポンポンと先生に肩を軽く叩かれた。「有尾も俺が言っている意味が分かっているよな?」と言いたげだ。


 先生達はこのような学校の乱れた風紀をどのように考えているのかと思っていたら、菅野先生は弾地さんにフェラをさせていた。先生は自分の生徒とあんな事をして、乱れた側にいたのだ。さらに、菅野先生はサッカー部のバカ達とグルだった。サッカー部顧問なのだから自分の部員を守りたいのは分かるが、僕へのイジメを黙認し、バレないようにと助言していたようだ。先生も生徒も誰も信用できない。

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