第2話 僕はあだ名をつけられた。
苦道さん達によるイジメは続く。2日後も部活終わりと思われる時間に苦道さんから呼び出された。教室には枯林さんなど前と同じメンバーが集まっていた。女子サッカー部キャプテンの苦道さん、エースナンバー10を背負う泡知さん、背は低いが走るのが速いウイングの弾地さん、他の枯林さん、酷本さんもレギュラーメンバーだ。汚黒くんと墓野くんは男子サッカー部で、女子は全国レベルで強豪だが、男子も県レベルでは強いと有名である。サッカー部同士で男女の仲が良く、苦道さんと汚黒くんは付き合っているし、泡知さんや枯林さん達も男子サッカー部員と仲が良い。うちの高校のサッカー部が強くなったのは、サッカーフィールドが1面しか取れないグランドで男女が一緒に混合チームで試合形式の練習をしたり、同じ練習メニューでトレーニングをしたりしてきたからだ。男にも当たり負けしないし、走り負けないスタミナもあり、女子サッカー部は全国大会常連校の1つで全国優勝も1度や2度ではない。学校側としても、頭は悪いが部活が強い事をウリにして入学生徒を集めているので、サッカー部をはじめとする運動部を応援と言うか贔屓に扱っている。全国大会で結果を残してくれる部や部員ならなおさらだ。僕のように普通科で運動もできないただの陰キャは、生徒同士でも教師達からもどうでも良い存在であり、イジメられるまではみんな僕に無関心だった。
吹奏楽部が練習している楽器の音が聞こえる。鶴見さんや只鳥さん達もまだ練習しているのかな?と思いながら僕が教室に入ると「今日も有尾のソロプレイが始まるよ~」と苦道さんの陽気な声に、泡知さん達が「イエーイ」と応じている。1組とは違ってバカばかりだ。
「じゃあ有尾、始めていいよ。」と苦道さん。
「何をですか?」
「オナニーに決まってるだろ。」
「嫌です。この前命令を聞いたんだから、もういいでしょ。」言いなりになり続ければ先々どんな酷い命令をされるか分からない。
「オマエな~、この前も言ったけど1回遊んだくらいで終わるわけがないだろ。さっさとやれ。」正面から苦道さんの前蹴りが僕のお腹に入る。抵抗しようにも腕力脚力ではかなわないし、数もあちらの方が多い。
「……」痛みで床にうずくまり、嘘泣きで同情してもらえるか試してみたが無駄だった。
「泣いてやがる。バカじゃないの。」と余計に面白がられ、足で蹴押されただけだった。汚黒くんと墓野くんに両脇を持ち上げられ無理やり立たされた。
「前から思っててんけど、コイツって何か臭いよな。」と持ち上げながら墓野くん
「分かるー。有尾って変な匂いすんねん。」と泡知さん
「じゃあ、全部脱がせて調べてみたら?」苦道さんが笑いながら言うと「それいいやん」とバカ達が賛同する。僕は週に2~3日しかお風呂に入らず、今日はたまたま2日目だったような気がする。単に自分が入浴するのが面倒なのと、同居している親も誰もうるさく言わないからだ。当然、下着も制服も着替えていない。
ささやかな抵抗も虚しく僕は苦道さん達の命令に従う。ブレザーとシャツを自分で脱ぎ上半身はTシャツに、ズボンを脱いでブリーフ姿になった。「チビのくせに猫背」、「脛や腕が長くてバランスが変」、「手の甲や指まで毛深くて気持ち悪い」、「白ブリーフとかダサくない?」と侮蔑の言葉を受けて脱ぐ手が止まるが、「さっさと脱げ」と怒られTシャツとパンツも脱ぎ全裸になる。
「うわー、ショぼ」、「やっぱり小さいやん」、「って言うか皮被ってる」等と僕の半ダチのチンチンをバカにしている。中でも泡知さんが「コレって単三電池の大きさくらいしかないんちゃう?」というと、苦道さんがわざわざ教室の壁かけ時計を外して実際に単三電池を取り出し、僕のチンチンと並べて大きさを比べられた。
「ほんまや、ほとんど大きさ一緒やん。」
「有尾、おまえこれから『単三』って呼ぶから、ちゃんと返事しろよ。」と苦道さんにつまらないあだ名をつけられた。
「それめっちゃおもろい。」
「でもフニャチンやろ、電池みたいに硬くないって。」
「たしかに。ははははは。」
「なあ、皮剥いて見せてみろよ。この前、小さい亀さん出しながら手を動かしてたやん。」泡知さんが言うので、言われたとおり自分で皮を剥く。カリ首の所々に白い薄い膜が付いていた。
「ちょっと待てオマエ。…汚ねぇ、チンカスや。」
「え、チンカスって何?私見たこと無い。」
「見せて見せて。」と弾地さんと酷本さんが興味津々に覗き込んできた。
「この白いのがチンカス。まあチンチンのフケとか鼻クソみたいなもんよ。」と泡知さんが説明している傍ら
「ちゃんと洗ってんのかよ単三?」と汚黒くん
「皮被ってて洗いにくいんじゃない?」とバカ達に大笑いされた。
「ほら単三、シコって大きくしてみろよ」と泡知さんが言うと、「やれ」と苦道さんから短く命令された。半円状にバカ達に囲まれた目の前で、全裸のまま前回と同じように枯林さんの制服の下の裸を想像しながら右手を動かす。「このヒョロガリ、もう我慢汁が垂れてるよ」、「前屈みで必死に手を動かしてキモい」、「手に隠れてチンチンがよく見えないんですけど~」と笑われ集中力が削がれる。泡知さんに途中で右腕を掴まれて「見せてみろ」と止められた。
「ふ~ん、やっぱりこいつのは勃起してもこの程度なんだ。」
「マジでこれが限界なん?もうちょっと大きくなるんちゃう?。」
「元が小さいと起っても大きさが知れてるね。10cmもないやん。」
「じゃあ泡知さんに問題です。今度は何サイズでしょう?」と墓野くんがクイズ番組の司会者のように泡知さんに話を振る。
「え~、7~8cmくらいで何か思いつくんある?」と泡知さんが考えている間に
「竹輪は?今日お昼に食べたのり弁に入ってた竹輪がこんくらいやったで。」と弾地さんが答えた。
「ちょっと止めてよ。竹輪食えなくなるやん。」バカ達が全裸で立っている僕をしばらく放置したまま大ウケしている。親に温泉やスーパー銭湯に連れて行ってもらった時、自分のチンチンが他の大多数の男よりも小さい事は薄々気づいてはいたが、同年代の男女に凝視されて、小さいとハッキリと言われた事で改めて恥ずかしくなった。男の誇りもプライドもあったものではない。
「よし。放課後の自由研究って言うか、身体検査はこのくらいにして、単三もう出していいぞ。」苦道さんが命令してくる。バカ達の竹輪話の間に少し萎えたチンチンを枯林さんで想像しながら再度シコって硬くし、バカ達に見られながら射精まで頑張った。自分の裸を見られるだけでも恥ずかしい上、自慰行為を不本意にやらされているのだ。屈辱以外の何物でもない。
「ははははは。コイツ全裸で立ったままホンマに出しやがった。ウケる。」苦道さんが満足気に笑っている。
「ほんまにキモいし、床に飛び散って汚いんだけど。」
「コイツが臭いのって、我慢汁や精子で制服やパンツが汚れてるからちゃうか?」
「マジでそうかも。」
「えー、じゃあ教室も臭くなるやん。いやや~。」
バカ達が笑っているのを横目に制服のポケットに準備しておいたポケットティッシュを取り出し、まず手や足についた自分の液体を拭き取り、急いで下着を履く。確かに僕はティッシュで拭き取るだけで、シャワーで洗い流すのはお風呂に入った時だけだ。また携帯で写真を撮られないように警戒したが、苦道さん達は話に夢中で今回は僕の恥ずかしい写真を撮りそうな気配はない。
「床のもちゃんと拭いとけよ。授業中にイカ臭いとかありえないし。」
「単三のってイカ臭いって言うより、生臭くない?」
「乾燥したらイカ臭くなんねん。」
「そうなん。私コンドームの中の精子しか知らんから、匂いとか分からへんわ。」
「服とかシーツとかについたままだと、そのうち黄ばんできて、マジで不快な匂いになるで。」
「うわ、きっつー。」
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