タワラ村⑥ 決着
ニファに一撃を放った俺は、穴ボコになった戦場を見ながら勝利の余韻に浸っていた。
「ふぅ〜強かったァァ…」
……ってそうじゃねぇ!!つい戦い楽しんじゃってやりすぎたぁァァ!!!え!?生きてるよね!!?流石に生きてるよねぇ!!?
ニファが沈んでいった大きなクレーターを覗きながらそう思った…その時だった…!!
グラッグラッ…!!
突然大地が揺れ始め、クレーターの中からその人影は現れた。
「良かったぁ…生きてたのか慈愛の勇者ニファ。死んじまったらどうしようかと思ったぜ」
「チィ‥…そんな剣でもないもので私と互角以上なんて……貴方一体何者?」
勇者ニファは驚きのあまり、俺に尋ねてきた。
「俺はリペルソルジャー、ただの戦士さ……」
そう…今はただの戦士。
「ふ〜ん…まぁいいわ。けどね、私は慈愛の勇者ニファ…私の実力はこんなもんじゃないわ!!」
ニファが手を前に出し、地面が更にぐらっと揺れたかと思うと、
地面から伸びてきたツタのようなものが、俺の体を貫こうとしてきた。
うぉっと!
俺はそれを当然のように回避する。
ニファの周りには、ついさっきまで見覚えのある生物がニョキニョキと生えてきていた。
「
俺は率直な疑問をニファに問いかける。
「そのとーり!花の死骸から種子を取ったのよ。
それを植土魔法で成長させ、慈愛の加護で操る。何て素敵なアイデアなのかしら」
「慈愛の加護…!?」
「あら?言ってなかったかしら。
我が力は愛の力
大地を愛し
人を愛し
世界を愛す。
その愛は力となり、自らを導く礎となるだろう
私は自分が愛したものを自由に操作することができるのよ!!
さすがに人を操るとまでは行かないけど、自我が薄い植物ならほぉらこの通り!!」
ニファは植物のツタを俺に対して伸ばしてくる。
俺はそれをスコップで払いながらこう呟いた。
「なるほど…植物を愛し、植物を操る勇者様ってわけか」
俺はそのことを聞くと、不意に、この状況を一気に打開できるいい作戦を思いついたのだった。
***
彼はニヤニヤしながら気味悪くこっちを見ている。
「どうしたの?そんなにニヤニヤして」
「お前に勝てるってことがわかったからさ」
彼は気持ち悪くニヤつきながらそうかえす。
「威勢があるのは良いことだけど、それじゃあ死に急ぐわよ」
私は自身の操る植物で、彼を攻撃する。
が…当然彼のスコップで受け流され、彼はその隙に森の方へと逃げていく。おそらく、体制を立て直すためだろう…
「根よ、行って!!…」
そう私が
————————
しばらく時間が経つが、植物達は戻ってきていない。
「一体どこまで逃げたのかしら!?」
植物達には、彼は殺さずに捕獲して来いって命令したつもりだけど…
それにしても、あんなに巨大な生物に寄生する
私はシーと言う少年に貰ったポーションの残りを使い、傷を回復した。
これも七魔王が活発になってきている影響かしらね
でも…だからこそ、この村を守るためにも、王都に何としてもこの村を受け渡さなければならない!
だけれども……彼の気持ちも、本当によく分かる
————————
「命令だ…お前一人でタワラ村へ出向き、
リペルソルジャーを殺せ。村を手に入れるためだ」
ギデサルム国王は王座へと立ち、膝をついている私にこう言った。
「へ…?でっ、ですが、彼はタワラ村を侵略していた七魔王アスモデウス直属の部下である
私はあの村の事を、ギデサルムの歴史を揺るがした大虐殺のすべて知っていた。だからこそ、この事だけは絶対に引けなかったのだろう。
「だからなんだ!!王国の土地は全て我が物だ!!それを奴らは汚しているのだぞ!それでも殺したくないのなら奴を殺さずに村を手に入れでもしてみろ!!
どちらもできないなら…分かってるな……慈愛の勇者ニファよ」
王は、お前などいくらでも変わりはいると言わんばかりに、私に強烈な圧をかけた。
「こ、これは大変失礼しました…我が王よ」
————————
「ごめんなさいタワラ村の人たち…恨むなら私の身をを恨んで」
……いっけない…変なこと考えちゃってた。今は彼を捕まえるのに尽力しないと…
と、その時だった…
「よぉ、随分と浮かない顔して…完全に上の空だったじゃねぇか」
聞き覚えのある声の方を見ると、彼がいた。
「嘘…あの数の
私は、彼が手に持っている植物の死骸を見ながら驚きの声をあげた。
「お前、まさか知らねーのか?コイツが動物に寄生する理由」
「は?何を言って…」
彼が私の言葉を遮るように続ける。
「この植物は風に弱いんだよ。だから嵐なんかが来るとすぐに根っこの方からちぎれる。
そこで、動物の死骸に寄生することで動物の皮が暴風壁になってくれているってわけだ。どうやらこの地帯は風があんまり吹かんかったから繁殖したようだなぁ。旅人が落とした種なんかが土に帰り、成長して動物の死骸にくっついた。これが事の顛末ってわけだ。七魔王がドーノコウノとかつまらん憶測立ててんじゃねぇぞ!!」
「……それで、今戦ってんのは私で、それが何の関係があるの…??」
心を見透かされたようなことを言われてムカついたのか、強い口調で彼に問う。
「俺の技、パウンドは風を起こすことができる。つまり生身のこいつらにとっては天敵ってわけで全部俺が始末した。
ほれ、解説終わり。後は感想どーぞ」
プツン
「…ッコロしてやる」
「え?」
「…ッコロしてやる」
「声がちっさくて聞こえなーーい。アリンコデシベル聞こえなーーい!!」
「ぶっ殺してやるぞ!!こんのクソガキがァァァァーー!!!」
私は何も考えなしに植物を操り、彼に襲い掛からせる。
「まさに読み通り…だな」
彼は植物のツタをアクロバティックに掻い潜り、私に徐々に距離を詰めてくる。
「舐めるなよ!!」
私は植物のツタを自分でもよく分からないほどに伸ばし続ける。
しかし…
「
一瞬にしてツタを吹き飛ばされた。
「どうした?お手元が随分とお留守じゃないか」
彼が私の目の前で挑発しながら言う。
「ホ、
私は剣に自身の魔法を錬成させて彼に振り下ろした。
「締めは
彼はそう言い、スコップを私の剣にぶち当てる。
「
私の剣は彼の攻撃により、私の腕から離れ、遥か遠方に飛んでいってしまった。
やばい…!やられる…!!頭上に迫ったスコップを見て、私はそう思い咄嗟に目を瞑ると……
……彼はスコップを直前で止めていた。
「俺が本気で殺しをすると思ったか。
私はこの時、さっきまで正気を失っていた恥ずかしさと、彼の思惑にまんまとはまった悔しさと、本気で殺されると思った自分への不甲斐なさでとてつもなく恥ずかしくなっていた。
「ゆ、ゆ、ゆ許さんんんーー!!!」
私はその時子供のように暴れた
「ちょ、おい!暴れるなって…」
彼は私を制止しようと必死に止めにかかる。
「触んな変態!えっちぃい!!」
「ちょ、そ、そんなに暴れたら。あぁ…」
「あ…」
私達は足場を踏み外し、思いっきりずっこけた。
ーーーーーー
いったぁい…もう!今日はどんだけついてないのよ!!
ん?なんだかくちびるの辺りがほのかに温かい。
くちびる?
私が目を開けると…
彼は私の唇にキスをしていた。
キキキキキ キシュ?
キシュ へぇあ!!!??
生まれて一度も彼氏もできず、キスなんてもっての外だった私が
キキキキキ キシュ!!?
へへへヒャ!?
暇さえあれば剣か魔法の練習をしていた私がキシュ!?
アバババババババ……ブクブクブク (泡を吐く音)
ドウユウ……コト……?
私の記憶はここで止まった
***
俺は勢い余って、ニファに覆い被さるように転げ落ちてしまったようだ。唇の辺りが触れた感触があるが、今はそんなことどうでもいい……
「おい!大丈夫か?!」
俺は奴を心配して声をかける。多分俺が長い時間キスをしすぎたせいで酸欠になったんだろう(違います)彼女は泡を吹いて気絶していた。
「急いで村のみんなに助け求めてくるからな!待ってろよ」
と言い、もうスピードで助けを呼びに行った。
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