タワラ村②(下) パラサイトヴァイン
こうして始まった
シーフースーだけなら良かったものの、誰かもわからない剣士と一緒に討伐に行くんだから空気は最悪だ。
俺達は金ピカと一緒に歩きながらも、雑談をして必死に空気を作っていた。
「可愛すぎるだろ、うちの弟と妹(迫真)」
歌を歌いながら、俺たちの前を元気に歩くフースーを見ながらシーは言った。目口鼻からは血が溢れ出ている。
「確か、今年でどっちも7歳だっけ?兄弟仲良くしろよ…」
血が出ているのに突っ込まなくていいのかとよく聞かれるが、別段…この現象は俺にとっては特別珍しいわけじゃない。
例えばソロン。アイツは可愛い女の子を見つけてはナンパを繰り返す変態で、ソイツは大抵興奮して鼻血を出すか、ブチギレた女どもの彼氏にボッコボコにされるかして…帰ってくる頃には全身血まみれだからだ。
可愛い女の子が兄弟に置き換わっただけで、どちらも変わりはない、変態なのだろう。それにしても、コイツらは仲いいからな…ずっと仲良く一緒にいて欲しいものだ。
「もちろん…これからも仲良くするさ…だから、お前も親しい奴を大事にしろよ〜例に漏れずお前のお友達の魔術師とかな…あんまし困らせることすんなよ〜」
シーは今だに血を吹き出しながら、ニヤニヤし皮肉のように俺に言う。
「うっせぇ…分かってるよ」
やはり、コイツの方が年上だからか知らないが、俺にとって妙に痛いところをついてくる。
ソロンは、変な奴だが決して悪い奴じゃない。それに俺はアイツに色々とお世話になっている。イヤイヤしながらも、俺がアイツの言うことを聞くのはそのためだ。
…と、それはさておき
《金ピカ剣士》「………」
コイツ…しゃべらねーなー!!オイ!!!
いや、期待してないよ!してないけども…なんかね、ねぇ!(息を吸い込む)
ずっと俺が声かけても無視するんだもん。コイツ!村を出発してからざっと1時間!ずっと!!逆に尊敬するよ。どうやったらこの地獄の雰囲気を耐えられるの?黙って耐えられるの??もしかして、知らない人と居ても我を貫けるってタイプの人??
…凄いよ。本当に……引くわー。
「………」
「なぁ…」
俺がたまらず、金ピカに声をかけようとしたその時だった。
「おい…どうやら来たようだぞ!!」
俺が声をかけるのを遮るようにシーが言った。
俺たちの目の前に現れたのは大人の下半身くらいの大きさがあるイノシシ。
だが、目が曇ったかのように虚だ。間違いない… コイツはイノシシに寄生した
コイツらはツタ状の植物で、名前の通り、動物の死骸に種子を植え付け、成長したら神経を操って寄生したその体で他の動物を捕食し、養分を蓄えた後、花を咲かせるというおっかない生き物だ。
「ああ…それに、どうやら敵は1体じゃないようだぜ」
俺はそうシーに忠告する。
姿は見えないが、明らかに一体とは思えない数の鳴き声が、辺り一面からする。
「鳴き声の数的にざっと4匹はいるな。行けるかシーフード兄弟?」
俺はシーフースーと一緒に、前方にいる敵に立ち向かう。
「シーフースーだ!きちぃけど…やってやらぁ!!
フーとスーお前らは援護を頼む!」
そう言うとフーは弓を構え、スーは魔法を唱える準備をする。
討伐には幾つかのルールがある。前衛は二人、後衛は二人だ。前衛は討伐対象と接近戦を行う。後衛は前衛のサポート、回復を行う。
後衛には魔術師、農民、子供などの主に戦い慣れてない連中やサポーターを置き、前衛に剣士などの戦い慣れている奴を置くのが主流だ。
今回の場合だったら後衛に弓や防御系魔法を使えるフースーを置き、シーと俺と金ピカで前衛をするってことになる。
まぁ…金ピカはどう動くのかわからんけどな。
詳細はソロンが持ってる『ギデサルム令法書 最新版』を見ることだな。
とにかく俺も、久しぶりの大物で腕が鳴っていたんだ。
金ピカが動くまでは…
「
という声が聞こえ、奴が一瞬のうちに抜剣したかと思うと、あっという間に魔物たちが細切れのサイコロステーキになってしまった。
…これには流石の俺も度肝を抜かれた。
「へっ、あっ…へっ?」
「うそぉ〜!何がどうなってるの?」
「一瞬でバラバラだ…」
シーフースーは今起こった事を理解できてないらしい。
ってか…あいつ、今の今までなんにもしてなかったのに。いいところだけ持っていったぞ!!ふざけんな!!!
俺達が驚いているのを尻目に、奴はもう次の
「1、2、3……残り4匹だな。任務を遂行する」
「おい…待てよ!!」
俺が止める間もなく、そいつはすでにスタートを切っていた。
「追うぞ…シーフースー!!!」
俺は3兄弟について来いと言わんばかりに奴を追いかた。
「えっ?あっ、ああ」
「追いかけっこ!追いかけっこ!!」
この時俺らは知らなかった。ここからが奴の罠だということに…
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