ポットク鉱山⑦ リペルソルジャーの秘密と新兵器

 話は岩蜘蛛(脱皮形態)と戦っている俺とニファに戻る…


 俺は死角を攻めるように上にジャンプし、勢いをつけてツルハシを振り下ろす。しかし、、表面に当たるか当たらないかのうちに、岩蜘蛛は地面を高速で潜っていってしまう。

 まるで小さい頃にやったモグラ叩きゲームを思い出すかのようだ。


 するとニファが俺に話しかける。

「知ってる〜?植土魔法は、扱いが難しいから王都ではって言われてんのよ。普通に強いと思うのにね…」


「で、それが何だって…!?」

 岩蜘蛛とのモグラ叩きゲームを繰り返していた俺は、かろうじてニファの言葉に返事をする。


「じゃあ…植物とコンビネーション抜群の私が、この種から植物を急成長させるとどうなるのか……見せてあげるわ!!」

 そう言ってニファは手に取り出した種を上に投げる。


「|巨花の蔦の成長グローアップ・ジャイアントヴァイン!!」

 ニファがそう言うと、種からは芽が出て、そこからツルがニョキニョキと伸びていき、そしてそのツルは大地を段々と飲み込んでゆく。

 すると、追い詰められた岩蜘蛛が、地面の中から、ポンと出て来たのだ!ニファはそれを逃さない。


「根よ…」

 ニファがそう言うと地面の中を潜っていたツルが蜘蛛の手足を拘束し、宙吊りの状態にしたのだった。


「よっしゃ。後は俺に任せろ!!」

 そう言うと俺は、自身の筋肉が根を上げるまで踏み込み

 溜めた力を瞬時に解放し、蜘蛛に向かってブーストする。

 そしてそのまま蜘蛛の気持ち悪い顔面に向かってピッケルを叩き込む。


衝撃の報復インパクト!!」

 顔面が醜く潰れた蜘蛛はそのまま壁までぶっ飛んでいった。


「私たちのー」


「勝ちだァ!!」

 おれはニファと抱き合い、踊り合い喜んだ。


「いやー勇者様も随分とノリが良いっすね」

 俺のその言葉にニファはハッとした様に言った。


「べべべ、別に嬉しいとか、頑張ったねとかぁ…そんなんじゃなく、これは王都の伝統儀式みたいなもんで……」


「はいはい、にいた時にそんな儀式はなかった…あ…」


「今、何て…言った…!?」

 ニファが何かを察した様に言い返す。


 と、その時だった。

「な、何!?」

 ニファが後ろに引き寄せられる様に飛んでいってしまった。

 後ろにいたのは何と、もはや蜘蛛の姿を保っていない、と思わしきナニカだった。

 ニファはソイツの巣にグルグル巻きにされ、巣に貼り付けられる。


「他、助け…モゴッ…」

 口を縛られ、ニファは叫ぶ事も、言葉を発する事もできなくなった。


「ニファ!!」

 畜生…やるしかねぇ…


 俺はピッケルを思いっきり振りかぶり、全てを吹き飛ばすを放つ。


空気堀の衝撃砲ピッケルモード・パウンド!!」

 しかし、空気砲は奴の蜘蛛糸により、いとも簡単に止められてしまう。


 ピッケルじゃ威力足りねぇ…どうする。畜生…!!


 すると上からが降って来る。試しに俺がそれを拾ってみると、


「おーい!!レントぉーー!!」

 上から聞き覚えのある声がする。


「おーーい、!!これが俺の新しい相棒かぁーー??随分と様変わりした様だがなぁーー!!」

 俺が拾ったそれは、何やら色々なモーターや装置やらがつけてあるが、紛れもなくだった。


「スコップのぉーー持ち手をーー1回引っ張ってみろってソロンさんが言ってたぁーー!!」

 アイツ、俺の相棒に新兵器でも詰め込みやがったのか??余計なことしやがる。


 俺は試しに一度スコップの持ち手を引っ張ってみる。

 と、次の瞬間、中の装置が回転し俺の体にのようなものがほとばしった。


「ぐぎゃぁぁぁあーーーーーーーー!!!!!」

 俺はあまりのにその場から動けない。


 そのまま俺は、抵抗する間も無く、蜘蛛の糸に捉えられてしまったのだった。


 


********


「……」  


「あのぉ…」


「ん?どうしました…?」


「良いですのかな…?あんなをレントくんに渡してしまって……」

 ケルトンがここに来てから珍しく、俺に対して口を開いた。

 俺達は今、ノーサの帰りを待つべく、三人で向かい合って座っている。


「良いんすよ…アイツがそんなので死ぬわけないですし……」

 俺はケルトンの問いに対して一蹴するように言った。


「私はそうは思わないけどね…」

 そう言って来たのはノーサの師匠だ。


「あの装置は発動させると人体が耐えられないほど強い電流を流す。普通の人間が使うと死のリスクがある程、なものだ。…そんな物を危ない時に渡すなんて、アンタ本当にだね。一緒に旅をして来た仲間じゃないのかい!?」


「お、落ち着いてください…」

 ケルトンが興奮する師匠をなだめるように言う。


「黙ってろ。やっぱりなんかおかしいと思ってたんだよ。急に工房に入りたいと言い出すと思ったら、急にあの装置を取り付け始めて。何が一級魔術師だ…何が魔道具師だ。何が、仲間だ!!!!


「お前らにアイツの何がわかる!!!!!」

 俺の怒声でケルトンと師匠がピクッと止まる。


「お前らは何にも分かってない。奴は子供だ。14歳、14歳だぞ!?俺よりも年下で、あんなに優しくて、強い奴はいないよ、どこにも…」

 俺は震えた声を振り絞りながら、続ける。


「それでも、アイツにだってとこはある。明確に弱点と呼べる部分が……それは、アイツは強い信念を持たないって事だ。ノーサもそれをアイツ自身から聞いているはず。装置を渡しに行ったんだ」


 シーのように兄弟守るためのや次は勝つと言うもない。

 ニファのように勇者としての使もない。

 ノーサのようにポットク鉱山で鍛治師をやりたいというもない。

 結局、奴にあるのは強さに溺れた奴が持つ、だけだ。


 奴自身もその事に気づいている…

 なぜなら、昔には奴も持っていたからだ。それらに負けないほどの強い志、夢、誇り、王都に奴がいた時。いや…を持ち、戦っていた時に、どれも持っていた物だからだ。


「思い出せ、そして、それを乗り越えたお前は誰よりも強く、優しい、戦士になる…!!」


 まぁ…俺のはそれだけじゃ無いんだけどね。

 内心ほくそ笑みながら俺は、密かにそう思うのだった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る