ポットク鉱山⑤ 岩蜘蛛
一方その頃…私とソロンはポットク鉱山の地理に詳しいケルトンを連れ、この騒動の元凶を封じるべく、最下層へと続く階段がある大橋へと足を運んでいた。
「ん?…あれは…ノーサ。無事だったのか!!!」
ケルトンさんは無事なノーサさんの姿を見ると涙を流した。
…そりゃあそうだよね。彼が内心、彼女の事をどれだけ心配していたか。
すると、相手もこちらに気付いたのか、こちらに駆け寄ってくる。
「あなた達、レントなら先に下に降りて行ったよ!!」彼女はケルトンさんを一瞬見た後、私たちの方を向き直り、そう答えた。
彼女は大橋の横についている螺旋階段の前に立つ。
「ここから下の鉱山に向かった。案内するよ!!」
彼女はそう言い、私たちの前に立った。
********
岩蜘蛛は俺の方に向かって大量の岩を投げつけてくる。
俺の横や正面から降ってくる岩を、スコップで受け流しながら奴へとゆっくり近づいていく。と、急にスコップに重みを感じるようになった。
どうやら岩蜘蛛が相棒に糸を巻きつけてきたらしい。
それで身動きを封じられれば良かったんだがな、俺は哀れみの顔でソイツに眼差しを向ける。
「俺が伊達に戦士やってないと思ったら大間違いだ……」
俺は相棒を大振りに、それも思いっきり降り落とした。
案の定、俺の体重の何倍もあるであろう岩蜘蛛は、糸を外す間もなく哀れにも勢いよくひっくり返ったのだった。
********
「ウッソォ!??」
この光景を見たニファは驚きの声を発した。自分の何十倍も巨大な岩蜘蛛をぶん回したのだから当然だろう。
ノーサさんやケルトンさんも驚きのあまり声も出せずに唖然としている。
「見たかお前ら、これがタワラ村を救った英雄リペルソルジャーだ」
俺は誇るように、そう呟いた。
********
おっ。ソロンとニファ…!!全員来てんじゃん。
俺はニファ達の元に駆け寄る。
「いやーすまんすまん…ずっとノーサさんのとこにいてさぁ。
ん?ニファ。何そんなに大きな口開けて驚いてんだ??」
俺は顎が外れたように口を開けているニファを見てそう言った。
「何驚いてんだ??じゃねぇよ!!何でスコップであんなに大きな蜘蛛を投げ飛ばせるんだよ。お前がゴリラじゃねぇか!!
それに、ほっつき歩くのはいいけど私達に一言は言いなさいな。心…。迷惑かかっちゃうでしょうが!!」
ニファは俺の頬をつねりながら言う。
「いったぃ…!!まぁ、でもいいじゃないか。これで一件落着なんだしさ…!!」
俺がそう頬をつねるニファに高らかと言う…その時だった。
バキバキバキバキ
俺たちが一斉に岩蜘蛛の方を向くと、大きな音を立てて岩蜘蛛の体が割れていき、その中からはそれよりも少し小柄な蜘蛛が顔を覗かせていたのだ。
「なんだぁ!?」
俺は目の前で起きていることが何なのかさっぱり分からなかったが、どうやら、ニファやソロンは何やら心当たりがあるようだ。
「これは…蜘蛛の脱皮…!」
脱皮とは、特定の生き物が成長する際に、自分の表面を脱ぎ捨てるようにすること。これが脱皮である(後からソロンに聞いた)らしい。
「気をつけて!!まだ終わってない…いや、むしろこれからよ!!」
殻の中から出てきた小柄な蜘蛛は、すぐに地中の中へと潜っていった。
「逃げた?…いや、そんなわけないかぁ…ソロン頼む!!」
「分かった。
ソロンは風を起こし、ケルトンとノーサを蜘蛛の範囲圏外に飛ばした。
何故なら……
急に地面が盛り上がったかと思うと、蜘蛛が俺らの下から急に飛び出してきた。
俺達もそれを全力で回避する。
盛り上がった地面から出てきた蜘蛛は、俺達を殺してないことに気づくとさらに地中へと潜っていった。
「す、すまない…足手まといになってしまった…!」
ケルトンは立ち上がりながらそう言った。
「いいんですよ…まぁともかく、この地中に潜るバカを地中から引き摺り出さなきゃならねぇな。ソロン、もっかいお前の力を貸してもらうが、いけるか?」
「せっかく今日になって魔力酔いが収まってきたばっかだってのに……
…分かったよ、後でなんか奢れよ」
「いいぜ、ステーキでも奢ってやるよ」
俺のその言葉を聞いてやる気が出たのか、ソロンは張り切って魔法を唱える。
「出欠大サービス…
ソロンは地面に自身の杖をつくと
バキバキバキバキ
地面が振動によりひび割れ、その中から蜘蛛が出てきた!!
「今だ!二人とも!!!」
俺達は、ソロンが作ってくれた隙を逃さない。
「なぁ…ニファ知ってるか?ノーサから聞いたんだけど、スコップってのは普通は穴を掘るためにあるんだってよ。こういう風に!!」
相棒を蜘蛛の脳天に対して思いっきり突き立てる。
「本来土を掘るものだけどね…敵を狩るのは剣で十分!!」
ニファは光らせた剣で蜘蛛の脳天を突き刺す。
「
「
しかし、俺たちの技が奴の脳脳天を貫くことはなかった。
蜘蛛の脳天を貫いたはずの相棒とニファの剣は
音を立てて粉々に粉砕したのだった。
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