第10話 悪魔神、友人たちと食事をする

一階におりて、食堂に向かう。

かなり早めにきたのだが、席は割と埋まっており、飯にありついている。


「飯に行こうと言われた時はまだ早いだろうと思ったが、案外そうでもなかったな」


「お腹すいてるだろうからね。初めての土地ってのもあるし、何より見ず知らずで、今日初めて顔を合わせた生徒と同じ部屋でこれから二年間寝泊まりするんだから。交流もかねてペアで食べにくる生徒が目立つね」


「確かにもう仲良くなっていそうな奴らがちらほらいるな」


「ボクたちもでしょ〜? 」


「ふっ、そうだな」


とりあえず食器やらオボンやらを受け取って、ついでもらう。


二人がけのテーブルがないので、四人がけの多少大きめのテーブルに座った。


そういえばエニナも一緒に食べようと誘ってきてたな。

ふと思い出し、周りを見渡すがそれっぽい奴は居ない。


まだ来てないのだろうか。

あいつはこういうの好きそうだが。


来てないものはしょうがないので、セリカと一緒に食べ始める。


食べ始めて数分たったころに、エニナがルームメイトを連れてやってきた。


「やっほーヘルク君! 遅くなってごめんね。相部屋の子とお話してたら、気づいたら時間過ぎちゃってた。後ろにいるのが私の相部屋の子なんだけど……ヘルク君覚えてるよね? この子」


そいつに俺は見覚えがあった。


「ほらっ! 私の後ろに隠れてないでっ! 」


エニナにそう言われて、そっと背中から顔を出してきた。


「へ、へへへへへへへるくくくくくくん……!! 」


すっげぇ、カミカミだ。


「ルナか、教室以来だな。それとだが、俺の名前はへへへへへへへーーー」


「こら! ヘルク君、ルナちゃんをからかわないの! 」


「すまん」


「ふふっ、面白いね、へるくくん」


「ヘルク……君、素はそっちなんだね。っと、ボクはセリカ・アーセナルング。気軽にセリカって呼んで欲しい」


「私はエニナ! セリカ君……へ? アーセナルング? ……アーセナルングぅぅぅぅ!?!? あ、あの剣術の!? 」


「うん、そうだね。だけど、友人として接してくれると嬉しいな。名前も気軽にセリカって呼び捨てで」


「そ、それは流石に恐れ多いというか……誰も難しいんじゃないかなぁ……」


「ヘルクはそう呼んでくれたよ。……というか最初っから呼び捨てだったよね? 」


「ん? しぉおだな(そうだな)」


素っ頓狂な声を出しながら驚いてるエニナや、どうしたらいいか分からいのかずっとエニナの背中に隠れているルナを放置して、先にご飯を食べ進めていたところ、急にセリカに話を振られた。


「ヘルク君はそういうもんだしね……とりあえず私たちもご飯もらってくるね」


そう言って、一旦この場を後にするエニナたち。

それを目線で追いかけながら、セリカが言う。


「エニナちゃん、元気だね。なんかこっちまで元気になるよ。君やエニナちゃんと出会えて良かったよ……あんな場所にこもらず、逃げ出して正解だったのかな……」


後半はぼそぼそと言っていたので聞こえなかったが、どこか遠い目をしながら、何かを思い出しているようだった。


ほどなくして、エニナたちが戻ってきた。


「るなの自己紹介まだだったね。るなは、るな。その……人見知り、だから……あまり話せない」


「ルナちゃんもよろしくね。しっかし、ヘルク。君カッコよかったな」


「あ? まだその話すんのかよ……」


部屋でも言ってきていたが、まさかここでもまた同じ話をし出すとは。


「エニナちゃんも、ルナちゃんも、ヘルクに助けられた訳だけど、二人はヘルクに助けられた時どうだった? 」


「んむ、もぐもぐ……かっこよすぎて、天国に行きそうな気分になった! ヘルク君イケメンだし! 」


「噂には聞いていたけど、まさかるながあの大貴族の人に目をつけられるとは思ってなかったから、あの時すごく怖くて、手も震えて、どうしたらいいか分からなかった。けど、見ず知らずのるなを助けてくれた。……へるくに着いていこって思った。……エニナと同じで、へるくくん、いけめん。きゅん♡ ってなった」


「ぶはっ! ごほっごほっ……」


こ、こいつら人がメシ食べてる最中に、とんでもない事言い出すな。


「だよね〜、ボクもヘルクに助けられたら、ときめいちゃうかも」


「お前は男だろうが。男にときめかれて喜ぶ趣味はない」


「……そ、そうだね」


「お前……」


「な、なにっ!? 」


「まさか本気だったとか言わないよな? 」


「そっち!? ……あっ、なっなんでもないよ」


なんかよくわからんが、勝手に焦って勝手にホッとしているセリカ。


そういえばだが、あのデブ貴族は飯を食べないのだろうか?

辺りを見渡しても、それらしき奴は居ない。


それにあいつがもしこの場にいるなら、何かしら問題を起こしているはずだ。


「ヘルク君〜? 誰か探してるの? 」


「あのデブ貴族は飯を食いに来ないのだなと思ってな」


「確かにいないね? どうしてだろう」


「問題ばっか起こしてたし……怒られてるんじゃない」


「天才魔術師とやらのルヴェールでも、お前が暴言吐かれてる時に見て見ぬふりをしていたくらいだからな、その線は薄いだろう」


「貴族は別の食堂があるみたいだよ。ボクにも一応案内はきていたんだけどね。ヘルクと一緒に食べたかったし、これからはエニナちゃんや、ルナちゃんとも一緒に食べる楽しみが出来たからね。ボクはずっとこっちの食堂に通うよ」


「あ〜セリカさ……セリカ君、なんか貴族って感じがしなくて、親しみやすい」


「るなもそう思う……貴族、あんなんばっかり……なのかと思ってた」


「悲しいことにボクの振る舞いは異常だと家族や周りからは言われてしまうんだけどね……ボクは貴族なんてしがらみを無しに、皆と仲良くしたい。……おかしい事なのかな」


「はっ、セリカよ。お前に何があったのか知らんが、俺はお前のおかげで初めて貴族にもマトモな人間がいるのだと知れたんだ。誇るがいい、この俺に考えを見直させたんだ」


「ありがとう、ヘルク。……っ楽しい食事の時間に湿っぽい話題を出してしまったね」


「そうだよー! せっかく四人、友達になれたんだから楽しく行かなくちゃ! 」


やはり、エニナはムードメーカーだな。

あの雰囲気から一瞬にして、空気を変えることが出来ている。かくいう俺も、こいつらと共にご飯を食べて楽しいと思えている。


今までの俺であれば、食事など必要だからするだけの機械的な行動だと思っていたのに。


三人の笑顔が、この空間が気持ち良い。

これが、俺の前世で感じていた空白の1部なのか。


思えば友人が出来たのも、こうして食事をしたのも初めてだ。


これも青春とやらの一つなのだろう。

ヘルクとして転生できて良かったーーー。


ほんの少しだけ、俺を転生させた女神に感謝をしてやったのであった。


……ほんの少しな。


―――――――――――――――――― 【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「ハーレム要因だヨシ!」「言葉の少ないちびっ子女子って可愛いよね」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します!――――――――――――――――――

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