第8話 悪魔神、自己紹介で色んな女生徒にラブコールを送られる

「私の自己紹介はするまでもなく、一人を除いてこの場の全ての生徒が知っていたようだが、気を取り直して、次は君たちに自己紹介をしてもらう。まずは……そうだな、君から」


辺りを見渡したあと、目が合った俺に促してきた。


なんで初っ端が俺なんだよ……。そんなことをしたらアイツがうるさいんじゃないか。

はぁ、とため息をつきながら立ち上がる。


すると案の定、デブ貴族ことバカカスが憤る。


「なんであいつが最初なんだよおおおお!!!! 普通、この僕ちゃんの華々しい挨拶からスタートするもんだろおおおおおお!!!!! なんで!!! よりにもよって!!! あいつなんだあああああ!!!! 」


げっ、こいつ教師にもこんな感じなのか。


取り巻き二人は誇らしく、うんうんと頷いているが、他は全員ドン引きしていた。


「言っておくが私は、貴族、平民と分別して特定の方を贔屓したりはしない。そこまで自己紹介をしたいならこの次やってもらうから今は静かにするんだ」


まさかそんな返答が帰ってくると思っていなかったのか、驚愕した表情を見せる。意外なことに無言で席に座った。


こいつにも引き下がるという考えがあったのかと感心する。


しかし、意外だ。

教師も貴族を贔屓するものだと思っていたが、どうやらこいつは違うらしい。


「俺はヘルク。ただの田舎から来た平民だ」


そう言って、座ろうとしたのだが、エニナに耳打ちされた。


「好きなこととか、趣味とか、そういうのも言った方がいいよ! 」


好きなこと、趣味……か。

考えたことも無かったので、ひとしきり悩んだ。


「そうだな、好きなことは調子に乗っている雑魚を捻り潰すこと、趣味はこれから見つけていく」


それを聞いて愛想笑いするエニナたち。

ルヴェールもあっけに取られていたが、我に返る。


「では次はーーー君」


当てられたその生徒はびくっと身体を震わせて、おそるおそる立つ。


バカカスは次当てると言っていたが、まさかの飛ばされた。

何事もないかのように次の生徒を当てていた。


わざとか?

いや、ルヴェールの表情を見る限り、わざとでは無さそうだ。本気で忘れたのだろう。


声にならない叫びを上げるバススカは、頭を抱えてブツブツと唸っていたのだった。


「る、るるるるるるるるな……ですっ。えっと……好きなことは魔導書を読むこと……です」


そう言って、すぐ座った。


「おいおいいいいい!!! また平民かああああ!?!? Sランク教室に平民がそう何人もいるなんておかしいだろおおおおおおおおお」


ショック(?)から復活したバカカスが声を荒らげる。

それを聞いて身体を震わせて頭を抱える、るな。


それをみてイラッとした。


「おいバカカスよ、そこの、、るるるるるるるるなとやらに謝れ」


ぶっ!! と吹き出したエニナが言う。


「ヘルク、るなちゃんだよ!? せっかくかっこよかったのに台無しだよーー!! 」


自己紹介で、るるるるるるるるなと言ってなかったか?


「……へ、へるく君……るな、人前で話すのに慣れてないから、緊張で噛んじゃっただけで……あの女の子の言う通りで、るなの名前はるな……そんなにる沢山つかないです……」


「あいにく俺も人間とは話し慣れてなくてな、こんなミスをしてしまうこともあるが許してくれ……っと、話はあとだ」


バカカスの真後ろに転移した俺は、服の襟を掴むと、るなの目の前に再度転移を使い移動する。


急に目の間に現れた俺たちにめちゃくちゃびっくりしていた。

襟から手を離す。ぶぎゃっ! と情けない声を漏らし、顔面から地面に落下する。


「こいつは意地でも自分から謝らないからな。るなよ、こいつをどうしたい? 」


「急にあんなこと言われて……びっくりしたけど……今のみたら、へへっ、気が晴れたからもういいよ」


一瞬ではあるが笑ってくれた。

嫌な思いをした当事者がもう良いと言ったからには、俺も許す他あるまい。


また転移を使いバカカスが座っていた席に行き、手を離す。


「るなが優しくて良かったな。お望みであればこの世の地獄を見せてやっていたが、命拾いしたな」


そう脅しいておいて、自分の席へと着いた。


「で、では次はーーー」


この状況を見せられてもなお、何事も無かったかのように自己紹介を再開させた、天才魔術師とやらのルヴェールには感心する。


……少々顔は引きつっていたが。

次に当てられた少女は黒髪の少女。


「むっ、わたしか。わたしはクレハ・ランスフェルだ。そうだな、一つ言うならゲスな奴は大嫌いだ。よろしく頼む」


ぱちぱちぱち。

すると、何故かクレハとやらが振り返り、俺の方を見てきた。そしてお辞儀をされた。


よく分からんが、俺も返しておいた。


そして、また次の人が当てられる。


「あーしはメリア・プリヤール。えーと、趣味は美味しい飲み物巡りと、ダーリン探し! けど早速見つかっちゃった♡ 」


メリアと名乗ったこいつも、俺の方を見てくると、きらんっ☆ とウィンクをして、投げキッスまでしてきた。


なんなんだこいつ……。

髪は黒とピンクが真ん中から2つに別れていて、スカートの丈も教室中トップクラスで短い。なんならあと数ミリで見える。


ちょっと、いやかなり派手な印象を持った。


そして気づく。

昨日あの場に居たやつだと。あの時もダーリンがうーたらとか言っていたような気がする。


あとも、どんどん自己紹介が進んでいって、ようやく終わりを迎えた。


何故か少なからず、メリアの後も何人か俺を見て、会釈してきたり、熱烈な視線を送ってきたりしてした。中でも意味不明だったのが、エルナとかいう奴。


あろうことかこの俺にあかんべーをしてしたのだ。

会ったこともない初対面の奴にあかんべーをされる覚えは全くない。


前半が女子で、後半が男子だった。

何故俺が最初だったのかますます謎だが、ルヴェールの気まぐれだろう。


それに、俺になにやらアクションを起こしてきたのは全員女子だった。


そのたんびに、男子から睨まれた。

女が勝手にやってきただけだろうに……。


そんなこんなで、自己紹介が終わり、今日は解散となった。


――――――――――――――――――

【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「おや、ハーレムの予兆ですかヘルク君」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します!――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る