第5話 あなたは漁村にたどりついた

 ◆天啓オラクルシステム結果リザルト――――――――――

 『そろそろ可愛い女の子が必要』

 『幼馴染がいるはずだ』

 『鳥の幼馴染は龍?』

 『あなたは鳥の性別が気になっている』

 『これからの生活のために食べ物は大事。口に合うものを探すべきである』

 『えちえちが必要×4(要望レベル(強)』

 『アマビエちゃんが可愛いから出てほしい』

 『アジフライが食べたい。アジを釣ろう』


 ――天啓システムより同時並行的複数の情報流入を確認。システムへの負荷増大をか認める。天啓システム及び白紙世界管理者は、和風平面世界:『盤天』世界に適応する形で統廃合を実行する――。

 ―――――――――――――――――――


「どうした我が背よ」


 一瞬で頭の中に大量の情報が流れて行ったような気がして立ち止まる。

 首をかしげて自分の両手を見て、何も変わっていない事を確かめた。


「なんだか色々言われたような気がしたんだ」


「我は何も感じなかったぞ。天啓からまたなんぞ要望でも来たんじゃろう。それよりも、我が背よ、ここから天津国で、今いるのはその端じゃな」


 天津国あまつくにを目指す事にした俺達だったが、そのまま向かう事はせず、まずは人里から少し離れた場所に降りたった。


 赤黎と共に、人口密集の中心地に降り立つのが気が引けたからだ。


 なにせ人ひとりを乗せられるほどの巨大な鳥だからな。いきなり町中に降り立ったら大混乱が起きかねないと考えた。


 であればと、外れの岬に降り立ったのだが、それも杞憂だったのかもしれない。地上に降り立った直後、赤黎は出会った時と同じような、鷹程度の大きさに戻ったからだ。


「赤黎は、自由に大きさが変えられるのか」


「自由自在である。今はな」


「ふうん。じゃあ、あのでかい姿が真の姿ってこと?」


「ううむ。それは――、そうだとも言えるし、否ともいえるな」


 俺の肩にとまり、首をフリフリ赤黎が答える事には、姿を取り戻した盤天世界と赤黎は、実はまだ多くの情報が消失したままなのだと言うのだ。


 盤天世界は、一度消え、先ほどまた始まった。昔から存在しているという記憶を保持してはいるが、同時に生まれたての世界であるともいえるらしい。であるから、赤黎の姿も変える事が出来るらしい。


「なんなら、そのキューブを使えばよい」

「これか」


 白紙世界に降り立った時から目の前にあった、虹色の箱“キューブ”。それが今、手の中にある。赤黎と共に空へ飛びあがったときに置いてきたと思ったが、いつの間にか戻ってきていたのだ。


「色々願ってみてもいいだろう。我の姿が気に入らなければ、我が背が変えればよい。それだけの力がある」


「――じゃあ聞くけれど、赤黎って、男かな? 女かな? いや、雄か雌かどっちっていう方が正しいのかもしれないけど」


 赤黎はしゃべる鳥だ。その声はどこか中性的で、男とも女ともとれた。


 人語を介すとなると、矢張り鳥と言うよりも人間のように思えてならない。そうであれば、人間であるように関わる方が良いのではないか? そう思える。


 ならば、彼、あるいは彼女はどちらなのだろう。


 今までの会話で推察するにしても分からない。さっぱりとした性格の女性にも思えるし、兄貴肌の男性のようにも思えた。


「どっちだと思う」


「え」


「どっちだったら良い?」


「ど、どういうこと」


「我が背は、どちらであれば、うれしいのじゃろう?」


 紅玉のような丸い目を真正面から向けて、真剣な声色の赤黎が聞く。それに対して俺は答えに窮する。この回答、とても重要な案件である気がする。


 うかつに選択すると多くの人を敵に回すようなそんな予感が……。


「――くはは、まぁそれは後のお楽しみとしておこうか」


 バサリと赤黎が肩から飛びあがり、段々と見えてきた村の方へ飛んだ。


「我が背、みよ。海が見えてきた。あれなるは、天津国の漁村じゃ。おや。何やら民が集まっておるの? そろそろ腹も減らんか? とれたての海の幸でも分けてもらってはどうだろうか」


       ◆


「僕の名は尼彦あまひこ

「私の名前は、アリエ」


「「この村の子供です」」


 漁村にたどり付くなり早々に、子供に捕まった。

 抑揚のない、同じような声で話す二人の子供。十二、三才の少年と少女だ。


 顔もよく似ているから双子なのかもしれない。あるいは同年代の幼馴染かもしれないが。その二人が感情の読めない顔で語りかけてくる。


「鳥を連れたお方。この村は危機に瀕しています。貴方の力が必要です」

「箱を持つお方。疫病がはやっています。このままでは村は滅びます」


「今すぐに、海に出て、アマビエ様を助けてください」

「今すぐに、船に乗り、アマビエ様に会ってください」


「「さもなくば――」」


「さ、さもなくば……?」


「「アジフライは食べられません」」



 ◆システムメッセージ―――――――――――――


 あなたは赤黎の性別が気になったNew

 あなた(深層心理で)可愛い男の子と女の子が出てくる事を望んだ。だがその願いは歪められた形で現出したNew

 あなたは腹が減ってきたため、食べ物を探そうと思ったNew

 あなたは疫病予防の妖怪、アマビエの出現を願ったNew

 あなたは、アジフライが食べたかったため、アマビエイベントに、アジフライ概念が挿入されたNew

 あなたはえちえち展開が足らないと、強く願ったが今はまだその時ではないNew


 あなたは、天津国の南端の漁村から探索を始めた。

 そこはなんの変哲もない村であったが、村人の多くは原因不明の疫病に置かされていた。謎の少年と少女が、疫病を祓うためアマビエという存在に逢いに行けと言う。

 アマビエは海の中に居るらしい。


 あなたは、この依頼を受けてもいいし、無視してもいい。

 あるいはキューブを使い強引に解決してもいい。

 なおアマビエは、アマビエである。

 

 ――――――――――――――――――――――――


 (コメント欄に自由に書き込んでください。その情報によって、世界が変化していきます。また書かれた事がすべてそのまま反映されるわけではありません。長文でも、短文でもなんでもかまいません)


(次回更新は、6月30日20時ごろです。)

(コメントがなくとも、それ相応の展開が進んでいきます)

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