第6話 蓬莱若菜との会合(雑談)


 4月2日(火) 13時00分




「今日もうまかった」




 高級レストランかと間違うほど美味しい学食を完食する。


 毎日こんな食事ができるなんて、この学園に来て本当に良かったぜ。




 俺はスマホのアプリについて調べるために自室に戻ろうとする。


 すると後ろから可愛らしい声で名前を呼ばれる。




「築山くん、ちょっといいかな?」




 声の主は教室で隣の席に座っていた少女、蓬莱若菜だった。




「蓬莱か、何の用だ?」




「少し2人で話したいんだけど、今から私の部屋に来てくれる?」




「積極的な女は嫌いじゃない、行こうか」




 入学早々にこんなイベントが待ち受けてるとはな。


 日頃の行いかな。




「この人に声を掛けたのは失敗だったかな」




「そういうのは心の中だけに留めておいてくれませんかね?」




 毒を吐かれながら学食をあとにし、嫌な顔を向けてくる蓬莱の部屋に向かう。






 ---移動中--- 食堂→寄宿エリア






 俺たちの住んでいる寮に到着する。


 蓬莱の部屋は俺の部屋と同じ建物ではあるが、上の階は女子専用となっており行くことがない。




「上の階は初めてだ。共用廊下の時点でいい匂いがするな」




「横からは犯罪の臭いがするよ」




 部屋の前に着き、蓬莱が部屋の鍵を開ける。




「どうぞ。散らかってるけど」




 中に入ると女の子の部屋という言葉がよく似合う。


 そんな雰囲気の部屋が広がっていた。




「かわいい部屋だな」




 俺が入ったことのある女子の部屋は葵くらいた。


 葵の部屋は会議室かよってくらい広いし何も無い。


 その点、蓬莱の部屋はぬいぐるみや小物などが所々にあり実に可愛らしい。




「ありがとう、あまり片付いてなくてごめんね」




「そんなことないぞ。俺よりはちゃんと片付けていると思う。洗濯もしてるし」




「築山くん洗濯してないの?というか人の洗濯物じろじろ見ないでくれるかな。片付けるから少し待ってて」




 部屋には下着などが干してあった。


 スマホなら目が悪くなりそうな距離で観察していたら、じっくり見られるのが不満なのかタンスにしまい始めた。




「気にしないでくれ。俺の部屋との違いが気になっただけだ、他意はない」




「下着を凝視してたよね。男の子だから気になるとは思うけど……そんなに見るのはよくないよ?」




「チラチラと見る分には構わなかったのか。それは惜しいことをした」




「そういう意味じゃない」




 どうやら変態と思われたらしい。


 弁明しなければ。




「干してある下着なんかただの布だろ?本当に気になっただけだ」




「何考えながら見てたの?」




「おとなしい顔して普段はこんなもの履いてるのかと想像してた」




「そんな際どいのじゃないよね?普通だよ」




 弁明に失敗してしまった。


 正直者のつらいところだな。


 早く次の言い訳を用意しないと。




「現在進行系で履いているパンツ以外に価値なんかないだろ?」




「じゃあ私が今履いてるパンツ見たい?」




「見たい!見せて!」




「変態」




 上手く誘導されてしまった。


 くそぅ!




「『パンツ見たい?』とか聞くほうが悪いと思うぞ?さてはお前、変態だな?」




「変態に変態と言われるのが、こんなにイラつくとは思わなかったよ」




「変態とは心外だな。俺は前を歩いてる女子のスカートが短くても、その子のパンツを見ようとしないぞ」




 なんせ俺は紳士だからな。


 階段を登るときは、目のやり場に困っている。




「その話が本当なら、築山くんは誠実かもしれないね。普通の男子はパンツに飢えてるもん」




「そうだ。俺はスカートの下に何も履いてないかもと想像すると興奮してしまうだけだ!」




「前言撤回。こいつを早く捕まえてくれ」




「俺はこの現象をシュレディンガーのおパンツと呼んでいる」




「警察は何をしているの?職務怠慢だよ」




「俺の父親は警察官だ」




「これが癒着か。日本の闇が見えるよ」




 話が脱線してきたので戻そうと舵を切る。


 俺がここにいる理由を尋ねる。




「それで俺が呼ばれた理由はなんなんだ?」




「事情聴取に決まってるよね」




 残念ながら俺に操舵手の能力はないようだ。


 ジンベエに代わってもらおう。




「そんなもの1回しか受けたことないぞ」




「大半の人は受けたことないけどね。いつ受けたの?」




「小さいときに事故でな。父親の実家がある秋田に帰っていたときだな」




 懐かしいな。


 久しぶりに帰りたくなってきた。




「秋田……あぁ、あの毎週なまはげが来る所か」




「お前が秋田県のことが嫌いなのはよくわかった」




 およそ100万人の県民を敵に回しても構わないのだろうか。


 平均年齢は全国1位で50歳を超えており、戦闘力はかなり低いが。




「クリスマスはきりたんぽパーティーで、成人するとなまはげ一式セットが貰えるんだっけ?」




「夜道には気をつけろよ。秋田県民に刺されても文句は言えねぇからな」




「包丁もった秋田県民はもうなまはげだよね?」




 こいつのことは好きになれそうにない。


 田舎をすぐにバカにしやがる。




「お前、どこ出身だ?」




「東京」




「ナメた口利いてすみません」




 東京には勝てん。


 埼玉くらいならバカにできたが。




「いいよ。寛大な心で許してあげる」




「お前以上に優しい奴は見たことないぜ」




「当然。青森出身の両親が育ててくれたからね」




「お前も田舎モンじゃねぇか。青森から東京は吉幾三と同じだよ」




 何が東京出身だよ。


 大人しくりんご作っとけ。


 平均年齢が全国3位のくせに。




「一人称にオラなんか使う人と一緒にしないでくれるかな?」




「お前は世界を何度も救った、あの孫さんを敵に回すというのか?」




「ただの無職でしょ」




「野原家のしんのすけ君はどうなる」




「露出狂だよ?相手にならないね」




 こいつは国民的アニメになんという暴言を吐くんだ。


 警察に捕まるぞ。




「はぁ、築山くんのせいで話が逸れちゃったよ」




「俺は戻そうとしたんだがな。それで本題はなんなんだ?」




「ホームルームでの話について」




「そうだろうとは思っていた」




 このタイミングで声を掛けるならそれくらいだろう。


 俺と友達になりたかっただけという説もあったが。




「配られたスマホの機能を確かめたいと思って。1人じゃ判らないことがいくつかあったから」




 そうなのか。


 部屋に戻ってから調べようと思っていたから知らなかったな。




「それは初耳だしかなり気になる話だ。誘ってくれて助かるよ、ありがとう」




「どういたしまして、お礼はMPでいいよ?」




「MP(行幸ポイント)でよければ」




「それはいらないかな」


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