第5話 学園についてのルール説明

4月2日(火) 10時00分




 少女先生から学園生活についての説明が始まる。




「まず初めにこのスマホを配っていくよ!」




 そういって先生が個別にスマホを配っていく。


 見たこと無い機種だな。




「最近の子だし使い方はなんとなく分かるかな?とりあえず画面に出てきた名前が自分のものか確認してね。合ってたら生体認証を登録して完了!」




 スマホを起動すると自分の名前が浮かんでくる。


 俺は言われた通り、自分の指紋や顔を登録する。


 ロック画面はパスコードの他に、指紋認証、顔認証で解除できた。


 それだけなら普通のスマホだが、網膜、虹彩、声紋、静脈、と無駄にバラエティに富んだセキュリティにも変更ができるようだ。




「このスマホは学園生活において非常に重要だよ!まず学園内における金銭、単位はMPって言うんだけど、それはすべてこのスマホによって管理されるんだ!」




 なるほど。


 スマホでありながら、俺たちの財布という訳か。




「だから、なくしちゃった場合はすぐに教員に知らせてね。人のスマホを無許可で操作するのは校則違反だから注意するように!って言ってもロックがかかってるんだけどね」




 学園内には大小問わず無数のカメラが仕掛けられており、死角はない。


 よって暴力によりスマホを奪う、といった不正な行為は不可能である。




 もとよりそういった自分の名を落とす行為は、大半の生徒が目的としている卒業による名誉とは対極にある。


 たとえ校則がなかろうと行う者はいないだろう。




「このスマホで出来ることを説明するね!」




『学園専用スマホ』


 できることは普通のスマホとあまり変わらない。


 異なる点は学園用のアプリがインストールされていること。


 ルール、ランキング、ポイント管理、メッセージ、専用アプリの5種類。




 ルール:校則やポイント制度の確認。




 ランキング:学年ランキングの確認。




 ポイント管理:MPの送付や支払い。




 メッセージ:連絡機能。




 専用アプリ:特別テスト用のアプリ。






「先に質問の多いところを説明するね!まず、メッセージ機能は専用スマホ同士でしかできないの。だから外部とは連絡できないよ!」




 それくらいの対策はしてるだろうな。




「ランキングは自分の順位がわかるの!入学時の成績とか見たいでしょ?」




 気になる。


 俺は何位だったんだろう。




「そして専用アプリっていうのは特別テストのときに使うの。だから普段は必要ないよ!」




 特別テストか、おそらく進級に関わるものだろう。


 ランキングのことも考えると、それで順位が入れ替わるのだと想像できる。




「それと学外への連絡はスマホを使えばできなくはないの。でも連絡をとったとみなされた場合、校則違反で退学になるから気をつけてね!」




 SNSやDMの他にも、バレにくそうなものならゲームや動画のチャット欄など、連絡を取ろうと思えばいくらでも手段はあるのだろう。


 特にメリットもないことを危険を冒してまでする気はない。




「スマホで何をしているかは学園側は把握しているから、布団に隠れて連絡なんかもできないよ!」




 なんだと……!?


 Hなサイトを見たら学園に知られてしまうではないか。


 男子高校生に禁欲生活を強いるつもりなのか……?




「あまり変なサイトは使わないようにね。校則違反ではないけど、先生たちは把握しているから」




 先生に知られてしまうのか。


 今日のところは教師モノを観ることにしよう。




「これでスマホについての説明はおわり。あとはポイントと進級についてだね。それの説明さえ終われば今日は解散!あと少しだからがんばって覚えてね〜!」




 ここからはより重要な話になりそうだ。


 俺は姿勢をただし、先生の話を真剣に聞く。




「まずポイントについて」




『ポイント』




 ポイントにはHPとMPの2種類がある。




 HPは【配布ポイント】の略称である。


 新入生は10000HPを持っている状態から始まる。




 MPは【持ってるポイント】の略称である。


 MPは買い物などに使うことができる。




 1HPごとに毎日1MPが配られる。






 10000HP持っている俺たちは毎日10000MPが配られるってことか。




 日本円と同価値ということは先日食堂で確かめた。


 MPを日本円に換算すると毎日1万円、1年で365万円を得ることになるのか。




「HPは特別テストによって奪い合う、それ以外で変動することはないよ。MPは特別テストで得ることもできるし、誰かに渡すのもスマホでポチッとできるよ!」




 特別テストでしか得られないHP。


 奪い合うということは、学年全体での合計値は変わらないのか。


 これの多寡が重要になりそうだな。




「最後に進級条件についてだね。3学期の終業式、つまり修了式の日。そのときに学年で所持HPが上位50人に入ること、それが条件だよ!進級上限は60人!」




 ん、どういうことだ?


 50人しか進級できないのに上限が60人なのには理由があるのだろうか。




「『どういうことだ?』って思ったでしょ?さっき説明したMPは権利を買うことができるの。1年生の場合は2種類あって、1つは250万MPを払って退学措置の取り消し。もう1つは500万MPを払って進級暫定者になること!」




 なるほどな。


 500万MPを集めれば進級できる可能性があるのか。


 現状では1年で365万MPしか手に入らない。


 このままでは500万MPには足りないが、それを集めるのを目標にしても良さそうだな。




「退学措置の取り消しについて話すよ!退学措置になるのは暴力行為などの校則違反をしたとき。特別テストのルールによるとき。HPが0になったとき。この3つがあるけど、3つ目のHPが無くなったときは250万MPを持ってても使えないから注意してね!」




 1つ目はともかく2つ目が気になる。


 特別テストにはHPやMPの変動以外にも、1発退場になるルールが存在するということだ。




「最後に進級者について」




 クラス全体に少し緊張が走ったように感じる。




「進級する可能性があるのは、学年末に行われる最終テストで決められる進級確定者。500万MPで権利を購入できる進級暫定者。所持HPで決まる進級予定者の3種類だよ!進級できる人は話した順に60人までだよ!これでだいたいの話はおわったけど質問はあるかな?」




 真面目そうな女子が手をあげ質問する。




「進級確定者と進級暫定者が60人を超えた場合はどうなるのでしょうか?」




 確かにそうだ。


 確定者については分からないが、暫定者だけでも60人を超える可能性はある。


 500万MPというのは、そこそこ手が届く値段なのだ。




「いい質問だね!その場合は進級予定者は誰も進級できない。そして進級暫定者は60人に収まるように所持HPが多い順で決められるよ!」




 確定者は先生の口ぶりから言って多くないだろう。


 つまり進級するには暫定者になることが不可欠だ。


 そして、その中でもHPを多く持っていることが重要だ。




「それと進級確定者の内、所持HPが多い4人は2年生になったときに各クラスでリーダー権を得るよ!」




「リーダー権とはなんなのでしょうか?」




「3年生までの進級が確定される権利だよ!しかも3年生の開始時にランキングが4位以内に確定するんだよ!」




「理解しました。ありがとうございます」




 リーダー権というのはかなり重要みたいだな。


 各クラスの首位は、普通の生徒より有利と少女先生が言っていた。


 その枠は4つしかないため、5人での奪いあいになりそうだ。




「質問もないみたいだし今日はここでおわり!解散!」




 長い時間されていた説明も終わった。


 学食で昼食をとってから寮に戻ろう。




 それからアプリについて確認するか。




「あ、言い忘れてたけど、明日はレクリエーションとして特別テストがあるからがんばってね!」




 とんでもなく大事なことをさらっと言われた気がする。

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