第4話 入学式

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落伍者の烙印 ~卒業率20%以下の学園でランキング最下位から成り上がる~

ep.4 入学式

掲載日:2024年06月29日 16時06分

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閲覧いただきありがとうございます。


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 4月1日(月) 10時00分




 寮に入ってから2日が経った。


 4月の初日、俺は入学式を迎える。




 学園長が登壇し、長い挨拶を始めた。




「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。この学園に入学するということは、皆さんが素晴らしい才能をお持ちということの証です。しかしここは吹雪学園、ここにいる皆さんの大半は卒業を迎える前に去ることになるでしょう。一つの過ちであなたたちは退学となり、籍は吹雪のように飛んでゆきます。我々は君たちが切磋琢磨し、これからの学園生活でさらなる成長を遂げることを期待します。」




 あの学園長どこかで見たことがあると思ったら、吹雪グループの会長だ。




 吹雪グループは徳川グループと並び、旧財閥であるかなりの大企業だ。


 昔の日本は吹雪財閥・徳川財閥の二大財閥と呼ばれ、現在までその力を持ち続けている。




「続きまして新入生代表、徳川 葵」




 代表挨拶するってことは、葵は首席候補みたいだな。




「この度、入学する皆様を代表いたしましてご挨拶させていただきます。皆さんの考えとは異なるかもしれませんが、私は互いがライバルでありながら共に成長してゆくための仲間だと思っております。学園を卒業してからも関係が続くような仲間に巡り合い、よい経験となる3年間になることを願います。簡素ではありますが、以上を持ちまして新入生代表の挨拶とさせていただきます」




 今日も葵はかわいいな。


 よだれ出てきそう。




「続きまして在校生代表、紅葉賀柚希もみじのがゆずきさん」




 テレビでよく見た人だ。


 生で見るとかわいいな。




「みなさん初めまして、私は生徒会長の紅葉賀と申します。在校生を代表して、心より歓迎申し上げます。 我々在校生一同、皆さんとともに学校生活を送れることをとても楽しみにしています。 見ての通り在校生は既に新入生より人数が少なくなっています。それは例年のことであり、新入生のみなさんにも同じことが言えます。入学はあくまでスタート地点、みなさんが無事卒業できるよう心から願っております」




 長い長い。


 どうでもいい話なんだから早く終わってくれよ。




 葵以外の話には興味が湧かずぼーっとしていると、気がつけば入学式も終わっていた。




 生徒は教員の指示に従い、人数ごとに別室に連れて行かれる。


 どうやらクラス分けのためのテストが行われるようだ。




 俺が連れて行かれた先では、まず学力テストが行われた。




「学力テストという割に雑学テストみたいだな」




 テスト内容は1問ごとに難易度が大きく異なり、小学校レベルから大学レベルのものまであった。


 義務教育で習う主要5教科の他に副教科やパズル、マナーや時事ネタにいたるまで様々な問題が出た。




「体感は悪くはない気がするが正直周りのレベルが想像つかないからな」




 学力テストのあとは体力テストだ。


 運動はできる方ではあるが、オリンピック級の怪物がいるからな。


 あんなやつには勝てそうもない。




 長かったテストが終わり、明日のクラス分けを待つことになった。




 テスト終わりに教員から1つの連絡があった。


 明日の朝にクラス分けが書かれている昇降口に張り出すとのことだ。




 俺は寮に戻り、何をするでもなくのんびりと過ごした。






 4月2日 8時00分




 早めに起きた俺は、昇降口へと向かいクラス分けを確認する。




「何組だろう?寮に案内してくれた少女先生はE組って言ってたけど」




 できることならば、あの巨乳を見ながら1年を過ごしたい。




「つ……つ……。あっ、葵はA組か。俺は……E組だ!あの先生と同じだぜ!」




 ウキウキな俺は靴を履き替え教室に向かう。


 他のクラスの生徒とはここでお別れだ。


 この学園の教室は、通常の横並びではなく各教室が遠く離されている。


 後に知った話だが、他クラスからの野次馬などを減らすことが目的だそうだ。




 教室に入ると全体の半分くらいの人数が集まっており、談笑していたり本を読んでいたりしていた。


 ホワイトボードには、各自に割り当てられた席が書かれている。




「俺の席はあそこか」




 窓際の一番後ろ。


 よくある主人公席だと言いたいところだが、この教室には窓がない。


 学園外からの盗撮などを警戒をしてのことだろう。


 今どきはドローンや高倍率のカメラなんかがあるからな。


 廊下側にも窓がなく、ドアは1つのみとなっている。




 俺は自分の席に腰をおろし、横の席にいる落ち着いた様子で本を読んでいる少女に話しかける。




「はじめまして。俺の名前は築山行幸。君は?」




「はじめまして、私の名前は蓬莱若菜ほうらいわかな。よろしくねというのも変な話だね」




 こちらを向いて話す少女は、かなりの美少女であった。


 アイドルやモデルと言われても違和感がない。




「進級を賭けたライバルになるわけだからな」




『蓬莱若菜』


 紺色の髪でミディアムハーフアップの美少女。


 貧乳。




「何かで有名な方なの?よかったら教えてくれないかな?」




「いや、ただの一般人だ。たまたま推薦されて入学しただけで、来年にはこの学園から消えてる可能性が高い」




 学園を去るつもりは毛頭ないが。


 謙遜というやつだ。




「そんなことないよ。推薦されるだけの何かがあるってことでしょ?卒業できる可能性は十分にあると思うよ」




 いい子だな。


 葵がいなかったら惚れて告白して玉砕してたぜ。




「そういってくれると嬉しいよ。ありがとう、蓬莱さん」




「同級生なんだからさん付けは要らないよ。もっと気軽に呼んで?」




「じゃあ、蓬莱」




「うん、それでよし」




「蓬莱、俺も君のことをよく知らないんだが、有名な人なのか?」




「君と同じで一般人だよ、学校に1人はいる優等生ってやつ。中学校からの推薦で入学できたんだ」




「なら俺と同じ一般枠ってことか。急に親近感が湧いたぜ」




「私そんなに親しみ持てない見た目してるかな?歩いてたら声とかよく掛けられるんだけど」




「それはナンパとかスカウトじゃないのか?」




「宗教が多いかな」




「普段どんな道歩いてんだよ」




 神道か?




「築山くんはどの宗教にハマってる?」




「言い方に悪意あるだろ。特にあるわけじゃないが、強いていうならキリスト教かな」




「その心は?」




「シスター服ってかわいくない?」




 無言で机を離された。


 普通に傷つくんだが。




「発言が童貞のそれなんだけど」




「童貞だから仕方がないだろ。そもそも童貞に限らず男はみんなそんなものだ」




「男はみんな巫女服の方が好き。シスター服好きは童貞しかいない」




 だいぶ思想が強い子だな。


 道で変な宗教に入信させられてるな。




 しょうもないことを話しているうちに先日の女性が教室に入ってきた。


 ホームルームが始まるようだ。




「はいは〜い、みんな席について〜!」




 先生の一言で生徒たちが席につく。


 教室には空席が見当たらないため、20人全員が出席していると思われる。




「よくできました〜!それじゃあHRを始めるね。まずは自己紹介から、先生の名前は『大木本 少女』。気軽に少女先生って呼んでね!何か聞きたいことがあったら質問してね!」




『大木本 少女』


 Eクラスの担任。


 童顔で背が低く巨乳。


 独身。




 おちゃらけた雰囲気の男子が手をあげる。




「少女先生はいくつなんですかー?」




 確かに気になる。




「女性に年齢を聞くのはタブーだよ!」




「じゃあ30歳より下ですかー?」




「……上だよ。」




「30超えてるんですか!?」




 マジかよ。


 同い年と言われても違和感ないぞ。


 数字に弱いのか?




「……いまからみんなに自己紹介してもらうんだけど、お手本として質問してくれた彼にトップバッターをしてもらうから注目してね!持ち時間は5分よ。はいどうぞ。」




 半ギレの少女先生は、その男子生徒に5分間も話をさせ続けた。


 後半はほとんど喋れてなかったが。




「お疲れ様〜!次の人からは名前と何か一言だけでいいからね〜。じゃあ席順でどうぞ!」




 外側の前から順に自己紹介が始まった。


 端の席なので、すぐに自分の番が回ってくる。




「築山行幸です。無事卒業できるよう頑張ります。仲良くしてくれると嬉しいです」




 無難な自己紹介を済まし、その後もクラスメイトのプロフィールを聞いていく。


 アイドルや子役、スポーツ選手などの見たことある者がほとんどであった。


 そして全員のアピールが終わると先生が次の話題に移す。




「自己紹介も終わったところで、これから学園生活についての説明を始めるよ!」




 謎につつまれたこの学園についての説明が始まる。

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