第3話 入寮2
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落伍者の烙印 ~卒業率20%以下の学園でランキング最下位から成り上がる~
ep.3 入寮2
掲載日:2024年06月29日 14時01分
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閲覧いただきありがとうございます。
本文
3月29日(金) 11時00分
「ここからは君の初登校になる4月1日の説明だよ!」
俺たち新入生には、学園の予定など知らされていない。
現地についてからのお楽しみというわけだ。
「その日は10時から入学式を執り行うから、9時30分までには体育館に集まってね!少しでも遅れたら処分が下るから気をつけてね?」
処分って……退学か?
実家に帰るまでのタイムアタックなんか求めていない。
「入学式が終わったら筆記テストと体力テストを受けて貰うよ!それでクラス分けが決まるからね」
「それは優秀な生徒のクラスと、そうでない生徒でクラス分けするってことですか?」
俺が想像しているのはカースト制度のような、一部の上澄みとそれ以外の生徒でクラス分けをすることだ。
これは学園の噂や都市伝説の1つで言われており、実際にそのようなクラス分けを用いられる学園だとしても不思議ではない。
「違う違う!普通の学校みたいにバランスよく生徒を分けるためだよ。力関係が一極集中しちゃうと学園の目的にはそぐわなくなっちゃうからね」
学園の目的は本当に優秀な人材を見極めることだよな。
入学時点での成績だけで評価が定められるなら、学園を運営する意味がない。
あくまでただのクラス分けという訳か。
「そうですよね、仮にそうだとしたら下のクラスの人たちが悲惨です」
「さっきの話に戻すね。クラス分けをするために1年生の場合は、入学時のテストやこれまでのキャリアで生徒を評価する。その結果に応じて、生徒に1位から100位までの順位をつけるんだ」
各生徒に順位をつけるなんて、やけに細かく審査するんだな。
Aランク、Bランクみたいに、もっと大まかなレベルで分類するのを想像していた。
「そこから5クラスに分類する。1位はA組、2位はB組…5位はE組ってようにね。そこからも6位はA組、7位はB組…10位はE組というようにバランスよく振り分けるの」
厳密にはEクラスの能力がやや低いことになるが誤差の範囲だろう。
「クラス全体での能力値を均等にするのは分かりましたが、キャリアで判断というのはどういうことでしょうか?」
「1つ例を出すね?テストで同じ点を取った一般人Aくんと有名企業の跡取りBくんがいます。この2人なら後者の方が高い順位になるの。本来比べられるものではないんだけれど、できるだけ数値化して評価をしているんだ」
なるほどな。
社会的に地位を得ている人間がプラス評価を得るということか。
「実際には、家柄よりもその人の実績が大きく評価されるんだけどね。わかりやすい実績だとオリンピック優勝なんかかな?誰の目から見ても優秀な人は、ここでもかなりの評価を受けることになる」
「世間に顔が知られてるような人は必然的に上位に行くということですか?」
「概ねそういうことになるね!この評価はキャリアがかなり重視されてて、テストはおまけみたいな感じかな」
キャリアで評価される点が俺にはない。
おそらく相当下位に割り当てられるだろうな。
その点、葵は1位でもおかしくない。
「順位は基本的にクラス分けでしか使われないから、そんなに気にしなくてもいいよ」
「基本的ということはそれ以外の使い道があるんですか?」
「使い道とはちょっとニュアンスが違うんだけどね。新入生の場合は、上位5人が進級に有利な状態からスタートすることになる……というメリットがあるんだ」
「それは羨ましい限りですね」
入学時に5位以内だった者。
つまり各クラスで首位の者は例年、2年生への進級率がほぼ100%となっている。
また最終的な卒業率も7割ほどと、全体と比べてもかなり高い数字である。
この5人は進級ダービーの人気予想で上位に名を連ねており、オッズは相当低くなっている。
「今年の1位はおそらく徳川さんだろうね。知ってる?財閥のご令嬢で、分野を問わずコンクールや大会を総ナメしてる人。よくニュースとかに出てるんだけど」
「もちろん知ってますよ。同学年の中でも1位2位を争うくらい有名ですし」
葵と関わりがあるのは他言無用だと約束している。
理由としては、葵の関係者ということが原因で、進級に有利にはたらく可能性が考えられたからだ。
俺としてもそれは望んでいない。
それ以外にも、俺が葵のコネで入学したことを勘付く人がいるかも知れない。
そのため俺と葵は他人のふりをすることに決めた。
「ここ数年はこの人が1位だろうな〜……って人が多くてね、進級ダービーの倍率が特に低いんだよ。今度3年生になる生徒会長の紅葉賀さんとか、2年生の副会長の賢木くんとかさ。君たちの1つ下の学年でも、暁さんとか既に噂されてるんだよ」
名前が挙がった3人は、テレビとかでも特集が組まれるレベルの人たちだ。
知らない人の方が少ないだろう。
『ピピピピピピピ!』
部屋にアラームのような電子音が鳴り響き、それと同時に女性が携帯を取り出す。
「はい!どうされましたか?」
電話の着信音だったらしい。
相手は同職の人だろうか、かすかに会話の内容が聞こえる。
要するに、人手が足りなくなって来たので早めに帰ってきてほしいとのことだ。
「わかりました。すぐに戻ります」
女性は電話を切り、俺に向かって再び口を開く。
「ごめんね、呼び出しくらったからそろそろ戻らなくちゃ!説明は全部終わったけど、最後に質問はある?」
「いえ、丁寧に説明していただきありがとうございます」
「いえいえ、じゃあこの辺で失礼するね!そうだ、言い忘れてたけど私はEクラスの担任になる『大木本 少女』。Eクラスになったらよろしくね!」
そして部屋から少女先生は部屋から出ていった。
(少女先生は身長は低いが胸はかなり大きかったな……大木【おおきい】少女【しょうじょ】、名は体を表すということか)
部屋でアホなことを考えていても仕方がないので入学式を迎える日まで学園内を探索をして過ごすことにした。
現在の時刻は12時00分。
お腹が空いてきた俺は、せっかくなので学生食堂へと向かうことにする。
---移動中--- 寄宿エリア→学生食堂
そこでは新入生と思われる生徒や、おそらく先輩であろう方々がいた。
学食では主食や定食の購入は食券、その他の副菜やデザートは追加で購入という形になっていた。
試しに定食を食べてみることにし、4月末まで無料となっている食券機のパネルを押した。
その画面を観察すると、普段の値段は500MPと書かれており、おそらくMPというのが学園独自の通貨なのだろうと想像できる。
「うまっ、学食ってこんなクオリティなんだ」
思っていた数倍おいしかった。
おそらく他の学校とは違うのだろう。
昼食を終えたあとも何か無いかと食堂をうろつく。
自販機が目につき、値段を確認すると100MPから200MPとばらつきがあった。
おそらくMPは円と似たようなレートなのだろう。
寮に戻ろうと食堂の出入り口に向かうと、入るときには気が付かなかったが、学食に関するチラシが置いてあった。
その内容はお得な定期券ということで60000MPで1ヶ月間、好きなだけ学食を利用できるそうだ。
そのうえ、商業エリアなどで使うことの出来る20000MP分の商品券を貰うことができるとのこと。
1食500円としても月換算すれば90食、およそ45000MPであり、商品券と合わせるとお得ではある。
ここの学食にはオシャレなスイーツや軽食なんかもあるため、定期券があれば我慢することなく、ふとしたときに食べに来れるだろう。
60000MPを払う価値は十分にあると考えられる。
さらに4月の時点で登録しておくと、無料で20000MP分の商品券が手に入るとのこと。
チラシによると定期券の購入率、継続率はほぼ100%らしい。
上級生からしても、持っていて損はないと感じる物なのだろう。
60000MPは誰でも支払うことができる額だとわかった。
そうして俺は寮に戻り、入学式までのんびり過ごすことにした。
2日間の探索によりわかったことは、学食が無料なのは4月末まで、それ以降は有料だということ。
定期券が存在するということ。
独自通貨はMPと呼ばれ、日本円と変わらないレートということの3点だけであった。
俺は誰とも関わることのないまま4月を迎え、99人のライバルが待ち受ける入学式へと向かう。
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